読書

時代と共に歩んだ傑物

トラオ 徳田虎雄 不随の病院王/青木理 最近また読書のペースが上がっているのでまた書評を幾つか書いていきたい。 本書は医療法人徳洲会の創設者であり前理事長の徳田虎雄の一代記だが、この人物に関してはこれまで医師会と対立している人、自由連合という…

全ては1つのきっかけから

サポーターをめぐる冒険-Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった/中村慎太郎 サッカー本大賞を受賞したというニュースで存在は知っていたのだが、年明けに読み始めたら面白くて1日半で読了した。内容は代表戦や海外サッカーはそれなりに視ていたもの…

日本サッカー界の生き字引

90歳の昔話ではない。 古今東西サッカークロニクル/賀川浩 著者は90歳を越えた今も現役で活動するサッカージャーナリストでW杯取材歴も10度を数え、昨年にはその功績によりFIFA会長賞を受賞したほどの人。以前からその名は知ってはいたもののFIF…

歴史は繰り返すのか

北朝鮮・絶対秘密文書―体制を脅かす「悪党」たち―/米村耕一 著者は毎日新聞の元北京特派員。標題にある「絶対機密文書」=検察の犯罪報告書(検察の幹部向け教養資料)を元に、北京や北朝鮮国境付近での著者の取材活動と併せて向こうの社会の実態を類推する…

久々に書評を。

なぜ時代劇は滅びるのか/春日太一 最近またネットで見かけたor本屋で見付けた面白そうな新書を即買いしてしまう機会が多いのだが、その中から。本書は衰退の一途を辿る時代劇、特にテレビのそれについての考察本で、実名を挙げて衰退の張本人(と著者が主張…

コートジボアール戦の日

今日は友人の家で視ていたのだが、帰り道はそのまま何処かへ出かけたくなるほどの日和ながらとてもそんな気にはなれなかった。乗り換え駅、最寄り駅、自宅までの道etc途中至る所に青ユニの人々がいて、今日はそこかしこでPVがあった(あるいは自分の様に友…

19年前の世界

1995年/速水健朗 最近また個人的に新書ブームと言うか、本屋に行って新書コーナーで面白そうなものがあると即買いしてしまう。その中で本著は以前から読んでみたかったものの1つ。「1995」という年を現在の政治・経済・社会その他あらゆる分野の“原点”とし…

一言では語り尽くせぬ監督の本

モウリーニョ vs レアル・マドリー「三年戦争」 明かされなかったロッカールームの証言/ディエゴ・トーレス 本作は有名なレアル番記者である筆者が、選手やクラブ関係者からの匿名証言を元にモウリーニョ下の3シーズンを描いたもの。基本的に選手(クラブ…

前都知事の著作をば。

二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?ー人口減少社会の成長戦略ー/猪瀬直樹 本作は元々別タイトルで刊行されていたが、文庫化する際におそらく当時流行っていた「さおだけ屋はなぜ〜」を意識して改題されたもの。「少年時代から仕事と勉学に励んでいた」…

読むほどに新たな気付き

The Managerー名将が明かす成功の極意ー/マイク・カーソン 特定の監督に焦点を当てたサッカー本は数多いが、大抵は選手本同様、基本的に賛美が前面に出て客観性に欠ける。そもそもそういった類の本が出版されるのはその監督が成功を収めた(と見なされる)…

ユース代表の記録

ユース代表の誇り/国吉好弘 本日、JFAから手倉森氏のリオ五輪代表監督就任が正式にアナウンスされた訳だが、同氏の経歴を見ると現役時代にユース代表の経験があると記載されている。アトランタ世代以降の選手ならある程度年代別代表の経験は分かるが、そ…

今も続く物語

ミカドの肖像/猪瀬直樹 著者の作品は過去何冊か読んできたが、やはり代表作たる本作を読まねばという事で。文庫本で800ページ以上にもなる大著で、話は“MIKADO”の名を持つフランスの音楽デュオの来日から始まって、その名の由来となった西欧のゲーム、そし…

気候変動の過去/未来

歴史を変えた気候大変動/B・フェイガン 本書では地球が有史以来、温暖化と寒冷化を繰り返し、それは人類にも直接的、間接的に多大な影響を与えてきた事を様々な歴史的事象を元に例示し、20世紀半ばから現在(本書の初版は20世紀末)に至るまで続く温暖化に…

本田のプレーする国での事

暗殺国家ロシア/福田ますみ 本作は先月大阪に行く途中、新幹線の暇潰しを探そうと品川駅構内の本屋で物色していたらたまたま目に止まったもので、作品、著者共に全くの初見。2010年に単行本として刊行された作品の文庫版。内容としては現在のプーチン/メド…

プレミア所属選手の現実

ザ・シークレット・フットボーラー 本書は匿名のプレミアリーグ所属選手がサッカー界の内情について語ったもの。高級紙ガーディアンに連載されていたコラムを書籍化したものらしい。自らの半生から監督、ファン、マスコミ、代理人らサッカーを取り巻く人々に…

日本史上最高DFのキャリア

自分を動かす言葉/中澤佑ニ 日本人選手の自伝、評伝あるいは啓発本(笑)の類には興味が無いと言っておきながら、この本を読んでしまった。主題はこの選手が今まで出会い、糧としてきた『言葉』を紹介するものなのだが、同時にこれまでのキャリアを振り返る…

眼の前の山を上れ

神の代理人/塩野七生 これは1972年に刊行された作品を昨年秋に文庫化したもの。年明けに本屋でたまたま見付けて買ったまま積読していたのだが、2月にローマ法王まさかの退位という事でこの本を思い出し、読み始めた。内容はルネサンス期の法王4名の生き様を…

今の住環境の源流

土地の神話/猪瀬直樹 今では信じられないが、都内の東急沿線は大正末期には長閑な田園風景が広がる場所だったらしい。今では一面の宅地で、点在する寺社や公園、後は多摩川沿い(二子玉川〜多摩川)に昔の面影が僅かに偲ばれる、てな程度。 本書のテーマは…

もしこの人がサッカーに出会っていなかったならば

■I AM ZLATAN ズラタン・イブラヒモビッチ自伝 過去にも書いたが、サッカー本の中でも特に日本人選手の自伝、評伝というのは基本的に読まない事にしている。イメージ戦略があからさまなのと選手と“密接な”ライターが絡んで内容的に全く面白く無い為だ(代表…

完結編

ファウスト第2章/ゲーテ 1章を読んでから実に1年が経過していた。とは言え悪魔に魂を売る契約を交わして思うままに現世の快楽を享受するファウスト博士と、その魂を手に入れる為に時には骨を折りながら、時には言葉巧みに立ち回りながら博士と絶妙な距離…

久々古典

痴愚神礼讃/デジデリウス・エラスムス ファウスト(これも第2部を未読のままだが。)以来の古典で、章末の脚注と行き来しながら読み進めるスタイルも久しぶり。内容としては全編を通して痴愚の女神が人生の豊かさ、楽しさにとっての痴愚や瘋癲の必要性を語…

ミレニアムの高揚感、そしてネットワーク社会への予兆

2000年間で最大の発明は何か/ジョン・ブロックマン 本書は実家に置いてあった本で昔一度読んだ事はあるのだが、丁度手持ちの本を読み終えた時に目に入ったので再び手に取った。内容としては著者が自身の主催する『edge』というメーリングリスト上で作品名に…

過去に学ぶ

昭和16年夏の敗戦/猪瀬直樹 【概略】 日米開戦を目前にした昭和十六年、軍官民の将来有望なエリートを集めた「総力戦研究所」なる機関が発足した。その演習の一環として実施した模擬内閣による日米開戦を前提とした試算ではあらゆる面から日本の敗北が導…

スペインが最強となった理由

ラ・ロハ スペイン代表の秘密/ミゲル・アンヘル・ディアス ここ最近読書ペースが上がっていてここに書きたい作品は多々あれどなかなか追いつかない。読了作品を全て記す訳にはいかないので、特に印象深いものについてだけ書くことにしたい。まずは久々のサ…

事実をありのままに見る

道路の権力、道路の決着/猪瀬直樹 著者については以前からその名は知っていたけども、特にここ数年東京の副知事として水道事業の海外展開や都営地下鉄と東京メトロの経営統合化問題でその名を耳にする頻度が増し、活動それ自体についても事実を淡々と提示し…

チームが崩壊する1つの事例

レ・ブルー黒書――フランス代表はなぜ崩壊したか/ヴァンサン・デュリック これは南アW杯でのフランス代表の醜態を、単に練習ボイコット事件だけに焦点を当てず、それ以前―――ドメネク就任―――から南ア後の始末談までを中心に描いたもの。登場人物も当事者たる…

前市長の弁明

政治家の殺し方/中田宏 昨年秋に出てようやく読めた。週刊誌で女性スキャンダルが報じられ、時を同じくしてこのblogでも何度か言及(≒ネタ)したY150の不入りと任期途中での辞任によって政治生命の危機に陥った(陥っている?)前横浜市長による反論本。…

ありのままに見よ

十字軍物語3/塩野七生 シリーズ最終巻は、サラディンvsリチャード獅子心王の第3回十字軍に始まり、神聖ローマのフリードリヒ2世による(交渉による)エルサレム奪還を経て、最後はキリスト教側最後の拠点であるアッコンの陥落、そしてその後の地中海世界…

ユーラシア⇒西欧、そして何時ものパターン

遊牧民から見た世界史/杉山正明 十字軍物語までの繋ぎに1冊。ユーラシアの遊牧民が歴史上果たした役割を再評価すると共に、西欧視点の“世界史”像を見直しましょう、というお話。 近世以降における科学や文明の西欧の優位が未だに影響している、という事だが…

結局こちらか

会社の人に東野圭吾好きがいて最近色々と話を聞くので、たまにはこういう方面にも手を伸ばそうかと思いながら図書館の蔵書を検索し、何故かこれを借りていた。 ファウスト 第1章/ヨハン・ヴォルフガンク・フォン・ゲーテ 【あらすじ】 悪魔メフィストフェ…

最終章

ローマ人の物語41,42,43―ローマ世界の終焉/塩野七生 本章自体は単行本で3年半程前に読んではいるが、文庫版として改めて読み返すのにそれ位の間隔が丁度良い。 著者も述べているが、西ローマが滅亡する600年も前に、そのローマが滅ぼしたカルタゴの、ま…

ある意味料理本

サムライブルーの料理人 ─ サッカー日本代表専属シェフの戦い これは代表シェフとしてジーコ時代のドイツW杯予選シンガポール戦(2−1で辛勝した試合。)からアウェー戦に帯同している西芳照氏の手記。前半部はその04年の最初の試合から今までを振り返り…

十字軍物語

十字軍物語2/塩野七生 元々塩野七生の本は単行本が出た数年後に文庫版が出るので、単行本は図書館、買うのは文庫版と分けてたんだが、この前GWに読む本を探しに本屋に行ったら第2巻が発売されてたのでつい買ってしまった。図書館だと3ヶ月は待たないと…

交換と専門化、そして多様性

繁栄―明日を切り拓くための人類10万年史/マット・リドレー 【要旨】 人類がこれまで時に永い時間をかけ、時に急速に進歩を遂げてきた源は「交換と専門化」にある。知識や技術の相互交換は絶え間ない技術の進歩の土台となり、専門化によって人は一人が生み出…

西暦300年の旅行ガイド

古代ローマ帝国トラベルガイド/レイ・ローレンス 本書は“紀元300年にローマを旅する人に向けたガイド本”という形式を採って当時のローマの名所や風習、あるいは歴史などを紹介したもの。西暦300年が基準だから例えばハンニバルと戦った第二次ポエニ戦…

最も衝撃を受けた蹴球本

黒いワールドカップ/デクラン・ヒル 最近の欧州クラブの、それもビッククラブのユニフォームをよく見てみると、かつては胸スポンサーは自動車とか電機メーカーが主流だったのが、通信会社や携帯会社、そして最近は賭博会社をよく見かける。例えばレアルとか…

聖夜の一冊

KAGEROU/齋藤智裕 サイズの割に文字数が少ないのと行間が広いのとで、2時間も掛からず読み終えてしまった。こういったジャンルを普段読まない故もあるが、読後に残ったのは何とも言い難い空虚な思いで、本作の内容について思いを巡らすよりも、この…

普遍性

項羽と劉邦/司馬遼太郎 久々に本棚の奥から取り出した。確か中学の卒業文集で感想文を書いた気がするので、それ以来。紙の変色に思わぬ時間の流れを感じてしまった。その当時は歴史=日本or横山光輝漫画の影響で古代中国(三国志、春秋戦国)位だったものだ…

ローマ世界→中世へ

絵で見る十字軍物語/塩野七生 ローマ帝国からその後の地中海世界を経て、ついには十字軍まで辿り着いてしまった。本作はそれを叙述するあたってのプロローグ的位置付けで、19世紀のフランスの画家・ギュスターヴ・ドレの十字軍絵巻とその解説を元に構成さ…

情報戦の本質

ドキュメント 戦争広告代理店/高木徹 【概略】 旧ユーゴ崩壊に伴って起きたボスニア紛争は本来複雑に絡み合う民族間の対立こそ本質であり、何が悪で何が善か判断するにはあまりにも複雑な状況だった。にも関わらず国際世論がボスニア(のムスリム人)=善、…

永遠の戦い

ローマ人の物語(文庫版)38/39/40―――キリストの勝利――― 例年文庫版は秋に出るのだが、今年はもう出ていた。紀元前750年から始まった話も既に紀元後4世紀後半を迎え、話はもう西ローマ滅亡に向けて突き進んでいるので、全体的に暗いトーンで話が流れる。ただ…

メガクラブ経営の難しさ

昨日から腿裏の付け根辺りが筋肉痛で歩くのが地味に辛いんだが、これは走ったり、蹴ったりとは違う“特殊な動き”のせいに違いない。それはそうと久々にサッカー本を読んだ。 ゴールは偶然の産物ではない/フェラン・ソリアーノ いつも思うのだが、こういうプ…

閑話休題

完全W杯モードと思わせてここでブックレビュー。 わが友マキャヴェッリ―フィレンツェ存亡/塩野七生 元々91年に刊行されたものを今文庫版として再度世に出したのは、「海の都の物語」同様「ローマ人〜」で掴んだ読者層(ex俺)を離さない為というのもある…

途中で挫折しかけた。

神曲・天国篇/ダンテ・アリギエリ 【要約】 地獄、煉獄を経てついに天国に昇ったダンテはベアトリーチェや聖ベルナールに導かれながら各界で様々な聖人に出会い、ついに最高峰・至高天にて万物を動かす神の愛を目の当たりにしたのだった―――めでたしめでたし…

神曲・煉獄篇

【あらすじ】 地獄を抜け出たダンテとヴェルギリウスは、生前に罪を認め、天国へ上る可能性を持つ者達が罪を償う場所、煉獄の山を登って天国を目指す。 地獄篇程には劇的で無く、よりキリスト教色が強まった感じ。多分天国篇はさらにその傾向が強まるだろう…

09年度最後の1冊

ローマ亡き後の地中海世界(上)(下)/塩野七生 下巻を予約したのがちょうど1年前の09年3月で、その時は1年も掛かるとは思わなかった。 そもそもこの人の叙述対象は元々ルネサンスとか中世の西欧がメインだったんで、まぁ言うなればその蓄積とローマ…

La Divina Commedia/Inferno

神曲・地獄篇/ダンテ・アリギエリ 【あらすじ】 西暦1300年の聖木曜日の夜、深い森に迷い込んだダンテは尊敬する古代のローマの詩人ヴェルギリウスに導かれて地獄を巡る旅に出発し、各界で生前の罪の報いを受ける神話の英雄、歴史上の有名人、(ダンテ…

貸出期限ギリで読破

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神/M・ウェーバー これもまた、タイトルは有名でも実際には読んだ事の無い数多くの書物の一つ。 【要約】 近代資本主義の前提として考えられる精神面、倫理面の変化は一見“利潤を追求する心”の発生であるかのよう…

笑いのめす精神

ダービー!!―フットボール28都市の熱狂/アンディ・ミッテン 大きな書店のサッカー本コーナーに行くと選手個人の自伝とか評伝は多いけども、そういう類の本は結局の所賛美に走りがちだからどこか物足りない。もっとチームとか地域、国全体を叙述したような本…

The Road to Serfdom

隷属への道/F・A・ハイエク 通勤時間中でしか読んでいないので読破までかなり時間が掛かってしまったが、結局全編を通して主張は次に集約される。曰く「一般的に対極にあると考えられている全体主義(ナチス)と共産主義(ソ連)も、自由主義の対極である…