最終予選 日本×北朝鮮(埼スタ)

 日本にとっては8年ぶりの最終予選、当時を肌で感じて知っているものは所属団体でも希少であった。俺もTVで一喜一憂していただけだし。そんな中、団体のあるメンバーが意識を高めようと動いたのは意外だった。そんなキャラではないと思っていたから。

 試合当日は、とにかく重苦しい印象しかなかった。スタジアム入ってもコンコースから中に入るのすら気合が必要な程に。大体、ホームの代表戦であれ程「アウェー」側が入場するのは滅多に無い事だし。

 前年の中国でのアジアカップでの経験からか、日本が対戦国国歌にブーイングする事は無かった。そんな中で俺はふとTVで見たEURO2004のイングランド×フランス戦を思い出した。スタジアムは7〜8割イングランドサポーター、初めにイングランド国歌が流れ、歌い終わると共に大歓声、その直後に凄まじいブーイングが。当然それはフランス国歌に向けてのものだった。両国は歴史的背景からライバルであるのは確かだが、一方で国歌にブーイングしても国際問題にならない程の関係でもあるのだろう。最終予選第1戦で戦ったのは、まだそういった関係になっていない国同士の戦いであった。

 試合に戻ろう。同点ゴールをくらってアウェー側が沸くのを見て、俺は何が何でもこの試合には勝ちたいと思った。あのアウェー側の連中を黙らせたいと思った。残り時間僅かとなっても、その思いは消える事はなかった。

 ご存知のように大黒が決めて日本は勝った。それは1年前、オマーンに勝った時とは全く異なる感情を呼び起こした。あの時は何となく目の前を見ていただけだったが、この時は心の底から歓びが溢れ出ていた。

 車で行った埼玉スタジアム。帰り道にドライバーが疲れてヤバくなりつつも家までなんとか辿り着いたのは、大黒のお陰だと今でも信じている。