夏の夕暮れと新会長選出について一考

 休日。陽も傾いて風も出てきた夕暮れ時に日産スタ周辺をチャリで走ると、散歩、ジョギング、フットサル、部活帰りetc様々な人々が行き交いながらも時間の流れがとても緩やかで、とても落ち着く。『秋は夕暮れ』と言うが、(初)夏のそれも決して劣ってないと思う。スタジアムを通り過ぎ、新横浜の喫茶店でアイスコーヒー一杯と読書。亦楽しからずや。


 協会の新会長に犬飼氏が決まったが、この人の経歴と実績を鑑みると、日頃批判される事の多い旧丸の内御三家体制(古河、三菱、日立、の出身者による要職支配)の別の側面が浮かび上がってくる。
 新会長は日本リーグ(当時の日本最高峰のリーグ)でのプレー経験と同時に、三菱自動車の欧州法人元社長というビジネスマンの顔も持ってる。これは前会長や現FIFA理事の小倉氏も同様で、彼らもまたプレーヤーとしての実績と、古河電工という大会社での勤務経験の2つを併せ持つ。スポーツ組織は巨大化すればするほど、ビジネスの側面も大きくなって『元選手』だけでは手に負えなくなり、それはFIFAの要職や強豪国の協会会長に官僚、弁護士、判事といった人々が就くのに現われているし、元選手でそういった役職に就く場合でも決して“神輿”に留まる事無く、経営や組織運営能力に長け、積極的に運営に関与する人物が多い。(プラティニベッケンバウアールンメニゲ等。)


 そういう趨勢の中で、偶然にも(?)初期の日本リーグは選手を引退したら会社内で他の社員と同様に働き、結果としてビジネススキルや経営能力も磨かれた人材を産み出す環境にあった。よりアマチュア色の濃かった時代の方が、現代のスポーツ組織運営に適した人材を輩出している、というのもある意味皮肉ではあるが。


 そう、上記の人材は日本リーグでも古くから加盟していたチーム出身者に多い反面、長い歴史の中では新興勢力に区分けされるチームにはあまりそういった人物がいない傾向にある。その代表例は読売、日産という80年代以降のサッカー界を牽引した2チーム。この2つのクラブはトップレベル、ユースに限らず指導者については多くの優秀な人材を輩出しているが、プレー経験と組織運営の両面を併せ持つ人材はちょっと思い当たらない。親会社の要職にある人間でサッカー好き、というタイプならいるのだが。その原因として三点程推測すると、
 1.この両クラブはまだアマチュアだった80年代から、プロクラブ的な運営(下部組織の整備等)を志向していた結果、引退してもユース指導者等、人材がサッカー界内部に留まり、三菱や古河がそうであったように親会社でビジネスを学ぶ機会があまり無かった。
 2.80年代以降という比較的最近黄金期を迎えた為、それを支えた選手達が引退する頃には90年代のプロ化の時代に入って評論家やユース指導者、独立してサッカー教室の運営といった方面に人材が流れていった。
 3.1に関連するが、初めからプロを意識して選手を育成、獲得していたため、そもそも60、70年代に比べて、引退後は一般社員と同様に働く、というのが困難な程に会社から独立した組織になっていた。


 どれが正解なのかは分からない。が、明日の試合の結果如何では解任解任が取り沙汰されてるマリノスの現況を見るにつけ、今必要なのは監督というよりも、現場と経営の両方に目が利くフロントであって、そういう人物がいない事が低迷の根本理由なんだろう。


 最後に。前会長は70を越え、新会長も60代半ば、という事からも分かるように、日本リーグ初期の人材は既に還暦を越えており、それに続く人材も上記理由によってあまり期待出来ない状況では、人材は広く求める必要がある。今後も競争力を維持する為には下記3点からの人材供給が必要になるだろう。3は劇薬だけど。
1.Jクラブ運営に成功した人物。(成績/経営両面で)
2.かつて平田氏を招聘したようなスポーツ官僚
3.電○、adid○sのサッカー事業担当。