マリノスについて色々と

 先日、昨季のJの経営状況が開示されマリノスは単年度で5億の赤、累積損失も10億に膨らんでいる事が明らかになった。クラブ公式ページには貸借対照表も公開されており、経営という角度からの分析が可能となっているが、ここではピッチ上の動きにより焦点を当ててみたい。川崎戦の観戦記で“ベテランが動ける内に何かしらタイトルを取らねば”という事を書いたが、その意図としてはタイトルを獲得する事によって賞金や更なる収入増へのチャンスが生まれるが、何も勝ち獲れないままベテランが現役を去った場合、後に残る選手で戦うには非常に不安という側面がある。

以下に05年以降の新人選手の現況をまとめてみる。

Y:ユース、高:高校、大:大学
黒:現在も所属、:移籍、:レンタル中
◆05年
Y:飯倉、天野
高:田中、狩野
◆06年
Y:ハーフナー秋元
◆07年
Y:田代斎藤長谷川アーリア
高:山本石原
大:小宮山
◆08年
Y:水沼、金井
高:浦田梅井
大:兵藤、古部
◆09年
Y:齋藤、端戸
高:阿部
大:渡邉
◆10年
大:松本(怜)
◆11年
Y:小野、松本(翔)
大:武田、森谷
◆12年
Y:熊谷、鈴木
大:比嘉

 この中で大卒選手というのは年齢的に即戦力、下部リーグから有望株を引き抜く要素が強いと思っているのでここではあまり言及しない。08〜10年でW稲田から3年連続世代トップクラスの選手を引き抜いたのは数少ない功績と思うけど、これは現ラオス代表監督の木村氏(浩吉の方、この人もW大OB)のお陰なのかな。武田、森谷はマリノスユース出身の出戻り。比嘉は・・・マジに書くと肩書に惑わされたパターンだと思う。それは08年に加入した古部もそうで、この人は北京五輪世代で反町氏が層を厚くする目的で大学やJ2の選手も幅広く呼んだ合宿に呼ばれていたはず。(他に長友等が発掘された。)何年も追い掛けて獲得したというよりは『五輪代表(レギュラーor候補)』という肩書が先行した感があるんだよな。大卒(23歳)でポジションの3番手、ベンチ入りするかしないか、てのはキツいな。
 問題は高校、ユース、特に06〜09年迄の昇格組だ。この世代はハーフナーから端戸までほぼ全てが世代別代表候補だったり世界大会に出た経験を持つのに、現在も在籍している選手は殆どいない。07〜08年頃に一度クラブは若手中心で戦うと発表していて、それはこの世代が逸材揃いという担保があればこその目論見だったと思うのだが、その結果がこれでは厳しいな。要は18歳までの育成力はあるがそれ以降トップチームで戦えるまでには出来ませんと言っているようなもので、何の為のユースなのかと。まぁ移籍した昇格組が結構活躍しているのを見ると他クラブの為に育てている様なものだが(苦笑)現在も所属する金井にしても39歳ドゥトラの壁を越せずにいるし、齋藤も一度伸び悩んで愛媛にレンタルで出されてようやくJ1で戦えるまでになったという。
 高校から取った選手については元々その世代の有力選手を獲った事例が少ない面はあるが、やはりあまり伸びていない。最近では獲得もしなくなっている。過去20年を振り返ったって高校から獲得して大成したのは中村、松田の2人だけなんではないかと思う。ここでも何度か言及しているが、狩野は高校の頃は本田らと並び称される逸材で、この世代は他にも長友、岡崎、細貝、西川etcと現代表の中核を占めているのに未だに燻ったままなのが勿体無い。4年前は一瞬覚醒しかけて日立台での柏戦など本当に凄かったんだが。プロだから本人次第ではあるのだが、本人の自覚と環境が負の化学反応を起こしてしまった事例と言えるかな。そういやあの福岡行きの話はどうなったんだ(笑)?

 と見て来た訳だが今は中澤が何とか守備をまとめ、中村が攻撃を作り、そしてマルキーニョスが決めているから結果が出ているが、この3人がいなくなったらどうなるのかね?大黒も32歳だし、栗原にしても来年ついに30歳。飯倉、兵藤、小林、谷口の中堅が中心になるだろうけどいずれも良い選手ではあってもGK飯倉を除けば試合を決める選手(守備、攻撃で中心となる存在)では無い。
 齋藤が愛媛で成長したのがヒントになるかと思う。この選手は最初の2年間マリノスで全く芽が出ないまま愛媛に行って覚醒したのだが、それならもう割り切って昇格(獲得)した初年度からJ2なりJFLなりにレンタルさせるという。飯倉もそうだな。この人もJFL時代の熊本でプレーした経験があって、戻った後にチャンスを活かしてレギュラーを奪った。やっぱ外のクラブ、特にマリノスより環境の厳しい場所を経験した選手は逞しいというのもある。欧州などみていると、全くの新人ではないが例えば細貝はレバークーゼンが獲得してすぐに2部のアウグスブルクにレンタルされ、そこで結果を出して呼び戻された。言わばレンタル期間はドイツへの適応期間兼レバークーゼンでプレーする為の最終テストのようなもので、それは国内の新人選手にも十分応用可能なはず。それには『ウチは若い選手育てられません』という現実を直視しないといけないのだが、現状が↑の表の様な結果で、数年間マリノスで燻り続ける位なら最初から他所で鍛えられる方が時間を無駄にしなくて済む。今の若い選手、特に熊谷などはすぐにでもレンタルさせた方が良いと思うのだが・・。

 経営状況やこの前の川崎戦で元マリノス田中が2点決めたとか、色々と出来事が重なったので、ここ数年の疑問(何故ユースは強いのにそれがトップチームに反映されないか?)を解消する意味で書き始めたら意外と長くなってしまった。繰り返すけど、勝負は今年だな。今年を足掛かりに来年度以降の飛躍、とか考えてるとその時――ベテラン達が去る時――などあっという間に来てしまう。年末のブラジル勢の帰国を阻止してでも天皇杯取らないと。