J1第33節 横浜M×新潟(日産)


 ホーム最終節&勝てば優勝という条件が重なった為、この試合は前節以降物凄い売れ行きだったのだが、最終的に62000越えというJ記録だったらしい。確かに開始まで1時間を切っても並びの列が途切れず、一体このスタジアムはどれだけ収容出来るのかと思ったほど。
 今季から試合前にはミュージカル「レ・ミゼラブル」の挿入歌「民衆の歌」を歌っているのだが、優勝への景気付けか、今日は実際のミュージカルのキャストによる生歌披露、という企画もあった。この企画はシーズン半ばのホーム大宮戦以来2度目なのだが、ここで個人的なスタンスを明確にしておくと、毎試合前にこの歌が流れる度に苦笑を禁じ得ない事を述べておく。この歌はそもそもレ・ミゼラブルで描かれた7月王政に対する労働者の不満を顕したものだが、おそらくこの歌を採用した人は、マリノスをこのプロレタリアートに準えているのだと思う。だが、このクラブの歴史を振り返ればこれ程滑稽な事は無い。日産自動車の工場労働者によって作られ、発展したクラブというのならまだしも、実際は創立初期から木村、金田、水沼などの大学の有力選手を獲得し、J発足以降も基本的には他クラブから代表クラスの選手や大物外国人を獲得してタイトルを獲得した、典型的な(大)企業クラブ、言わば“ブルジョアジー”そのもののチームという。まぁこの歌の採用者はこのような事実を知らないだけなのか、あるいは敢えて見て見ぬふりをしているのかまでは分からないが。

 それはともかく、試合について。この試合は形はどうあれ勝利=優勝という事だったので、前半を0−0で終えてもOKと思っていた。実際そうなったのだが、新潟の組織立ったサッカーは予想外だったと言わなければならない。決定機までは至らずも、自陣でボールを奪ってからサイドに展開して攻める“形”は全員で共有されおり、クロスがもう少し正確ならマリノスにとって危険なシーンが何度かあった。一緒に観た友人に言われて知ったのだが、もし今季2ステージ制なら2ndステージは優勝争いしているという程にここ最近の新潟は好調だった。監督柳下氏は磐田の元監督で、選手も元磐田が何人かいるが、披露するサッカーが磐田の目指したパスサッカーではなく、まるで去年までの大宮の様な手堅いサッカーというのも面白い。ちなみにマリノスが今季リーグのH&Aで共に敗れたのはこの新潟だけ。
 試合は後半半ばにCKから川又が先制し、ロスタイムにはカウンターから鈴木武蔵が追加点という、内容的にも去年までの大宮を彷彿とさせる試合だった。結果もさることながら、試合終了の瞬間まで体を張ってマリノスの攻撃を防ぐ新潟の選手達もまた素晴らしかった。新潟のGK東口が脅かされたのは中村のFKだけだったといっても過言では無い。強いて言えば後半にマルキーニョスが左からグラウンダーで中に入れて走り込んだ藤田が利き足の左で合わせたのだが、枠を捉えられず。この選手もJ2時代はゴールを量産していたし、今季も天皇杯で下部リーグ相手にならば決めるのだが、リーグではここまで出場時間は限られるとは言え2点(2点とも4節の東京戦)。優勝争いするチームのFWとしては物足りないな。友人が言っていたがかつての大島クラスのFWがいれば。
 新潟の選手で印象に残ったのはレオ・シルバだった。中盤深めの位置から自分で持ち上がる事も出来るし、パスセンスもある典型的なブラジルのボランチという選手。名古屋戦でのダニルソンもそうだが、こういう選手がボランチにいて機能すればそら強いわな。

 試合後は元住吉の焼き肉屋に向かい、祝勝会の予定を変更して壮行会を開催した。偶然ながら等々力のある武蔵小杉まで一駅という場所。この駅が改装されてから初めて降りたがあまりに変わっていて驚いた。