昨日の補足

 昨日の試合で感じた事を少し補足したい。以前から述べている事だが、マリノスが昨年優勝争い出来たのはメンバー固定による連携強化の賜物であって、ベテラン中心のその固定メンバーが怪我無くコンディションを保って初めて一定の結果を出す事が出来る。裏を返せば週2試合が続いたり、怪我による離脱があれば一気に水準を保てなくなり、つまりはACLに参戦する、あるいはカップ戦で勝ち続けるには全く相応しくないサッカーとも言える訳だ。
 固定メンバーの中でも特に重要なのは1トップと中村俊輔の関係であり、コンディションの良し悪しと言えるだろうか。トップにボールが収まって初めて後ろの選手が上がる余裕が生まれる中で、昨季のマルキーニョスは、少なくともシーズンの3分の2まではそれをこなし、なおかつ点も取っていた。一方で今季主に使われている伊藤はゴールはともかく(昨日のPKでようやく5点目)、ポストの動きでマルキーニョスに遠く及ばない結果となっており、鹿島戦の後の鹿島DF昌子のコメントを読むとそれがよく分かる。

相手は伊藤選手が孤立していた。ロングボールも青木さんがほとんど、というか全部勝っていた。俊輔さんが「そこをがんばってくれ」と言っていたので、相手の攻撃はそこしかないと思って、青木さんと伊藤選手にだけは触らせないということを試合中に確認しながらやっていた。

 余談だが、このコメントを見た時背筋がゾッとした。昔日産での試合で齋藤学がドリブルを仕掛けようとした瞬間に複数で囲い込んで、加速が付く前にボールを奪ってしまったシーンを目撃した時も同じ感覚を味わったが、相手の長所/短所を見抜いてそれを徹底的に潰す事にかけてこのチームの右に出るものは無い。

 話を戻し・・・言わばポストも出来て、ゴールも決めるスーパーFWがいて初めて機能するサッカー、これはちょっと効率が悪いなと思った中で、ふと、ある意味これはマリノスの伝統でもあるなと思った。
 基本的にこのチームは代表クラスのCB陣を軸に守り、攻撃は基本的に「パスも出せてゴールも決める10番」と「10番のパスを受け、なおかつ独力でもゴールを決める9番」で点を取って勝ってきた歴史がある。ビスコンティとディアスorメディナベージョ、若き日の中村俊輔とサリナス、奥と久保、そして去年のベテラン中村とマルキーニョスという風に。日産自動車時代はあまり知らないが、木村和司レナトなどはそういう関係だったのだろうと思う。
 そういう事が可能なのは上記のメンバーを見ても分かるようにこのチームが「選手を売るクラブ」ではなく「買えるクラブ」だったのが大きい。逆に2005年以降中位に低迷していたのは、日産からの支援の減少で「買える」クラブでは無くなったからと言う事も出来る。2013年については中村、マルキーニョスともかつて在籍したベテラン、言わば過去の遺産だった訳で。この様に現状のマリノスのサッカーの閉塞感というのは昔ほど選手を買える訳ではない中で当時のサッカーを踏襲しているという側面もあるかと思う。

 自分が覚えている限りこれ以外のサッカーで「形」と呼べるほどのものは07年の早野時代くらいかな。猛プレスからの速攻で最後は前の山瀬、坂田、大島のトライアングルが仕上げる形が上手くハマっていた。結局SBの上がった裏を突かれ始めてからは失速してしまい、1年で終わってしまったが、前線の3名とも二桁ゴールを上げて、おそらくキャリアベストのスコアだったと思う。ちなみに早野時代は山瀬弟や小宮山といった選手をレギュラーで起用したり、今のマリノスには無い若い選手の育成と言う面でも実績はあった。

 マリノスの監督と言うと安上がりなOB人事に走る事が近年特に多いが、OB人事=悪ではなく、昔日の栄光のイメージに囚われている人が不要という事なのだろう。マリノス(日産)OBでも長谷川健太、柱谷兄と言った↑のようなサッカー以外でしっかり実績を積み上げている人はいる。若い選手が育っていないと言っても指導者次第でブレイクする可能性があるのは、早野時代、あるいは狩野が一瞬覚醒した木村(浩)時代を見ても分かる通り。もう完全に自分の中では来季監督が変わる前提になっているのだが(苦笑)、ネルシーニョ(とコーチ井原のセット)が来たら面白いと思うんだが・・・。