全ては1つのきっかけから

サポーターをめぐる冒険-Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった/中村慎太郎

 サッカー本大賞を受賞したというニュースで存在は知っていたのだが、年明けに読み始めたら面白くて1日半で読了した。内容は代表戦や海外サッカーはそれなりに視ていたもの特にJを始めとする国内サッカーにはあまり関心の無かった著者が、たまたま誘われて観に行ったFC東京戦を契機にJリーグの世界、サポーターの世界に入り込んでいく、というもの。特にサッカーそのものだけでなくスタジアムやスタグル、各チームのチャントへの興味、あるいは自らの微妙な立ち位置(「サポーター」なのかどうか)などはシンクロする所が多数。本作は主に観戦した試合単位で章立てされており、最後は前々回の天皇杯決勝、つまり旧国立最後の決勝となった横浜M×広島戦なのだが、そこでの

セレモニーが行われるのをしばし眺め、夕日に赤く染まった国立競技場で余韻に浸っていた

という描写は、自分も全く同じ視点で写真まで撮ってしまっただけに他にも同じ様な人がいたのかという驚きと共に非常に共感した。

 自分の場合、観戦は体に染み付いた習慣みたいなもので、特にマリノス戦は友人とサッカーを観に行ってるのか酒を飲みに行ってるのか分からなくなる時があるが(苦笑)、そのきっかけを考えると元々サッカー好きだったというのはあくまで前提条件で、直接的なきっかけとしてはやはり著者と同じく試合(自分の場合は代表戦、マリノス戦)に誘ってくれる友人達の存在が大きかったと思う。それ以前もマリノス戦や高校選手権に行った事はあったが、あくまで単発で行っただけで継続的に観戦した訳では無かった。誘われて一度日産(当時はまだ横浜国際)や三ツ沢、あるいは旧国立競技場に行くと、同じ首都圏にある他のスタジアムにも行ってみたくなったし、旅行を兼ねて遠地にも行くようになった。また代表戦の後今度は年代別(特に五輪世代)もとなったし、J1を観たらJ2もと。このように、全ては友人達の誘いから。読みながらそんな事を思ったりもした。

 著者のプロフィールを見たら同世代だったので驚いたが、Jリーグを観始める前のサッカーに対する関心の程度というのはこの世代の典型というか多数を占めているように思う。代表がW杯予選やってれば少なくとも結果くらいはチェックするし、本田、香川、長友、メッシ、クリロナネイマールぐらいは知っている、というレベル。地上波で取り上げられるサッカー関連のニュースというのはやはり代表戦、海外サッカー(日本人の海外組含む)が大半だし、それを反映したものと言えるかな。いくらネットメディアが伸びていると言ってもまだ地上波TVの影響力を凌駕するには至っていない現状だからこそ、Jリーグは地上波での露出にこだわるのだろう。その意味で言えば広島はCSやクラブW杯でかなり試合が地上波放映されたので、青山、浅野といった選手の知名度は上がったのではと思う。

 twitter等で著者の近況を追うとアウェイの代表戦や都道府県リーグまで追ったりと、初のJ観戦から2年足らずで完全にサポーターの世界、(国内)サッカーの世界に浸かっているようだ。代表のアウェイ戦観戦は自分も未だ果たせていない。