年度末に

相も変わらずサッカーネタを。Aマッチデーから見た欧州の強豪について
■ドイツ
 タレントは多いのだが、ポジションに偏りがあって、中盤は豪華な反面、SBとCFの層が薄い。CFなどはクルゼが素行を問題視されて代表を外され、本職ゼロ。これらのポジションはまさにラーム、クローゼの後継者枠なのだが、育成改革に成功したと評価されるドイツでもこういった課題はあるのだな。それを踏まえてか、最近は前はゲッツェのゼロトップで後ろは3バックを試し始めた。ラームの後継者と言えばバイエルンのアラバは両サイド+中盤+最近はCBすらこなしているので国籍がドイツなら間違いなく代表入りしてただろうけど、この選手はオーストリア代表。ちなみにウィーン生まれだが父はナイジェリア人、母はフィリピン人という家庭に生まれており、もし生まれたのがウィーンではなくミュンヘンだったらと思わずにいられない。
 ラームの後のキャプテンはシュバインシュタイガーだが、ブラジルW杯の少し前から怪我で代表辞退する事が多くなってる。見た目は怪我に強そうな身体だが、かつてのヴィエリみたく筋組織が繊細なのかもしれない。現在代表114試合で、年齢的に(今年32歳)マテウスのドイツ記録(150試合)更新も十分可能と思っていたのだが、今年で代表を引退するような気がする。

イングランド
 ドイツ相手にアウェイで0−2から逆転勝ちしたものの、若手中心のオランダにホームで逆転負け。波はあるけど今のイングランドは後ろから前までタレントが揃っていて、しかも若手、中堅、ベテランのバランスも良い。強いて言うならSBがかつてのA・コール、G・ネビル級のタレントがいないという程度で。まぁこの国の弱点はリズムを変える司令塔がいないという事に尽きるのだが、今の若い選手は今までの様にスピード、パワー一辺倒ではなくパスの前にワンフェイク入れたり相手の裏をかくようなプレーが多いので、組み合わせ次第ではベスト4くらい行きそう。デル・アリ、ララーナ、後は怪我で出場微妙だがウィルシェアとかは今までのイングランドぽくないプレースタイル。CFのケインも昔のシアラーみたいなタイプでは無くて、サイドに流れてアシストしたり、エリア外から巻くミドルも持っていて“上手い”アタッカー。

■イタリア
 ドイツに大敗したのは主力(CBキエリーニ、MFマルキジオデ・ロッシ)がいなくてお試しモードだったからという面はあるにせよ、同時に層の薄さも感じさせた。主力の不在という意味ではドイツもCBボアテンク、MFシュバインシュタイガーギュンドアンが不在だったがそれでもフンメルス、クロース、エジル、ロイス、ゲッツェがいた訳で。この5年位ずっとブッフォンデ・ロッシピルロという06年優勝組を引っ張ってどうにか体裁を整えてきた中で、この3人もさすがに加齢による衰えでかつての力を出せなくなってきていよいよ危険な状況になりつつある、という印象。
 今でもベストメンバーがベストコンディションなら1発勝負のトーナメントではドイツ、スペインにも勝つチャンスはあるかもしれない。守備はブッフォン、キエリーニ、ボヌッチユベントス勢で固めて安定感はあるだろうし。ただ特に攻撃のタレントが枯渇して、“ベスト”に入りそうなのがセリエAやプレミアでそこそこ活躍している程度の選手ばかりなんだよな。ナポリでそこそこ点取ってるけどイグアインには及ばないインシー二ェとか、最近ローマに移籍してようやく開花しつつあるエル・シャーラウィ、プレミアでそこそこ活躍してるけどトップクラスとは言えないペッレとか。11人選ぶのも苦労しそうなのに、23人枠だとどこまでハードルが下がるかと思うとゾッとする。
 それでもイタリアは監督力で結果を出してしまう(特にEURO)ので際どい試合を重ねて勝ち進む可能性も少し感じているが、全体的にはEURO2000前のドイツみたく、本格的な冬の到来を感じさせる。

■フランス
 サッカー以外の理由でベンゼマとヴァルビュエナが起用できないかもしれないのは痛いが、グリーズマン、ジニャク、コマンとか新戦力や復活組がいて戦力は揃ってる。さすがに優勝は厳しいと思うが、GKから中盤まではここ3年位軸は変わらないので大崩れはしないと思う。
 しかし若い世代ほど(特に攻撃陣に)黒人選手が多いという傾向は変わっていない。WSDの最新号でフランス国内の期待の10代のタレントが2人紹介されてたが、両名ともアフリカ系移民だった。現代表で白人のアタッカーと言うとグリーズマン、ジニャク、ジルーぐらいだが、グリーズマンはフランス国内の育成機関のセレクションに落とされてスペイン(R・ソシエダ)で育った選手だし、ジニャク、ジルーは中央でポストもこなす点取り屋タイプ。やはりフランス国内だとサイドアタッカードリブラーはスピードに秀でて早熟な黒人選手が台頭しやすい、という側面がありそう。