J1後期第5節 横浜M×磐田(日産)


 2年ぶりの磐田戦だが、このチームは全体的に綺麗なサッカーでリアリズムより理想を追う反面、泥臭さに欠ける印象がある。磐田自身はJ2の厳しい戦いを勝ち抜いてきた中で、今は降格時と違って地に足が付いて泥臭さも備えていると感じているのかもしれないが、例えば甲府、大宮などと比較すれば、という。その点においては清水も同様だな。思えば前期の対戦ではマリノスがアウェイで磐田の浅いDFラインを突いて5−1という結果だったが、これも3年前の日本平での試合(マリノスが5−0)と重なる。サッカー王国のプライドはあれど、中身が追い付かなくなってきている静岡勢の共通点。

 今日の試合も磐田はボールを繋いで攻めてきたが、特に守備面での要所の締め所が緩く、自陣ゴール前でスペースが空いたりマークがずれていたりという場面が幾つかあった。マリノスの先制点も、カイケがカウンターから前にボールを運び、サイドに走り込んだマルティノスにパス、マルティノスは中央に折り返してゴール前に走り込んでいたカイケがダイレクトで合わせた形だが、お手本の様な得点パターンで失点するのは攻撃側の能力、コンビネーションだけではなくやはり守備の対応にも難があるように思う。
 このゴールを含め、今日のマリノスは決定機を幾つも作り出していた。いつもの様にセットプレーとカウンターだけではなく、前線のコンビネーションで作った形や遠目からのミドルもあり、こんな試合は何時ぶりかという。だが前半からチャンスを逃し続けているのを観て、友人と嫌な予感がすると言っていたら後半半ばに川辺のミドルが決まって同点となった。この選手は広島からのレンタルでリオ五輪の代表候補にもなったボランチだが、広島は他チームから獲得した若手、中堅、また浅野の様に高校出の選手を育てるのは上手いが、ユースから昇格した選手はあまり上手く育てられていない。この川辺や野津田も今は他クラブにレンタルだし、ユース上がりの選手が広島で確固たるポジションを掴んだのは柏木、槇野の世代(87年生まれ)が最後なのではないかと思う。ユース自体は安定して好成績を収めているので不思議なのだが。

 同点後もマリノスが押し込む展開は変わらなかったが、磐田もカウンターからアダイウトンの個人技でチャンスを作り出す。今日のマリノスはジェイは上手く抑えていたが、アダイウトンのスピードと個人技には手を焼いていた。そのまま試合は1−1で終了。マリノスは追い付かれてから交代はカイケ→伊藤のみで枠を2つ残したままだった。カイケ→伊藤は展開に関係なく何時も行われるものだし、リードしていたら2列目の誰かに代えて兵藤を入れ、逆にリードされていたら2トップや、栗原投入でファビオ前線へシフトなりは対応していただろうが、「押しながら追い付かれる」というあまり無い展開に対応出来なかったのではないかと思う。友人とも話したが、今季の結果がどうあれモンバエルツは退任し来季は結果を出す勝負師タイプの監督を招聘するような気がする。言わばモンバエルツは畑を耕し種を撒く役割で、そこから育った実を刈り取るタイプにバトンタッチという流れ。中村、中澤の年齢を考えたら「もう1年任せる」という余裕は無いだろう、というのも根拠の一つなのだがどうかな。

磐田で気になった選手を
■志村滉
GKがカミンスキーでも八田でも無く知らない選手だったので調べたら市船から加入して2年目の選手。リオ世代では柏の中村に続いて2人目のJ1正GKだな。試合に出始めたのが6月からなのでリオの代表には選ばれなかったが、貴重な若手J1GKとして試合経験を積んで欲しい。プレーはパントキックよりもグラウンダーのフィード中心だったのが印象深い。

小林祐希
遠目からでもミドルを狙っていく積極性は感じたが、全体的にはあまり目立たず。代表にも入った選手だが現時点ではまだプレー自体は代表当落ギリギリという印象を受けた。本田の縮小コピー版とでも言うか。