年間表彰2017(後編)

 今日は後編としてMVPの発表。もう今年で9年目になった。例年通り選考者をキリの良い40名に合わせるために半ば強引に督促する中で(苦笑)、回答してくれる友人達に感謝したい。今年はとうとう隣に座ってる会社の先輩(レッズサポ)にまで聞いてしまった。発表時期もバロンドールはクリスマス前なんでこれもその時期に発表出来ればなと毎年思うのだが、最終的にはこの仕事納め前後になってしまう。投票の集まりもそうだし、結局自分もこの時期にならないと落ち着いて集計したり書いたりする時間が無いんだな。なので来年はもう少し余裕を持って依頼したい。

【選考方法】
いつもと同じく各々ベスト5を選んで貰い1位:5pt〜5位:1ptでポイント化してその総合計で選出。仮にポイントが並んだ場合は1位票の多い方が上位、それでも並んだ場合は以下2位→3位・・・5位票の大小で決定。順位票すらも並んだ場合は両者同順位とする。なおこのルールはベスト5のみ適用し、6位以下でポイントが同じ場合は全て同順位と扱う。
【過去の受賞者】

それでは5位から発表。例年通り選考者コメントを太字で表記。
第5位
乾貴士エイバル):32pt
ドイツ、スペインで積んできた研鑽が、いま結実し」、「スペインで日本人が活躍出来ないジンクスを打ち砕きつつある」乾が5位。「今年がこれまでで最も安定して結果を出せた年のように思う」との声もあったが、ザック時代は代表には選ばれていても基本控えで、評価も香川や清武を超える事は無かったと思うが、今は「代表への還元も楽しみ」と待望される存在に。
正直ここまで票を集めたのは意外だった。やはりバルサ戦の2ゴールのインパクトもあったと思うが、「スペインでコンスタントに出場、ゴールしてるのはもっと評価されてもいい」、「スペインリーグで試合に出続けている事実。すごいです。」とリーガで普通に試合に出て、結果を残す事に対する評価もあり。技術レベルに関してスペインはドイツ、イングランド、イタリアと比較してもワンランク上にあると思うので(上位よりも中位、下位に行くほどその差は顕著だと思う)、そこでレギュラーというのはやはり凄い事。

第4位
中村俊輔(磐田):35pt
毎年ゴラッソを生み出している日本一サッカーの上手いアラフォー」であり「ジュビロ躍進の立役者」が4位。相変わらずセットプレーも絶好調で「セットプレーのキックの精度の高さの重要性を改めて感じさせ」、「フリーキックのときに審判に必ず壁の距離を確認させるところに拘りを感じる」。「磐田に行ってのびのびしてたね」という声もあったが、今年の磐田を見ていると2013年のマリノスによく似ている。ボランチは人に強いタイプと前に走り込むタイプのコンビ(ムサエフ&川辺/富澤&中町)、左サイドにドリブラー(齋藤/アダイウトン)、トップには体を張れて高さもあるタイプ(マルキーニョス/川又)という具合に。やっぱこの選手がやりやすい(動きやすい)サッカーを追求するとこうなるんだなというのがよく分かって面白かった。

第3位
井手口陽介(G大阪):62pt
多分この先長く代表を支えるボランチ」、「将来の日本を背負う選手」、「これからが楽しみな選手!」そして「2017年飛躍という意味では今年の顔と言える」井手口が3位。まぁこの選手はやはり「ロシア行きを決定付けるカットインからのミドル」を決め、「MOM級の活躍」を見せた「オーストラリア戦の印象があまりに強い」。「ハリルの最大の発見」。また「E-1北朝鮮戦ロスタイムのゴールはしびれました。」。この選手と言えば成人式の写真もなかなかインパクトがあったが、あれを見るとガンバのアカデミーはフェードアウトさせずによくここまで育てたと思う(笑)最近プレーで気になるのは、エリア内での守備時に右足アウトでクリアする癖?で、遠くに蹴り出せずにすぐ近くの相手に拾われてピンチを招くことがある。ブラジル戦でマルセロにミドルを決められた時もこのプレーが発端だったし、この前の代表戦でもあった。W杯ではこういう癖は細かく分析されると思うので、「強靱なフィジカルと運動量」を兼ね備えた「インサイドハーフの理想形を目指し、今後のさらなる成長に期待」。

第2位
小林悠(川崎):75pt
言うまでもない最高の優勝立役者。」であり、「ゴールゲッター+若手を引っ張る姿」を見せながら「(ゴールを)決めた試合は負け無しとまさにエースであり、キャプテン、チームの大黒柱となった」JのMVP&得点王が2位。「大事なとこで活躍してきたMVPは外せない」。「川崎が逆転優勝出来た得失点差を生み出したのはこの得点王の活躍」あってこそ。この選手は両足でも頭でも決められて、自分で持ち込んで決める時もあれば中で合わせる時もある。とにかく器用なアタッカーという印象。中村憲剛のパスに合わせる動きを覚えて、風間サッカーで技術も向上した結果が今なのだろうと思う。それだけの素質があったという言い方も出来るが。
ただ「国際舞台で活躍出来るか?」となると現状ではW杯メンバーの最後の1枠に入るかどうかといった所かなと思う。「(中央ではなく)右や左ではあまり結果を出せない印象」もあるが、メンバー入りは来季のACLでの出来が左右する様に思う。独特の緊張感がある国際試合で日本より激しく削ってくる相手に普段通りのプレーを出して結果も残せるかどうか。前回齋藤学がメンバー入り出来たのもACLでそれが出来たのが選考の最後の一押しになったと思っている。「代表など監督にかかわらず結果を出せる選手になってほしい。」という声も。

2017年日本最優秀選手
中村憲剛(川崎):94pt

 という事で今年のMVPは去年のJのMVPだったこの人。
初の川崎優勝に大きく貢献した為」、「悲願の優勝はこの人の存在なくして語れない!」、「小林悠がMVPと得点王取れたのも、大久保嘉人が東京にいて全然点取れなかったのも、憲剛率いるフロンターレ中盤あってこそ」、「初タイトルは憲剛あってこそ。」と優勝への貢献を評価する声多数。「優勝よかったね(涙)」「これまでの貢献度とチームの成績から、優勝させてあげたい選手だった」、「おめでとうとしか言えない笑」、「いやー優勝できてよかった。」、「フロンターレファンだけに限らず、日本中のサッカーファンに心から「良かったね」と思わせる選手」の声もあったようについにJ1タイトルを獲得。「ルヴァン杯準優勝時に記者に足りなかったものは何かと聞かれ、「それがわかっていたら優勝している」と答えたのは至言であり、後の歓喜の伏線でもあった。
あの涙を見たらこの人しかいないね!」、「優勝決定時の涙にはグッと来ました。」、「あの涙は忘れません」、「優勝の時の涙に本当に感動!!」とこの選手の今季のハイライトと言えばプレーよりもやはりあの最終節終了後のシーンだろうか。プレーの面では「夏場の交代を受け入れながら、リーグ戦32試合に出場」、「シーズン途中まではほぼ途中交代でしたが、浦和とのACL以降は全てフル出場。」と、上手くコンディションを調整しながら長いシーズンを戦えたのが大きかった。

 投票が集まり始めた時は小林に票が集まっていたのだが、途中からこの人への票が一気に伸び始めて最終的には約20pt差を付けてMVPに。特に1位に挙げる人が多く、この人に入れた22名の内、15名が1位に入れており、これは断トツ(次に1位票が多いのは小林で7名)。今季はやはり川崎の初J1タイトルというインパクトがあって、川崎と言えばやはりこの人という事なのだろう。

6位以下は下記の通り。
赤文字の選手は女子選手、赤文字のチームは海外クラブ、青文字のチームは下部リーグ

6位:27pt
中村航輔(柏)
7位:19p
岡崎慎司レスター・シティ)、中澤佑二(横浜M)
9位:16pt
山口螢C大阪
10位:14pt
久保裕也KAAヘント
11位:12pt
吉田麻也サウサンプトン)、杉本健勇C大阪
13位:11pt
酒井宏樹マルセイユ)、齋藤学(横浜M)、槙野智章(浦和)
16位:10pt
カズ(横浜FC)、本田圭佑ACミランパチューカ
18位:8pt
大迫勇也ケルン)、柴崎岳ヘタフェ)、久保建英(FC東京)
21位:7pt
石川直宏(FC東京)、長友佑都インテル・ミラノ
23位:6pt
飯倉大樹横浜M)、興梠慎三(浦和)
25位:5pt
香川真司ドルトムント)、柏木陽介(浦和)、大久保嘉人(FC東京)
28位:4pt
阿部浩之谷口彰悟家長昭博(川崎)、山中亮輔天野純(横浜M)、川又堅碁(磐田)
長谷部誠フランクフルト)、原口元気ヘルタ・ベルリン
安西幸輝東京V)、高田明長崎社長
38位:3pt
伊藤翔横浜M)、今野泰幸(G大阪)
40位:2pt
浅野拓磨シュトゥットガルト)、川島永嗣メス
伊東純也(柏)、内田達也東京V)、名波浩(磐田監督)
45位:1pt
平本一樹東京V)、富樫敬真横浜M)、柿谷曜一朗C大阪)、室屋成(FC東京)
横山久美1FFCフランクフルト)、丸山桂里奈元なでしこ)、飯田淳平(主審)

・GKは6位の中村航輔始め3人が得票。
中村は「福岡時代から全ての面でスケールアップした印象」、「今年1年でさらに成長」「今年初めて生で観たが、練習の時点で圧巻の動きだった。被ベストゴールメイカーになってしまうのは身体能力の成せる業だろう。」とGKとしての能力を評価する声が多かった。また「早く代表正ゴールキーパーになってほしいので。」、「次のW杯は中村のGKを見たい」という代表への期待もあった。こうした期待はやはり今若いJ1正GKが少ないという背景もあるだろうな。この前の韓国戦で活躍して天皇杯で柏が勝っていれば5位以内にランクされていたかもしれない。この選手は川口能活を思い起こさせると以前書いたが、川口は同い年の頃にフランスW杯予選、本大会を経験している。ただ中村は能力で言えば当時の川口を上回っているはず。それだけ日本のレベルが上がったのだと思うし、現正GK川島のレベルが高いという事なのだと思う。川島は「単純にアジア人のGKで5大リーグでレギュラーを張っていることが快挙。」、「改めて日本のGKとして別格の存在であることを確認」の声があったが、今の代表で過小評価されている選手の一人。
GK3人目はマリノスのGK飯倉。「今まで散見されたポカもなくなり、伝統の堅守を体現し、耐えて耐えてのおしんサッカーだったマリノスの最後の砦となった」。去年まではキックはアレだがチームに勝点をもたらすセーブを見せるGKだった榎本に対して、キックはそこそこ上手いがシュートストップは榎本に劣る印象だったが、今年はその点が向上したと思う。逆にキックはイマイチではあったが(苦笑)先日の天皇杯柏戦で見せた延長後半終了間際のビッグセーブ(枠内に飛んだオーバーヘッドを横っ飛びで弾いた)は今年のハイライト。

・元々この投票は選考者にマリノス繋がりの友人が多いのでマリノスの選手に多めに票が入るのだが、中澤には19ptと予想以上の票が集まった。
今年も気づけばリーグフルタイム出場。」、「怪我しない、カードもらわない、DFとはいえ体力落ちない」、「39歳?鉄人としかいいようがない。」と今年も変わらぬ安定稼働。元々スピードのあるタイプではないし、ジャンプ力もさすがに10年前に比べれば衰えを感じるが、ここまで活躍出来るのは「抜群の読み・指示」なんだな。「このまま、古株として頑張ってもらいたい!!」という期待もあるが、どうやら40歳となる来季がラストシーズンのようだ。新監督のポステコグルーは豪州代表を見ても分かる様に最終ラインから繋ぐサッカーを志向しているようだが「新指揮官がどのようなビジョンで考えるかで立ち位置が大きく変わりそう」。「早く彼を追い越すCBが出て欲しい」という意見もあるように後継者探しはマリノス積年の課題で、神戸の岩波など良いんじゃないかと思っていたのだが浦和に移籍決定と。

・J1昇格を決めた長崎社長の高田氏に2名から票が入った。「最悪の経営状態から一転してのこの攻勢は、やはり新社長のカリスマ性無くしては成し遂げられなかったのでは」、「消滅危機からクラブを救った救世主。金は出すが現場に口を出さない某福岡の野球球団よろしく、好循環を生み出す。
普通なら来季は長崎遠征だ、となるのだが、まさか昇格するとは思わず今年のGWにトランスコスモススタジアムに行ってしまい、長崎市街、諫早も観光してしまった(苦笑)行った試合は丁度経営が変わった直後で、試合前に高田氏が挨拶したのだが、TVで見せる顔では無く、一代で会社を興して1000億超の規模にまで育てた経営者としての姿で、それが印象に残っている。

・リーグ優勝した川崎からは中村(憲)、小林以外に阿部、谷口、家長が得票。
阿部
トラップもシュートも全てが高水準。どうしてガンバはこの選手を放出したのか、理解に苦しむ。
谷口
空中戦勝率はリーグトップの70%越えを記録。CBで7ゴール、うち6ゴールはチームの1点目と攻守に活躍した。
家長
全く最初はチームにフィットせず足を引っ張る要因になってた存在ですが、どこかのタイミングからチーム戦術にマッチし、最後の方は見てて欠かせなかったと思います。
一人でチームの運命を左右する、一つのチームを上位に押し上げ、降格させ、万年準優勝のチームを優勝に導いた
確かに3月頃に川崎の試合を観た時は小林が孤軍奮闘という印象だったが、夏頃からか、阿部と家長が上手くハマるようになって前線が頻繁にポジションチェンジしながらどこからでも点が取れる怖いチームになった印象。谷口はクラブでの活躍は勿論だが、代表でもCBレギュラー争いに加わって欲しい。先日のEAFF E-1選手権で出場が緒戦のみに留まったのも、ハリルの中では昌子、三浦が上という評価なのだろう。韓国戦の結果や来季の活躍でまた変わる可能性はあるが。

・川崎と同じく初タイトルのセレッソからは山口、杉本、柿谷に票が入った。
山口
どうしてもベスト5には入れたくて。」、「中盤でのボール奪取が見ていて爽快!」、「相方のソウザを操り、ピッチを縦横無尽に駆ける姿はまさに黒子の真骨頂」、「長谷部のコンディションが整わない恐れがある今、W杯本番に向けて山口が担う役割は相当大きい。
→先日の日韓戦では攻撃面では清武の不在が大きかったと思うが、この選手の不在も痛かった。
杉本
得点王争いを踏まえ。」、「怖さのあるストライカーになってくれた印象
→この選手は評価する声がある一方で「正直好きじゃないので圏外w」とか結構アンチもいるのが特徴。「顔がずるい」せいもあるだろうか(笑)
柿谷
健勇の活躍は柿谷が影でサポートしてこそ
→個人的にはルヴァン決勝で途中交代した故のインタビューでの素っ気なさはマイナス点なのだが、昔ならもっと酷い態度であったろう事を考えるとしっかりインタビューで喋った分大人になったということか。

・今年も海外組は票が伸びず、ベスト10に入ったのは乾以外では岡崎と久保(裕)の2名のみ。岡崎は今季好調ながらスタメンを外れる事が多い。だが「少ない時間で結果残して」、「安定して力を発揮している」。毎シーズン岡崎はこういう状況が続くが、今季も「レスターの監督は最終的に岡崎に頼らざるを得ない。最も計算できる選手」なので、是非プレミアで二桁ゴールを(現在6ゴール)。久保は今年の前半は「リーグのレベルが欧州トップから劣るとはいえ、驚異の得点率」を見せて代表でも貴重なゴールを決めたが、今季は開幕から不調。ただ徐々にゴールが増えており、このまま調子を上げてW杯に臨んで欲しい。

・今年も最年少と最年長は久保(建)とカズの34歳差コンビで。久保は「飛び級によるU20日本代表選出」に加えてU17W杯にも出場。そしてリーグ終盤にはクラブのトップチームデビューも果たし、「まだまだフィジカルは少年だけど光るプレーは見せてくれた」。「来季はプロの舞台で活躍してくれるのに期待」という声もあったが、果たしてFC東京がそれに適した環境なのかどうかは分からない。もう少し体が出来てからで遅くないと思うのだが。
 カズには根強い固定票があり、今年も10ptゲット。
→コメント「最年長プレヤー更新の為」、「最年長得点!!」、「レジェンド枠。まだやりますか、リスペクトww
過去の得票を調べてみたが

2009年:-
2010年:10位(10pt)
2011年:4位(34pt)
2012年:5位(36pt)
2013年:11位(12pt)
2014年:14位(11pt)
2015年:10位(17pt)
2016年:11位(14pt)
2017年:16位(10pt)

この安定感(笑)

・今年も引退する選手への惜別が。共に81年生まれのアテネ世代。去年に続いてこの世代も段々現役が少なくなってきた。
平本
自分と同い年だったのもあり、彼と石川直宏には「お疲れ」と言いたい。
石川
01年のトップ昇格で右サイドを湘南乃風の様に駆け上がっていた思い出

・女子選手は2名得票。最近女子の選手に疎くなっているのだが、横山は実は今夏にドイツに移籍した選手で、丸山は引退しているが今の肩書きが何かよく分からないので取り敢えず“元なでしこ”と書いておいた。「ひさびさにバラエティ界に現れた「ヘディング脳」枠の超新星(笑)」らしい。今そんな状態になってるのか。

・その他監督、主審からはそれぞれ名波、飯田の両氏が唯一の得票だった。というか名波“監督”というのにはまだ少し違和感があるのだが(笑)今季はリーグ6位で「前年50だった失点を今年は30と激減させたのは驚異的」。上で述べた様に今の磐田は俊輔仕様になっていると思うが、途中加入の山田を上手く組み込んだり、監督の選手の配置の上手さもある。「最終節なんか見ると、あとは結果がついてくるのを待つだけって感じがして来年が楽しみ」。飯田主審は選考者曰く「今シーズンはとにかく誤審が酷かった。磐田神戸戦の渡部のハンドも言わずもがな・・・」と裏MVPの意味での投票らしい(苦笑)

と言う訳で今年の表彰を終えたい。これでようやく年越しの準備が出来る・・・。