一応ドイツ好きとしての反応

 今週は早かったなー。と同時に非常に重い1週間でもあった訳だが、重いのなんのと言っていても、何時の間にか状況に慣れてしまうのが不思議だ。


 そんな感じで携帯でサッカー情報を見る気すら起こらなかった1週間だったが、ダイスラーの引退には本当に驚かされたし、ある種の虚しさすら抱かずにはいられなかった。
 今でこそ若手の台頭著しいドイツにあって、98年のフランスW杯直後というのは、今思い返すだけでも本当にお先真っ暗のどん底だった。やっとベテラン(クリンスマン、メラー、コーラーetc)が引退して世代交代が本格化したのは良いが、後に続く若手が全く育っていないという最悪の状況。その中で数少ない希望だったのがバラックであり、ダイスラーだった訳だ。そしてそれ故に若くして現役生活を終えなければならなかったのだろう。


 ダイスラーバラックよりもう少し上の世代は、本当に逸材が犇めき合っていた。中盤だけを挙げても
66年:へスラー、トーン、ドル
67年:メラー、ザマー
68年:バスラー、エフェンベルク
69年:ボスツ
70年:ショル
とワールドクラスが目白押しなのに、ショル以降はバラック(76年)、ダイスラー(80年)だけ。貴重な才能であるが故に過剰な期待が掛かってしまったのが、怪我だけでなく時には精神すら病んでしまった原因なのかもしれない。
 

 皮肉な事にダイスラー以降、ドイツにはまたかつてのように逸材が揃い始めている。

81年:クリンゲ
82年:ロルフェス
83年:ハンケ、シュラウドラフ、ポランスキ
84年:シュバインシュタイガートロホウスキキースリンク
85年:ポドルスキ
86年:フント
87年:バウムヨハン、クルシュカ、カストロ

 ブンデスでレギュラー取ってる若手なんて数えるほどしかいなかった一昔前を思えば、バイエルンですらオットル(85年)みたいなレギュラーが生まれる今は隔世の感だ。やっとドイツが若返り、ダイスラーもいよいよ選手として全盛期を迎える年齢ではあったが、もはや重圧の限界だったのかもしれない。


 おそらく後世の人間は彼を評してこう言うだろう。
“ドイツの暗黒時代にあって過去と未来を繋ぐ貴重な架け橋であったが、その重圧を支えるにはあまりにも繊細過ぎた”と。