J1第29節 横浜M×清水(日産)


 人の印象というのは初対面の最初の数秒で決まるというが、直接対面せずとも、人、物のイメージというのは最初に見知った時のまま今でも強く残っているものだ。その意味で俺が抱くアトランタ五輪世代(1973年〜)は、サッカーに魅せられてから初めての五輪代表なので、あれから10年以上が過ぎた今でも若々しい印象がある。それは城や前園、小倉が今は解説者としてTVに出ているのを見ても、消えることは無い。だが、近年清水が若手中心のチーム構成となり、『その中で“大ベテランの”伊東の貢献度は高い』という記事を読んだりすると、「あぁ、もうそんな歳なのか・・・」と今更ながら時の流れを感じてしまう。
 伊東という選手に対して俺が抱いていたイメージというのは、『その能力を未だ全て披露していない選手』だった。多分それは中学生の頃にサッカーダイジェストか何かで、当時の清水の監督アルディレスの『テルは自分の能力にまだ気付いてない』的なコメントを読んだからだったと思う。昔も今も、ボールを持つと近寄り難い圧倒的なオーラ、気品を放つ選手が好きだったから(ザマーとかグァルディオラ、エフェンベルクなど)、日本でもそんな選手が現れて欲しいという願望が、↑のコメントによってさらに増幅されたのかもしれない。トルシエ時代の初期には呼ばれていたけど、何時の間にか代表とは縁が無くなり、近年清水の大黒柱と言われても実際にこの目で見てないので実感が湧かないというのが正直な所だった。
 そして今日、久し振りにみた伊東の姿は、若い頃よりもずっと筋肉が付いたというか、体幹が太くなったように見えた。そしてプレーでも、以前は消える時間が多い印象だったのだが、今日は守備、そして攻撃の基点としてまさに“どんな場面にも顔を出す”プレー振り。特にマリノスの山瀬兄とのマッチアップは本当に面白かった。山瀬が伊東の寄せをその技術で華麗にかわせば、伊東も負けじと兄に出たパスを鋭い読みでカットする―――初めて伊東という選手の能力の高さを、あの年齢でチームに不可欠な選手として中盤に“君臨”している理由が分かった気がした。まさに(昨季までの)PSVでいうコクーのような存在感。


 今まさに伊東は全盛期を迎えているのかもしれない。10年越しにこの選手の“真の能力”をこの目で観る事が出来ただけで、“自転車でGO”企画で最後のチェックポイントに手こずってタイムリミットが結構危うかった事とかどうでもよくなったし、今日行った価値があったというものだ。