昔々、南の海に大きな島と周りを囲む幾多の島々から成る群島がありました。
大島に住まうある部族は、群島間の利害調整をその主な生業としていたのですが、ある時、部族の長が独断である群島の1つに移住する事を決めました。何故移り住まねばならないのか分からない部族の男達は皆これに反対したのですが、最終的には約半数の者達が移住せざるを得ませんでした。


 それから1年後、大島に残った者にも移住の命が下りました。先に移住した者を含め、誰もが再び振り掛かってきた詐欺のような破綻した論理に憤りを覚え、その怒りによって噴火直前の火山の如く、不気味な振動が湧き起こり始めました。ある者は無力感に苛まれ、またある者はこの群島を飛び出すべく、大海原に乗り出す用意を始めました。滅亡の足音はすぐそこまで迫っていたのでした。


〜『子どもに読んで聞かせたい現代の寓話』  第1話「泥舟」より〜