スペインが最強となった理由

ラ・ロハ スペイン代表の秘密/ミゲル・アンヘル・ディアス
 ここ最近読書ペースが上がっていてここに書きたい作品は多々あれどなかなか追いつかない。読了作品を全て記す訳にはいかないので、特に印象深いものについてだけ書くことにしたい。まずは久々のサッカー本を。
 所謂『サッカー本』だが、基本的に読むのは今回のような代表、クラブを歴史的文脈で論じるような類のものに限っている。本屋に行けば選手の自伝やエッセー等も多々あるが、というかそちらの方が数は多いが、あまり心には響かない。海外の選手の自伝などは暴露情報など思った事をそのまま書く傾向があるから面白いが、日本人選手だと御用ライターによる提灯記事レベルであったり、パブリックイメージの遵守が鼻に付くようなものが多いんで対象外。去年の忘年フットサルの賞品に採用したシャルケのウッチ―の写真集位突き抜けた企画なら、それはそれで面白いとは思うのだが(苦笑)

 話が逸れてしまった。本作は従来期待されながらそれを裏切り続けてきたスペインが、EURO2008以降一挙に世界の頂点に君臨するに至った理由を選手、スタッフへの長時間に及ぶインタビューを元に検証するというもの。結論から言えばアラゴネスデル・ボスケと続いた優秀な監督の元、優秀な選手たちがまるでクラブチームのような一体感を持って戦った事が結果に繋がったという事らしい。本作は丁度EURO2012開幕直前に出版されたのだが、同大会への期待感を込めて作品が締められており、本当に優勝してしまったのだからまさしく本作は大当たりだったという事か。

 という作品なのだが、読了後は何か感想が思い浮かぶなり充実感が出た訳でも無く、少し間が空いてしまった。その「間」とは『チームが最強になった理由は監督の手腕とチームワークです。』の一言で片付けられてしまう呆気無さに対してのもの。要はそこまでスペイン代表に思い入れが無いんだな(苦笑)大会中のチームの様子等も詳細に再現されており、ファンなら楽しめる内容と思うが、自分としてはむしろこの前読んだフランス代表の南アでの失態を描いた作品の方が面白かった。

 特に思い入れがある訳ではない者からすれば、このチームに対しては『いかに強くなったか』よりも『いかに衰退するか』に興味が湧く。より正確に言えば、ブラジルやフランス等過去15年の間に栄華を極めたチームは存在したものの、その落日は意外に呆気無かった。ブラジルなら06年で準々決勝敗退、フランスなら02年でのGL敗退。永遠に勝ち続けるチームなど存在しないのは自明の理である以上、スペインがその瞬間ーー王座から陥落する時ーーをどのように迎えるのか。惜しくも決勝で敗れての陥落か、あるいは早期敗退か。その意味で14年は南米開催なのが面白い。