2000年間で最大の発明は何か/ジョン・ブロックマン
本書は実家に置いてあった本で昔一度読んだ事はあるのだが、丁度手持ちの本を読み終えた時に目に入ったので再び手に取った。内容としては著者が自身の主催する『edge』というメーリングリスト上で作品名にもなっている質問を投げ掛け、それに対する回答をまとめたもの。このMLは科学者、数学者、編集者など知の“前縁(edge)”にいる人々のみが招待され、そこでの活発な議論が期待されている。MLという性格上他者の回答を読んでから回答する事が可能なので、人と同じ回答を避けようとする傾向があったり、過去2000年という縛りを越えた回答を送ったりと、回答者それぞれの個性が垣間見えてそれだけでも面白い。例えば『活版印刷』のような一般投票に掛けたら上位に来そうな発明だけでなく『超自然現象を信じないこと(概念)』、『椅子と階段(2000年以上前)』といった回答など。
そんな本書の中でも『コンピュータ』や『デジタル・ビット』、『真空管』といった現代のコンピュータやネットワーク社会に繋がる発明が多く挙げられているのが興味深かった。この本が出版されたのは2000年1月1日とまさに“ミレニアム”真っ只中だった訳だが、当時を思い出すとよく欧米系のメディアが“過去2000年で最も優れた○○は?”という企画を掲載していたのを覚えてる。例えば“過去2000年で最も優れた音楽家”にクラシック部門でベートーベン(だったか?)が選ばれたりとかそんな感じの。日本だとハロウィンやバレンタイン程度のお祭り騒ぎだったと思うが、西暦を基準に生きる人々にとっては感慨深い重要な瞬間だったのだろう。
そしてそんなニュースを知り得たのも90年代後半にインターネットなるものが家でも使えるようになったが故という。それまでの紙媒体のメディアでは知り得なかった情報があっさり分かったり、あの衝撃は忘れられない。当時を思うに、本書はそんなネットワーク社会の到来の衝撃とミレニアム(西暦2000年という区切り)に巡り合わせた高揚感が反映されているように思う。
と“ミレニアム”から10年以上経ってから読むと出版当時とはまた違う印象があるな。大体このMLというのも当時はまさに先端を行くツールだった訳だか、このわずか10年という月日の間にコミュニケーション媒体ならblog、twitter、FBに代表されるSNS、その他回線速度やハードウェアも進化している訳で、本書に登場する“edge”な人々は、あの時点でその後の進化の予兆を感じとっていたのかもしれない。