年間表彰2013(後編)

 さて今日はいよいよ本表彰のメインイベントをば。今年も自分を含め40名の選考者による投票制。投票方法も例年と同じく各々ベスト5を選んで貰い1位:5pt〜5位:1ptでポイント化してその総合計で選出。仮にポイントが並んだ場合は1位票の多い方が上位、それでも並んだ場合は以下2位→3位・・・5位票の大小で決定する。

※選考者(40名)
Y氏、SWT、Yチケン、katoken、ハラD、ONI、Shoto、T内、tor、SONE、woyama、Dちゃん、Sぶ、nemo、yuta、T丸、K太、PAPA、Sがの、Mグ、chuna、H田、Tヨシ、Nンバ、K太郎、Mさん、M野、I田、Sトゥー、Rっく、rage、Aゆこ、Hヤト、Y下さん、S藤君、N川君、T田君、Kれこ、Cカコ、barcaw

【過去の受賞者】
2005年:中村(俊)
2006年:中村(俊)
2007年:中村(俊)
2008年:遠藤
※※※※※※以降投票制※※※※※※
2009年:長谷部  (2位岡崎、3位中村(憲)、4位本田、5位前田)
2010年:本田   (2位香川、3位長友、4位闘莉王、5位前田)
2011年:澤    (2位長友、3位清武、4位カズ、5位長谷部)
2012年:佐藤(寿)(2位長友、3位香川、4位吉田、5位カズ)

では5位から。
第5位
西川(広島):20pt
 実はポイントでは長友と20ptで並んでいたのだが1位票の数(西川3、長友1)でこの人が5位。『二連覇は最少失点の守備組織があったから』『最後の守備の要』『防御率0.82はさすが!』という広島連覇に対する最大の貢献者という評価と『ブラジルでの正GKは彼』という代表で少ないチャンスを活かした活躍が評価されたもの。『地味なことが何よりも魅力』という声もあったが、リーグ優勝した広島の中から誰か1人選ぶとなればやはりこの人ということか。あとこの人と言えばやはり正確なキックで『サンフレッチェのサッカーは彼を抜きに成立しない』。10月のマリノス戦で低い弾丸パントキックがハーフライン辺りにいる味方の足元にピタリと収まったのを観た時は、あまりの正確さ一瞬目の前のプレーが信じられなかった。

第4位
大久保(川崎):60pt
 4位は今季のJ1得点王。ゴールだけでなく『歳を重ねるごとにプレーの幅が広がっている』、『1番感心したのは前線からのチェイシング』『中盤から1人で決めきる、打ちきれる選手になった』と万能FWぶりを見せ付けた。元々はストライカーであり『なつかしき“ストライカー大久保嘉人”をまた見ることができた』と得点に目覚めたと言うよりかは復活したと言った方が正しいかもしれない。この人は悪童ぶりが有名で今も『パスが出ないと(レナトと)喧嘩してるのがらしくて好き』と完全に大人しくなった訳ではないようだが、かつて03年の東アジア選手権日韓戦で速攻退場したような暴発性は少なくなり『有り余る闘争心をコントロールできた一年』だった。『円熟味を増して輝いている』という声もあったが玉田や前田、佐藤(寿)ら30を過ぎてゴール数が増える他の事例と合わせて鑑みるにやっぱ点を取ると言うのはスピード、パワー、技術だけで無く駆け引きとか経験の要素も大きいんだろうな。『ブラジルで最も必要なハートを持っている』など代表復帰を望む声も多かった。

第3位
本田(CSKAモスクワACミラン):72pt
 去年の6位から今年は3位入り。やはり代表でのインパクトが強く『代表を支えてくれた!』『代表は本田のチームであることを強く印象付けた』と結果が出ない時期でもブレずに己の道を貫く姿勢が印象深い。またロシアでもリーグ優勝したし『CLバイエルン戦でマトモに前向いてボール持ててたのは本田だけ』。またこの人と言えば『エア移籍という新語を作った』ように移籍期間が始まる度に移籍話で色々楽しませてくれたが今冬に『ようやくロシア監獄から脱出』。思えばこのエア移籍(とそれに伴う報道)のお陰で移籍話の裏側にある人間模様とか駆け引きとか色々詳しくなれた気がする(笑)ミランでも活躍を。

第2位
柿谷(C大阪):92pt
 この人が2位だったのは少し意外だった。『センスの塊』、『トラップやばい』、『ゴール前のトラップの上手さに夢を感じる』という技術と得点力が融合した日本にこれまでいなかったタイプのFW。去年の半ば頃からブレイクして今年は『まわりの期待、知名度上昇のプレッシャー下で、らしさを見せられた』。『本来あるトコにきた』とあるように慢心してセレッソから左遷→徳島で復活→セレッソ復帰で大ブレイク→代表入りというストーリーは一体何回本人に同じ事喋らすんだよと思わずにはいられなかったがこういうのは一般受けし易いんだろうな。個人的には年賀はがきのイメージキャラクターにまでなったのには驚いたが『サッカーファンを格段に増やしたことも重要』なのだろう。
 ただ今の一般人気はステレオタイプな“若くてカッコよくて巧いサッカー選手”のイメージを着させられている感もある。あるいは中村俊輔が象徴する“経験、老練さ、円熟”との対比としての位置付け。そのようなイメージを越え、本田のように唯一無二の存在となり、選手としてもう一段高み達する期待を込めて最後にある選考者の言を以て締めたい。
天才性はファンの幻想だ。天才はおとぎ話の中だけに存在する。天才と呼ばれているうちはまだまだヒヨッコだ。天才性が剥がれ落ちた時にどの程度の選手なのか。凄いのか、菊原、財前らと同様に元天才になるのか。来年以降、期待したい。

2013年日本最優秀選手
中村(横浜M):136pt
 今年の最優秀選手は2位に44pt差を付けてこの人。シンプルに選考者諸氏の声を。『マリノス復活の立役者』、『試合の流れを変えられる選手』、『輝いてたファンタジスタ』、『年齢的に今年に賭けるプレーだった』、『Jリーグへの貢献度もデカかった』、『年長者になって頭をより使うサッカーになってきた』『おっさん軍団をよく率いてくれました!』、『今年の俊輔はなんだかんだで今までで一番目立ってた』、『キープとキックはピカ一』、『全盛期のリケルメのような取られない「間」を持っていた』、『来年はACLかリーグかどちらかに絞ってタイトルを!』、『悔やまれるのは胆嚢炎による離脱』、『すごい選手なんだとあらためて見せられた』、『優勝してほしかったしさせたかった』。
リケルメの名が出たが確かにこの2人は利き足こそ違えど、中盤の司令塔としてチームの中心に君臨して初めて輝く、というプレースタイルや、30を過ぎて欧州から母国に戻って古巣(ボカ、マリノス)の再建に尽力するという点で似ている。そして生年月日が全く同じという(1978年6月24日生まれ)。この日、日本とアルゼンチンという地球の両端で同じ運命を背負う2人のサッカー選手が誕生したということか。何か不思議な縁を感じずにはいられない。投票制を導入する前、つまり私が1人で決めていた頃は05〜07年で3年連続受賞していたのだが、投票制導入後の初受賞。

6位以下
※6位以下はポイントが並んだら同順位扱い。青字は監督。

7位:川又(新潟)、香川(マンチェスター・U)・・・・19pt
9位:山口(C大阪)・・・・17pt
10位:宇佐美(ホッフェンハイムG大阪)・・・16pt
11位:佐藤(寿)(広島)、カズ(横浜FC)・・・12pt
13位:遠藤(G大阪)・・・11pt
14位:中澤(横浜M)、大迫(鹿島)・・・8pt
16位:岡崎(マインツ)・・・7pt
17位:内田(シャルケ)・・・5pt
18位:中町、マリノスベテラン勢(横浜M)、塩谷(広島)、吉武JFA)、小林(伸)(徳島)・・・4pt
23位:高萩(広島)、榎本(横浜M)、田中(順)・・・3pt
26位:石原、青山(広島)、佐藤(優)、齋藤、(横浜M)、鳴尾(盛岡)
永木(湘南)、長澤(専修大→ケルン)、高瀬(INAC神戸)、中西(元滝川第二→関西大→引退)・・・2pt
35位:那須、鈴木(啓)(浦和)、工藤(柏)、大前(デュッセルドルフ→清水)、酒井(宏)(ハノーファー
細貝(H・ベルリン)、千代反田(徳島)、山下(C大阪)、川島(S・リエージュ)、城福甲府)、天野(横浜M)、鬼武(品川CC)・・・1pt

・26位の中西というのはこの人なのだが、今回一番衝撃だったのが票を入れたのが2名いたという事実。2人とも他に投票した者がいるとは思わなかっただろうけど、こういうミラクルが起こるのもこの賞の面白い所だな。まぁ半分は大迫の票に加算しても良い位だ(笑)
選考者の声⇒『大迫の半端なさをお茶の間に広めた功績は偉大』、『彼のインタビューを見てプロとアマチュアの境界線を考えさせられた』。

・今年は海外組が本田を除いて票が伸びず。調子そのものが悪い場合もあるが、数年前までのようにインテルマンUへの移籍自体が評価に繋がっていたのが、冷静にプレーそのものが判断されるようになったが故ではないかと思う。まぁ海外組主体の代表が低調だった面もあるだろうけど。主なコメントを。
香川『マンチェスターで苦しい一年を過ごしたが、来年のW杯に繋がる光る動きは素晴らしかった。』、長友『インテルの課長クラスまで昇進』、内田『コンスタントにシャルケで出ているのはすごい!』、岡崎『何だかんだで得点力は一番でしょ!』、川島『代表では不安定さも見せるが、GKとして海外で成功を収めていることを評価』、酒井(宏)『クラブでしっかりとレギュラーを確保し、代表でも十分戦えることを示してくれた。』、細貝『そろそろ長谷部を追い越さないと!

・クラブ別で見ると優勝した広島から6名、2位横浜Mから7名(マリノスベテラン勢という票は除く)。ただマリノスは中村以外は一桁ポイントで、やはり今年のマリノス=俊輔という印象を裏付ける結果。広島は最多票での西川の20ptとこの結果からも特定の個人というよりはチームの組織力で勝ったというイメージ。

・今年は上位4人とそれ以外の差が大きく5位以下が混戦だった。長友、香川ら常連が名を連ねる中でベスト10内に今年名を上げた川又と山口がランクイン。川又は『去年ギリギリ残留の新潟を押し上げたのは間違いなくコイツ』、『ほぼフル出場でシュート60本で23ゴールはすごい。』と得点ランク2位の活躍を評価する声。その身体能力に久保の再来という声もあるが、久保の方がより緩急の付いたプレーという印象がある。久保は身体能力もさることながらテクニックもなかなかのものでチップキックやループシュートなども繰り出していたのだが、川又は身体能力を前面に押し出したプレースタイル。逆に言うと今の川又にそういった緩急が付けられれば即代表入りだろうな。
 一方の山口は『セレッソの大黒柱』であり、『膠着状態にあった日本代表の中盤に新たな風を吹き込んだ』と代表での活躍で17pt獲得。そのプレーは『縦横無尽・八面六臂』という言葉が相応しい。実は東アジアカップMVPなんだよな。今のところ代表で細貝より優先的に起用されているが、理由としては代表のパスサッカーへの適性かと思う。細貝も決して足元が弱い訳では無いのだが、パスのリズムが周囲とほんの僅かだけ異なるので、出場時は何時も代表が見せる流れる様なパスが停滞する傾向にある。山口はそこの所で上手く代表のパスのリズムに乗れている感じ。しかし“山口”と書くとどうも違和感があるな(苦笑)名前のインパクトが強い故か。

・今年もカズには12pt入って11位。『今年も、最年長ながら日本サッカー界をプレーヤーとして引っ張ってくれたから。』、『この人の頑張りはスポーツ界全体を盛り上げてる。』これに尽きるな。別にMVP取った訳ではないが、もはやベストジーニストみたく殿堂入りさせても良い位だ(笑)

・J2勢では宇佐美が最多得票。主なコメント⇒『J2のMVPがあれば彼』、『プライドを捨てて日本に帰る決断ができることが素晴らしい。』、『ザックジャパンの最後の1ピースになって欲しい。』まだ21歳。これから幾らでも飛躍する時間はある。ちなみに上述の柿谷への最後のコメントを寄せた選考者某氏曰く『宇佐美を天才という人はいない。なぜならもうすでに宇佐美は凄い選手の仲間入りをしているのであり、天才などというおとぎ話の世界からは卒業しているからである。お嫁さんと仲良しなのも高評価だ。

 という事で今年の表彰を締めたい。来年はW杯イヤーという事で、2010年の本田のような結果になる事を願いつつ。