J1第5節 横浜M×鹿島(日産)


 今日は開始に間に合わず、前半は普段行かない2階で観ることにした。バクスタはほぼ埋まっており、ホームゴール裏との間が少し空いていたのでそこで。2階は俯瞰できる分反対ゴール付近まで見渡せるが、さすがに距離があり、遠い世界の出来事の様な感覚に陥って臨場感、迫力に欠ける。いつも思うことだが日産のトラックと客席の間の余計なスペースが残念でならない。この部分を無くして客席を近付け、スタンドの傾斜を少し上げればかなり変わるのだが。後半は観戦仲間のいる1階へ移動した。

 試合について。正直前半の内容で負けるとは思わなかった。たまに鹿島が攻める時もマリノスのプレスに簡単に引っ掛かってボールを失う場面が多かったし、しかも0−0で御の字と思っていた所に先制点まで取れて、このまま上手く時間を使ってて試合を終わらすという。鹿島の若い選手は全体的に委縮しているような印象で、そこはやはり経験の差なのかと。
 だが後半10分の鹿島の同点で全てが変わった。鹿島の選手がスルスルと前に抜け出していつのまにかGKと1対1になり、そして決めたのだが、あれで鹿島の若い選手にスイッチが入ったと思う。以降は前半までの委縮したプレーは消えてどんどん前に仕掛けていくようになり、野沢、カイオと攻撃の選手を途中投入したことで更に勢いが加速された。で、終盤に野沢が逆転ボレー(この選手は以前もマリノス戦でボレーを決めていたが、浮き球を合わせるのがとても上手い。)、そして柴崎が上手くスペースに走り込んでボールを受けて放ったシュートが決まって3−1。そのまま終了した。
 結果論だが齋藤の欠場は痛かったと思う。中村俊輔を中心に据えるとどうしてもパス中心の横綱相撲的サッカーとなり、苦しい時の前への推進力に欠ける傾向にあるのだが、そういう中で単独で切り込めるこの選手が居ないのは大きい。去年からずっとコンディションが安定せず、欠場やスタメン落ちも少なからずあるのは少し気になる。このタイプの選手は足の筋肉の怪我は天敵で、あのオーウェンハムストリングスを痛めて以降はキャリアが下り坂になってしまっただけに。

 鹿島は開幕戦でも驚いたのだが、去年の今頃はスタメンの平均年齢はマリノスとほぼ同じだったのが、いつの間にか柴崎以外に土居、伊東、昌子がレギュラーに定着し、山本、遠藤の中堅、小笠原、青木、曽ヶ端のベテラン、そして外国人のダヴィと年齢構成のバランスが絶妙になった。ベンチにも野沢、カイオと控えているのだが、このカイオは日本の高校から今年プロ入りした選手で、今日は途中投入された後テクニックとスピードでマリノス守備陣をかき回していたのが衝撃的だった。ピッチに入る時に軽くジャンプしていたのだが、その時の跳躍がまさにバネの付いたような伸びのある飛び方で身体能力の高さを伺わせたのだが、このまま育てば(そして鹿島なら育てるだろうと思う)、相当な選手になるはず。
 鹿島を見ていると育成とは何かを教えられる。先に述べた若い選手は柴崎を除いてはユース代表の常連という訳ではなく(合宿参加程度ならあるかもしれないが)、同世代の中でも突出している訳では無かった。だが、今は鹿島のレギュラーとして一気に同世代の先頭集団に上がってきた訳だ。今のマリノスが熊谷や松本翔、喜田をレギュラーで使ったらどうなるのか?特に熊谷、喜田はボランチが富澤、中町、小椋、三門と控えまで序列が決まってる中でベンチ入りすらままならず、3部のU22選抜で試合経験を積むしかない。
 今のベテランが去ったらどうなるのか―――“その時”は徐々に近付いてるのだなという事を痛感した試合であった。