19年前の世界

1995年/速水健朗

 最近また個人的に新書ブームと言うか、本屋に行って新書コーナーで面白そうなものがあると即買いしてしまう。その中で本著は以前から読んでみたかったものの1つ。「1995」という年を現在の政治・経済・社会その他あらゆる分野の“原点”として位置付け、各分野での出来事を列記しつつ振り返るもの。中身は本当に出来事を列記しただけという感じで、著者が序文で述べた「最低限懐古趣味を満たすものにはなるはず」という言葉通りの内容ではあるのだが、初めて知る事実もあって興味深かった。特に著者は元パソコン誌記者だけあってパソコン、インターネット関連分野の叙述は詳しいのだが、Windows95の発売(イベント)がメーカー始め関連業界によって練られた広告戦略の賜物だった(今で言うステマ)というのは面白い。

 個人的にこの年に対して抱くイメージは灰色、無機質、冷たさ、で何と言うか「色の無い世界」という印象が有る。かすかに記憶の残るバブル期の騒々しさ(明るさ)と対比して阪神淡路大震災オウム事件インパクトの強さ、また当時売れてた音楽というのがミスチルだったり小室プロデュース曲だったり、どれもそれ以前に比べてどこか冷たく、影が射したような曲調、あるいは個人的に当時中学生で、小学生以前とは違った目で世の中を見るようになった―――様々な要因が重なった結果としての全体印象かと思う。よくバブル後の日本は「失われた10年」という言い方をされるが、経済指標など論理的な説明以外にこうした個々人の体験から導き出されている面もあるのではないか。

 19年が経った今、イチロー、カズは未だ現役で、音楽シーンで言えば当時世に出始めた安室奈美恵桜井和寿もトップシーンにいるんだよなぁとしみじみ思いつつ、先日述べたブラジルW杯代表応援ソングを思い出したのだが、あのユニットを組んでる相手GAKU-MCも丁度あの頃に売れたのだった。(EAST END×YURI「DA YO NE」の発売は94年8月)長いような、短いような、ただこの歳になると1年の速度が年々早まってるのは実感してしまうのだが。