終幕

 一応験担ぎでアルゼンチン優勝予想を据え置いたが、正直(不本意ながらも)予想が当たる可能性は十分にあった。アルゼンチンは全体的に守り慣れているというか、全員が守備→カウンターで意思統一されているので単純なクロスはまず通じず、ゴール前でパスを回そうにも人が密集して簡単に通さない。ドイツが攻めあぐねた隙を突いて前のメッシorイグアインが1点、というのはこういう展開ではありがちで、実際オフサイドにはなったがイグアインが一度クロスに合わせてゴールネットを揺らしたし、GKとの1対1の数ならドイツを上回っていた。
 最終的にその1対1からのシュートは全て枠を外れた訳だが、代表でのゴールが少ないパラシオはともかくイグアインまで外したのはTV解説でも言ってたようにノイアーの存在感、オーラ故だったんだろうな。今まで驚異的な反射神経でシュートを止めるGK、足元の技術が高く、正確なフィードを蹴れるGKは何人もいて、両方を兼ね備える選手も存在した訳だが、この選手はそれに加えてまるで昔のスイーパーのように「最後尾のDF」になってスペースを埋めるカバーリングの動きが出来る。何と言うかGKの最新の進化形態を視るような感覚。今大会は良いGKが多いが、中でもこの選手は頭一つ抜けてる。

 アルゼンチンと言えば、試合後にアグエロディ・マリアマスチェラーノといった選手達が涙する中でメッシが目を赤くする事も無く無表情だったのが印象深い。どこか醒めたような、そんな冷たさすら感じた。思えば最後のFKは枠を大きく外した訳だが、W杯を獲るような選手はああいう場面で決めるもの。あの場面以外にも終盤にカウンターで相手CBを1人抜けばチャンスという場面で、疲労困憊だったはずのフンメルスやボアテンクが捨て身で投げ出した足にボールが引っ掛かってチャンスを逃す場面も目立った。マラドーナロナウドジダンもここぞという時に決めてカップを掲げた中で、この選手はまだその域には達していないということなのか。次は31歳、か。せめてコパ・アメリカでも獲って欲しいとは思っているのだが。

 延長後半も残り僅かと言う中でゴールが決まったのは前回を思い起こさせたが、決めたのがそれまで動きが微妙だったゲッツェというのも勝つチームの持つ引き運だろうか。南米開催で最後にブラジル、アルゼンチンを倒して優勝というのも偉業だが、準々決勝のフランス、決勝T1回戦のアルジェリアも強かったし、GLのポルトガル、アメリカ、ガーナもどこが突破してもおかしくない実力だった。そんな相手をGLはフォルタレーザレシフェなど北部、トーナメントではポルトアレグレなど南部、と気候の違う地域を移動しながら戦い抜いたのだから完璧という他無い。ちなみにW杯後最初の試合の相手は実はアルゼンチンという(笑)以前から計画されていたもの。

 と言う感じで朝を迎え、出社した訳だが、日中ずっとアルゼンチンサポーターが試合中に合唱していた歌が耳に残ってしまっている。
 

これは決勝では無くイラン戦だが、久々にスタンドの歌声に痺れた。内容はブラジル徹底してを嗤う内容なので、決勝では歌が始まるとすぐに大きなブーイングが起こったが、あれはドイツサポーターでは無く観に来ていたブラジル人によるものだったのだろう。
 ちなみに歌詞はというと、google翻訳や色々な所で出ている和訳を自分なりに構成してみるとこんな感じだろうか?スペイン語は全く疎いので文法的にはかなり怪しいが。

ブラジルよ、今どんな気分だ?父(アルゼンチン)がお前の家で好き放題しているのは。
誓っても良いが私は決して忘れてはいない。
ディエゴ(マラドーナ)がお前をドリブルで抜き、カニ(―ヒア)が注射を打った(ゴールを決めた)
そのイタリア(W杯)以来お前がずっと泣いているのを。
お前は分かっているんだろう?メッシがカップを掲げるのを。
マラドーナはペレより偉大だ。