チーム別ユース年代最高傑作は誰か(高校:東北・関東甲信越編)

 先日ユース代表について書いた後色々と逡巡する中で、ふと世代別ではなく、各高校、クラブ単位での最高傑作は誰かだろうか、という考えに行き着いた。各チームが生んだ最高の選手が誰かを調べれば何か見えてくるものもあるのかなと。「最高」の定義は難しいが、ここでは割り切って
・A代表出場試合
・J1出場試合(海外の場合は1部リーグの実績をカウント)
が最も多い選手とした。また代表歴とJ1出場歴では代表を優先させる。代表は監督の志向に左右される部分はあるが、やはり選ばれて試合に出る価値というものを重視したいので。また一部リーグ縛りも、スペイン2部とパラグアイ1部はどっちがレベル高いのか、等の比較論はあるかと思うが、ここも割り切りで1部リーグでの実績に限定したい。
 高校、クラブユースのチームは数多ある中で、調査対象はプロ化以降(93年度〜)日本のU18年代の全国タイトルを獲ったチームのみ対象とする。即ち以下の大会の優勝チーム。
・高校選手権
・インターハイ
・Jユースカップ
・クラブユース選手権
高円宮杯(全日本ユース→プレミアチャンピオンシップ)
これでもかなりの数に上るので(苦笑)、高校、クラブともに地域で分けて書いていく。今日はまず高校の東北、関東甲信越地方を。なお、高校名の横のタイトル数はプロ化以降に限らず通算の実績を記載しており、試合実績は2014/10/21時点のもの。


【東北】
青森山田(総体1)

柴崎岳(1992/5/28)
 代表:4試合1ゴール
 J1:106試合8ゴール
※次点)橋本和(1986/9/14)
 J1:100試合5ゴール

全国大会の常連であり、過去何名かプロになった選手はいるものの、実績と言う意味ではプロ入りしたOBで最も若い世代である柴崎が代表歴、J1出場歴共に最高という結果に。この若さで名実共に青森山田の最高傑作と呼べる存在と言えるだろうか。なお、次点では柏のDF橋本(大学経由でプロ入り)が代表歴こそ無いものの、柏で堅実にキャリアを築いている。

盛岡商業(選手権1)

☆瀬田龍彦(1952/1/15)
 代表:25試合
 JSL :164試合
※次点)山本修斗(1985/6/1)
 J1:115試合4ゴール

調べたらプロ化以前からサッカー選手を輩出している学校で、70〜80年代に日立で活躍した瀬田が唯一の代表選手。プロ化以降では鹿島の山本がJ1で最高の実績を持つ。

関東甲信越
前橋育英(総体1)

山口素弘(1969/1/29)
代表:58試合4ゴール
 J1:362試合37ゴール
※次点)松田直樹(1977/3/14)
代表:40試合1ゴール
 J1:385試合17ゴール

数多くプロに入ったOBがいる中で、代表歴から最高は山口という結果に。次点の松田は代表歴は2位、J1出場歴では最多なのだが、ジーコとの不和が無ければ代表試合数も伸ばせたはずだけにこの選手のその後も含めて色々と思う所はある。現役世代では青木剛(代表:2試合、J1:353試合)や細貝(代表29試合、J1:98試合5ゴール、ブンデス1部:89試合3ゴール)が何処まで迫れるか。
 
■帝京(選手権6、総体3)

中田浩二(1979/7/9)
 代表:57試合2ゴール
 J1:266試合33ゴール
 仏 :9試合
 スイス :62試合3ゴール
※次点)本田泰人(1969/6/25)
代表:29試合1ゴール
 J1:328試合4ゴール
 JSL :72試合2ゴール

代表試合数という観点では中田浩二がベスト、そして次点は代表試合数2位の本田という結果に。本田は1部リーグ出場試合では最多。伝統高だけに有名なOBが多く、代表歴のある選手も多いのだが、10試合以上出た選手となると意外なほど少ない。他に田中達也(代表16試合3ゴール、J1:285試合59ゴール)が居る位。クラブキャリアでは木島、高橋など30代半ばでも下部リーグで長く続ける選手が多いのが目を引いたのだが、若い世代になるほど過去に比べて目立った実績を上げている選手が少なくなっているのは、チームの成績に比例していると言えるだろうか。

市立船橋(選手権5、総体8、高円宮杯1)

茶野隆行(1976/11/23)
代表 :7試合
 J1 :350試合10ゴール
※次点)西紀寛(1978/5/23)
代表 :5試合
 J1 :255試合36ゴール

以前も書いたが、ここの出身者はクラブに比して代表には縁が無い印象なのだが、今回調べてみて代表で最も試合に出たのが茶野の7試合という事実にはさすがに驚いた。J1試合数だけならこの他にも中村直志(341試合)、阿部翔平(254試合)、北嶋秀朗(230試合)、小川佳純(229試合)、増嶋(221試合)等がいるのだが、これだけの実績を残した高校出身者に代表戦に10試合以上出た選手がいないとは。
思うにここの選手は各能力を平均して備えるタイプが多いが、それがこの結果に繋がっているのかなと。ユース時代はこの手のタイプは年代別代表に重宝されるが、歳を重ねると各能力備えるのは前提で、それに+αして何か武器を持つタイプが選ばれる中でA代表には縁遠くなってしまう、という構図。
余談だが市船で長く監督をしていた布氏は現在協会で育成に関わっているが、この起用も↑の実績から鑑みるにどうなのか、という気はする。

流経大柏(選手権1、総体1、高円宮杯2)

田口泰士(1991/3/16)
代表:2試合
 J1:79試合3ゴール
※次点)大前元気(1989/12/10)
 J1:125試合37ゴール
 独 :7試合

ここ10年ほどで高校の全タイトルを制覇した新興勢力で、この10月についに田口が代表戦出場を果たし、記念すべき最初の出場者となった。(選出自体はこれ以前に田口や鳥栖の林が果たしている。)現時点でも全国有数の強豪だけに今後10年で新たな逸材が生まれる可能性は十分にある。
ちなみに調べたら柏の大谷もここの出身だったが、当時は柏ユース所属なのでここでは対象外。

習志野(選手権2、総体1)

玉田圭司(1980/4/11)
代表 :72試合16ゴール
 J1 :341試合96ゴール
※次点)廣山望(1977/5/6)
代表 :2試合
 J1 :155試合12ゴール
 パラグアイ:29試合3ゴール
ポルトガル:8試合
 仏   :7試合

ここは断トツで玉田。若い頃はサイドのドリブラーでFWでは無かったが、この代表歴とJ1通算100ゴール目前という実績。大久保もそうだが、点取り屋としての嗅覚はやはりある程度経験を積んだ20代後半にようやく身に着くと言う事か。次点は代表歴で廣山だが、他にも栗澤、本間などJ1で200試合以上の経験を持つ選手、あるいは福田健二の様に、世界中を渡り歩くタイプもいる。(同じく各国でプレーした廣山とは同期)。
元々現流経大柏の監督が居たところだけに指導者が変わってからはプロ選手はいないかと思っていたが、新潟の正GK守田とかそれなりに人材は輩出している。

■八千代(総体1)

羽生直剛(1979/12/22)
 代表:17試合
 J1:300試合29ゴール
※次点)鈴木規郎1984/2/14)
 J1 :171試合17ゴール

その他兵働(千葉)、米倉(G大阪)、山崎(磐田)などがいるが、実績では羽生が突き抜けてる。千葉もジェフ、レイソル市船、流経、習志野と強豪チームが揃う中で各校プロ選手を何人も輩出しているのはさすが。そう言えば学生時代のバイトの先輩が羽生と中学時代に対戦した事があったそうだが、当時はこの羽生と市船から国士舘大、浦和、佐川東京などでプレーした山根の2人は別格だったらしい。

桐蔭学園(総体1)

森岡隆三(1975/10/7)
 代表:38試合
 J1:285試合9ゴール
※次点)戸田和幸(1977/12/30)
 代表:20試合1ゴール
 J1:271試合4ゴール
英 :4試合
 蘭 :16試合
 韓 :8試合

 その他林健太郎(代表:2試合、J1:311試合)、小林慶行(310試合)、山田卓也(代表:4試合、J1:274試合)、米山篤志(代表:1試合、J1:244試合)など。後、現仙台監督の渡邊晋も実は桐蔭OBなのを知った。ここは今でも神奈川では強豪で、総体に優勝したのもここ数年の話なのだが、人材輩出と言う意味では今挙げたメンバーのいた90年代前半が黄金期だった。まぁJ開幕前後の時期で、今ほど神奈川や東京多摩地域のユースチームが整備されてなかった時代だから人材も集まり易かった、という面はあるだろうが当時の監督李国秀氏の指導と言うのはやはり優れていたのだろうと思う。

三浦学苑(総体1)

田中寛己(1991/5/25)
 J2:12試合

2012年に総体で初出場初優勝という快挙を達成した神奈川の新興勢力。ちなみに神奈川に長く居ながら自分がこの高校の名を知ったのは、サッカーではなく3年くらい前に日産スタジアム駅伝に出た時の事で、高校生の部で優勝したのでその名を知った。
話を戻し・・さすがにまだプロ選手はいないだろうと思ったらJ2カターレ富山に1名いた。1部リーグ実績ではないが、参考までに。

山梨学院大付属(選手権1)

白崎凌兵(1993/5/18)
 J1:8試合

2009年度に選手権優勝した高校。何人かプロ入りしている選手はいるが、皆J2、J3が主戦場で、この白崎も清水加入後出番に恵まれず、現在はJ2富山でプレー中。清水に入った頃は年代別代表にも入っていて期待されていたのだが、まだブレイクには至っていない。リオ五輪世代なので、今後の覚醒に期待したい。
余談だが、この選手は丁度Jリーグの開幕試合の直後に生まれたのだな。まさに生まれながらにプロサッカーがあった世代と言う訳か。

 次は東海以西の高校について書く予定だが、調べ出したら思いの外時間が掛かったので、何時になるかは不明。まぁ今月中には完結させたい。