さて今年も残すところ1週間を切った、ということは毎年恒例の当blog日本サッカー年間表彰。年末の慌ただしさと1年の疲れが押し寄せる中で、なかなか落ち着いて振り返ったり文章を書く時間が取れないが、やはりこれは外せない。例年同様にまずはMVP以外の各賞をば。
■年間ベストマッチ
※過去の受賞試合
2005年:バーレーン戦(○1-0/2005.6.3/ドイツW杯予選@マナマ)
2006年:サウジアラビア戦(○3-1/2006.11.15/アジアカップ予選@札幌)
2007年:豪州戦(△1-1(4PK2)/2007.7.21/アジアカップ@ハノイ)
2008年:カタール戦(○3-0/2008.11.19/南アW杯予選@ドーハ)
2009年:ベルギー戦(○4-0/2009.5.31/キリンカップ@東京)
2010年:デンマーク戦(○3-1/2010.6.24/南アW杯@ルステンブルク)
2011年:韓国戦(○3-0/2011.8.10/親善試合@札幌)
2012年:オマーン戦(○3-0/2012.6.3/ブラジルW杯予選@さいたま)
2013年:ベルギー戦(○3-2/2013.11.19/親善試合@ブリュッセル)
2014年:豪州戦(○2-1/2014.11.18/親善試合@大阪)
2015年:パレスチナ戦(○4-0/2015.1.14/アジアカップ@ニューキャッスル)
2016年:サウジアラビア戦(○2-1/2016.11.15/ロシアW杯最終予選@さいたま)
2017年:豪州戦(○2-0/2017.8.31/ロシアW杯最終予選@さいたま)
2018年:セネガル戦(△2-2/2018.6.24/ロシアW杯GL@エカテリンブルク)
1位:イラン戦(○3-0/2019.1.29/アジアカップ準決勝@アルアイン)
2位:ウルグアイ戦(△2-2/2019.6.20/コパ・アメリカGL@ポルトアレグレ)
3位:サウジアラビア戦(○1-0/2019.1.21/アジアカップ決勝T1回戦@シャルジャ)
今年のA代表は23戦15勝3分5敗。もはや遠い記憶だが1~2月にはアジアカップがあった。中でも準決勝イラン戦はそれまで低調な内容が続いていた中でイランに結果、内容共に完勝した試合としてこの大会の日本のベストマッチ。その後の試合も考慮しても試合の格、重要性を考慮すれば今年のベストマッチに相応しい。イランに公式戦でここまで完勝するのはそれこそプロ化以降初めてではないかと思う。南野が転けたのをイランDF陣がセルフジャッジで足を止め、その隙を突いてクロス→大迫ヘッドでの先制点はこの試合のハイライト。
2位はコパ・アメリカでウルグアイに引き分けた試合。去年はホームで勝ったが今年は南米の地で若手主体のメンバーでカバーニ、スアレス他主力揃い踏みの相手に引き分けたのは大きい。ウルグアイというと堅守で有名だが、日本との試合は去年の4-3、古くは96年に若きレコバが躍動した長居で5-3など何故か打ち合いになることが多い。
今年はW杯予選も始まったが正直勝って当然という相手に勝利と一定の得点数という最低限の義務は果たしただけという印象が強い。Jリーグ終了後の寄せ集めメンバーで戦ったE1選手権も内容はパッとしなかった。と言う中で消去法となるが、アジアカップの決勝トーナメント1回戦でサウジに勝った試合が3位かな。内容は前述の通りそれほどでも無かったが、トーナメント緒戦でいきなりサウジと当たる中でセットプレー1発(CKから冨安のヘッド)で勝ち切ったのはそれはそれで価値は高い。
■年間ワーストマッチ
※過去の「受賞」試合
2008年:バーレーン戦(●0-1/2008.3.26/南アフリカW杯予選@マナマ)
2009年:バーレーン戦(●0-1/2009.1.28/アジアカップ予選@マナマ)
2010年:韓国戦(●0-2/2010.5.24/親善試合@さいたま)
2011年:北朝鮮戦(●0-1/2011.11.15/南アW杯予選@平壌)
2012年:ウズベキスタン戦(●0-1/2012.2.29/ブラジルW杯予選@豊田)
2013年:ブルガリア戦(●0-2/2013.05.30/親善試合@豊田)
2014年:ブラジル戦(●0-4/2014.10.14/親善試合@シンガポール)
2015年:北朝鮮戦(●1-2/2015.8.2/東アジアカップ@武漢)
2016年:UAE戦(●1-2/2016.9.2/ロシアW杯最終予選@さいたま)
2017年:韓国戦(●1-4/2017.12.16/EAFF E-1選手権@調布)
2018年:ウクライナ戦(●1-2/2018.3.27/親善試合@リエージュ)
1位:カタール戦(●1-3/2019.2.1/アジアカップ決勝@アブダビ)
今年の5敗は他に親善試合コロンビア戦、ベネズエラ戦、コパ・アメリカチリ戦、E1選手権韓国戦。内容はベネズエラ戦、韓国戦はまぁ酷かったし、スコアだけ見ればチリ戦(0-4)が一番悪かったが、一応これらの試合は主力不在だったりU22世代主体だったりした。その中で主力が揃い、難敵サウジ、イランも倒して過去4戦全勝のアジアカップ決勝に臨みながらカタールに完敗した試合をワーストにしたい。E1韓国戦もそうだがポジショナルプレーが浸透した(しつつある)チームに結果、内容共に完敗するというのは今後の最終予選を考えると不穏な予感がする。まだこの戦い方はそこまでアジアに広がっている訳では無いが、カタールの成功例を見て特に中東諸国がそれに追随したらなかなか厄介なことになる。
■年間ベストゴール
※過去の受賞ゴール
2005年:中村(俊)(ブラジル戦(コンフェデ杯)同点ミドル)
2006年:玉田(ブラジル戦(ドイツW杯)先制点)
2007年:山瀬(カメルーン戦(親善試合)決勝ミドル)
2008年:玉田(カタール戦(南アW杯予選)ミドル)
2009年:中村(俊)(バーレーン戦(南アW杯予選)FK)
2010年:本田(デンマーク戦(南アW杯GL)FK)
2011年:李 (豪州戦(アジアカップ決勝)決勝ゴール)
2012年:本田(オマーン戦(ブラジルW杯予選)先制ゴール)
2013年:本田(オランダ戦(親善試合))
2014年:岡崎(豪州戦(親善試合)バックヒールゴール)
2015年:柴崎(UAE戦(アジアカップ準々決勝)同点ミドル)
2016年:山口(イラク戦(ロシアW杯予選)決勝ミドル)
2017年:井手口(豪州戦(ロシアW杯予選)2点目のミドル)
2018年:原口(ベルギー戦先制点)
1位:大迫(イラン戦先制点)
2位:三好(ウルグアイ戦1点目)
3位:塩谷(ウズベキスタン戦追加点)
4位:南野(タジキスタン戦2点目)
5位:大迫(トルクメニスタン戦同点弾)
今年は23戦41ゴール。最多得点者は南野(7点)で、大迫(5点)、中島、原口、永井、小川(3点)と続く。
やはり試合の価値や相手の強さ、その上でゴールの価値(先制、逆転等)が大きいほど評価は高くなるが、1位は上でも述べたアジアカップ準決勝イラン戦の先制点を。ゴール自体はクロス→ヘッドと普通だが、相手がセルフジャッジして足を止める中で転けてもすぐ立ち上がった南野のプレーと正確なクロス、GKの前に体を入れた大迫の強かさは素晴らしかった。
2位はウルグアイ相手に右サイドから一人で持ち込んで決めた三好のゴール。この試合では更にもう1点取ったが、この選手はゴール数は多くない中で時々思い出したかのようにゴラッソを決める。3位以下は正直印象に残ってるのは無く動画を見返して決めたのだが、アジアカップでの塩谷のミドルが3位、W杯予選タジキスタン戦で酒井のグラウンダーのクロスを南野がバックヒールで合わせたのが4位、5位はアジアカップ緒戦での大迫の同点ゴール。エリア内で周りに相手が数多くいる中でボールを受けて切り返してシュートを撃つまでの技術の正確さと速さが印象的だった。
■年間最優秀若手選手(U-20)
※対象は1999/1/1生まれ以降の選手
※過去の受賞者
2006年:本田(2位:西川)
2007年:安田(2位:香川、3位:内田)
2008年:金崎(2位:内田、3位:香川)
2009年:米本(2位:香川、3位:権田)
2010年:宇佐美(2位:酒井(高)、3位:小野)
2011年:久保(2位:指宿、3位:扇原)
2012年:柴崎(2位:石毛、3位:小野)
2013年:南野(2位:久保、3位:大島)
2014年:植田(2位:岩波、3位:室屋)
2015年:南野(2位:関根、3位:中村)
2016年:井手口(2位:鈴木(優)、3位:中山)
2017年:堂安(2位:中山、3位:前田)
2018年:堂安(2位:冨安、3位:杉岡)
1位:久保(FC東京→R・マドリー→マジョルカ)
2位:大迫(広島)
3位:中村(トゥエンテ)
今年は久保だよなぁ。今年の夏までは首位を走るFC東京で攻撃の柱としてリーグ4ゴール、その後はレンタル先のマジョルカで出場機会を得て1ゴール。因みにこの賞は受賞回数に制限は無いので2001年生まれのこの選手は2021年迄賞を独占する可能性もある(笑)
2位以下は迷ったが、まず大迫を。正直プレー自体は止めて欲しいシュートが入ったりセットプレーの守備も危なっかしい場面があるのだが、この若さで年間を通してJ1レギュラーGKを張ったのはやはり貴重な存在なので。
最近は若い選手がJ1で試合に出たり海外移籍することも多いが、今回の上位2人以外は意外と年間を通して試合に出たU20世代は少ない。中村敬斗、菅原由勢は現在オランダでレギュラー、準レギュラークラス、安部裕葵もバルサBで点を取り始めてるが、今年の前半は日本でゴール数が少なかったりカップ戦メンバーだったりで。かといって国内組の橋岡(浦和)、齋藤(湘南)、鈴木(湘南)、松岡(鳥栖)らもそこまで試合に出ていなかったり、チームの不振と共にパフォーマンス自体際立っていた訳でも無かったりして決め手に欠ける。(生観戦したJ1参入戦での鈴木は良い動きだったが。)ここはガンバでカップ戦で6点、トゥエンテでは4点取ってる中村かな。19歳でプロで年間10点取ってるのはやはり凄い事。
その他今年は斉藤光毅(横浜FC)、山本理仁(東京V)などJ2で17~18歳でレギュラー、準レギュラークラスになってる選手が目立った。2000年以降に生まれ、日韓W杯も知らないであろう世代。19~20歳で欧州に行く選手が増えた影響で更に若い世代にチャンスが巡ってくるという事情もあるだろうが、久保世代とでも言うか、この世代はまた少しレベルが違っている感もある。
■最優秀監督
※過去の受賞者
2009年:手倉森(2位:城福、3位:小林)
2010年:岡田(2位:小林、3位:関塚)
2011年:佐々木(2位:手倉森、3位:吉武)
2012年:森保(2位:手倉森、3位:吉武)
2013年:森保(2位:吉武、3位:小林、4位:高木、5位:風間)
2014年:長谷川(2位:城福、3位:反町、4位:石崎、5位:柱谷)
2015年:森保(2位:佐々木、3位:井原、4位:長谷川、5位:石井)
2016年:石井(2位:渋谷、3位:風間、4位:小林、5位:森山)
2017年:鬼木(2位:高木、3位:名波、4位:下平、5位:渡邊)
2018年:大岩(2位:森保、3位:鬼木、4位:相馬、5位:片野坂)
1位:片野坂(大分)
2位:大岩(鹿島)
3位:渡邉(仙台)
4位:下平(横浜FC)
5位:木山(山形)
成績で選べば長谷川(FC東京)、鬼木(川崎)、大岩(鹿島)の各氏がまず入るのだろうがどうも決め手に欠ける。長谷川氏はリーグで最後まで優勝争いしたものの久保、ディエゴ依存の“次の手”が無く最後は失速してしまったし、鬼木氏はスーパ杯とルヴァン杯を制したとは言え分厚い戦力を上手く生かせずリーグ戦では勝ちきれない試合が多かった。大岩氏も天皇杯を獲る可能性はあるがそれ以外はタイトルを逃している。ただ鹿島の場合は夏に鈴木、安西、安部ら主力を抜かれながらリーグ3位に踏み止まり、タイトル獲得の可能性を残したのはさすがだとは思う。
その中で昇格して8位に入った片野坂氏がベストかな。分析に長けて相手の強みを消すのが得意な日本人監督は数多いが、この人は最終ラインからどのように組み立てて点を獲るかのビジョン、アイデアもあるのが違う。これはミシャの下でのコーチ経験が大きいのではないかと思う。来季も大分と発表されたが、いずれはより大きなクラブ、代表で見てみたい。
全体的には日本人監督の停滞を感じさせる年だった。もしこの表彰に国籍縛りを無くせば、片野坂氏以外はポステコグルー、ロティーナ、フィンク、ミシャ、ネルシーニョ、R・ロドリゲスでランキングは埋まる。イニエスタを始めとする選手だけで無く、かつてのベンゲル、オシムのように指導者でも“大物”がもっと来て日本に無い考え、概念を伝えて欲しい。その意味でポステコグルーがリーグ優勝したのは大きかったと思う。最近の監督は単体ではなく、アシスタントやGK、フィジカル、アナリストといった各専門家をまとめたユニットとして活動するパターンが増えつつあるが、そういった各コーチからも得るものは大きいはず。他に神戸のフィンクにも期待しているし(このクラブの場合、監督が長続きする可能性は低い事情はあるが)、徳島のR・ロドリゲスは何故J1クラブが狙わないのだろうかと思う。
と言う中での日本人指導者表彰なのだが、仙台の渡邉氏は成績の停滞を理由に退任となってしまったが、毎年主力が抜けたり補強もままならない中で最終節前にJ1残留を決めていることの価値を評価したい。この人は桐蔭出身だけど、1990年前後にここを卒業した元選手(森岡、戸田など)は俯瞰して見ることが上手いというかサッカーを理詰めで考える人が多い印象がある。今の日本の監督の主な“産地”は広島系統か鹿島系統だが、それとは違うアプローチでの指導者集団として期待してるんだけどな。是非またJ1で指揮して欲しい。
4位、5位はJ2から。横浜FCを自動昇格させた下平氏、最後はJ2で3位の大宮高木氏と迷ったがその高木氏を昇格POで破り、戦力を考えたら6位も上出来すぎる木山氏を評価して。
メインの最優秀選手は明日発表。