カタールW杯日本代表について(雑感)

 クロアチア戦から数日経ったので振り返ってみる。

  • W杯での戦い

 このチームは基本的にロシア大会以来の大迫をトップに置いた4-2-3-1で戦い、最終予選途中で中盤に遠藤、守田、田中碧を置いて右サイド伊東を活かした4-3-3、そして予選後はまた4-2-3-1だったり最後は3バックも試しつつ本大会に入ったが、最終予選での変更は別として、予選後は敢えて色々試してた感はあるんだよな。それは4年間ずっと同じ戦い方でW杯では相手に研究し尽くされたザック時代の反省や最後に戦術変更して結果を出した南ア大会を踏まえてのものだったかもしれない。お陰で前半押されまくって先制され、何点取られるのか思いきや後半反撃して逆転したり、試合中に最終ラインの枚数を変更したりと、過去の日本のW杯にない試合を見せてくれた。何より監督がそういった選択肢を持てるだけの選手が揃ったというのが大きいんだろうな。DFでも中央とサイド、アタッカーでも中央、サイドどこでも苦にしない選手が特に東京世代以降は増えた。三笘、伊東も単にウイングというだけでなく3バックのサイドハーフという守備面の負担も大きいポジションこなせてたし。

  • 監督

 6月の試合でも書いたが、予選後からコメント1つ取ってもどうも吹っ切れた感があって、負傷者や試合展開にも動じなくなったように思う。スペイン戦の前半だったか、リードされ圧倒的にボール支配されている中で隣の横内コーチと少し笑みを浮かべつつ会話していたのが印象深い。本人も言っている様にどちらかと言えばモチベーター型で選手、スタッフのマネジメントを含めた総合力で勝負する人だと思うが、W杯で勝つために相手を研究し、自チームの戦力を踏まえて独自の解を見出した訳で、その采配に批判があるとしてもまずそのことへの敬意が前提だと思う。
 留任か退任かは分からないが、もし留任するなら次はスタッフ含めた時代への継承がテーマになってくるのかなと。自身が前回大会コーチとして参加したように、若い世代のスタッフを加えるとか。プロ化以降4年以上在任した代表監督はいないので継続して欲しい反面、あまりに張り詰めた4年を過ごしたので一度外に出て休息期間(インプット期間)も取るべきではという思いもある。

  • 誤算

 一方で誤算があったとすれば中山の負傷、鎌田、南野の調子がいまいちだった事か。まぁ中山に限らずこの日程で負傷離脱者がゼロってことはないだろうと覚悟はしていたし、同じ中盤出身の長身左SBとして伊藤を6月から試せてはいたが連携面で間に合わなかった。この選手は東京五輪世代だが呼ばれていたのは五輪代表初期の頃で、他の同世代のW杯メンバーとプレーした経験が少ない。それがコスタリカ戦で出てしまった。
 攻撃陣は起用振りからして鎌田にかなり期待してたのが覗えるけど、いつものプレーリズムだったのはクロアチア戦ぐらいで不完全燃焼だった。思うに独特のキープ力やプレーリズムが今回の日本のそれと合わなかったのかもしれない。南野は9月の親善試合時点で鎌田にポジションを奪われていたように感じたが、色々な点で香川に似てきている。共通点を挙げると

セレッソ育ち(※香川はアカデミー出身ではないが高校途中でプロ契約)
・ドイツ語圏のクラブからプレミアのメガクラブへ
・そこではサブとして一定の結果を残した後、国外移籍
・代表で途中から10番着用
・最初のW杯で不完全燃焼

香川のブラジルW杯以降を思えば、今がキャリアの分岐点ではないかと思うのでモナコで頑張って欲しいところ。

  • 今後

 今回の日本の結果を踏まえて今後発掘、強化を感じたポジションとしてはGK、中盤、CF。GKは権田は素晴らしかったが、より若く、サイズがあり、セーブ出来て、キック精度も高い選手の台頭が望まれる。98年フランス大会から2010年南ア(の直前)までを川口、楢﨑の時代とすれば、南アからカタールまでは川島と権田の時代で、丁度同じ12年と1つの区切りを迎えているように思う。権田やシュミットは次回もまだ年齢的にやれると思うがやパリ世代のGK陣(小久保鈴木彩など)の台頭に期待。
 中盤は、遠藤、守田、田中碧に続く「守れて繋げる」MFが実はあまりいないという意味で。柴崎は今回出番が無かったように少し違う役割。今回選外だった旗手、川辺も少し攻撃に寄っているというか、上記のタイプではないんだな。ここはマリノス勢の岩田藤田の台頭に期待している。
 CFは今回に限らず日本サッカー界がずっと探しているポジションでもあるが、殊に近年は相手ゴール前での時間、空間が減っている中で大きく(相手DFにも当たり負けず)、ボールを収めて、足でも頭でも点を決めるタイプが世界的に見直されている感もあり。レヴァンドフスキ、ハーランド、リシャルリソン、ジルー、ケイン等。全てとは言わないが、せめて大迫並にボールが収まる若いCFがいたら大分違うのだが。小川が来季J1でどこまでやれるか、後田川って今どうしてるんだろ。まぁ2026年メンバー予想は近々また実施する予定。

  • 次のチーム

 監督が留任にせよ替わるにせよ来年3月には次の試合があり、アジアカップもある。23年6~7月予定が中国からカタール開催に変わって同国は24年1月開催に変更希望しているようだが、それなら1年を準備に使える。年齢やこれまでの実績からいって恐らくこのW杯で川島、麻也、長友は代表引退になりそうだし、もしかしたら酒井もそうかもしれない。新たに加わるのはパリ世代(2001年生まれ~)はU22の活動、五輪予選と重なる可能性もあり、新顔は東京世代(1997~2000年生まれ)中心になりそう。特に2000年世代、中村(LASK)菅原(AZ)瀬古(グラスホッパー小林(セルティック辺り。彼らはU15~17代表で久保と共にプレーした故か早くから海外志向が強く、同世代で競うようにキャリアを築いている印象があるので。

  • 終わりに

 この大会で得た「W杯でドイツ、スペインに勝った」という事実は今後長きに渡って日本サッカーの財産になるだろう。これまで親善試合でアルゼンチン、フランス(アウェイ)、ウルグアイに勝ち、ブラジル、イタリア、イングランド、オランダと引き分けたことはあったが、W杯で逆転勝ちしたのはその数倍も価値がある。今回はW杯経験者が6名と、その少なさを大会前には指摘されていたが、25歳以下の若い選手がこの成果を経験したのも大きい。一方で過去の大会で有効に機能していたトレーニングパートナーが、今回予定されていたU19代表にコロナ陽性者が出て取り止めになったのは痛かったな。共にトレーニングして試合をスタンドから観る経験は何物にも代えがたかっただろうから。
 個人的にもW杯の勝ち負けは他の試合と比較にならない重みがあって、負けた後は(試合が日本時間の夜中の場合が多いこともあり寝不足の要素もあるとは思うが)翌日一日中どんよりとした重い気分で過ごす羽目になるが、逆に勝った後は歓喜が爆発する。加えて今回は某SNSで鍵垢を解除してから初のW杯ということもあってこれまでとはまた違った楽しみ方が出来ているようにも思う。勢いで10数年ぶりに代表ユニも買ったし笑。ユニと言えば、チームの前評判と同じくデザインが低評価の時ほど好結果で、シンプルで良いなと思う時ほど結果が出なかったりしていたが、今回は日韓大会以来のユニデザインと結果が両立した珍しい大会。また現地に行った友人やSNSで繋がっている人達も羨ましかった。W杯の度に次は現地でと口では言いつつ一度も実現出来ていないのだが、次の北米大会こそはとここで書いておく。日本国外で代表戦を観るのも目標の1つなので、アジアカップも行ってみたかったりするのだが。


Embed from Getty Images