アメリカ代表について

先日Xを見ていてこんなポストがあった。


コパ・アメリカアメリカ代表選手の出身地をマッピングしたもの。これを見ると明らかに東海岸、NY周辺に集中しているし、サッカーとの親和性の高いヒスパニック系の少なさなど一見して推測される要素はあるが、もう少し深掘りすると更に見えてきそうだったので調べてみる事にした。元々XではW杯、アジアカップがあると帰化戦略だったり国外の移民の子弟を招集する国について調べてたので、その延長線上という位置付け。
 そして以下がコパアメリカでのアメリカ代表26名。

コパアメリカ2024アメリカ代表

 備考欄など記述は主にwikipediaを参考に記載している。ここから推測される事項について以下述べていきたい。

  • 出身地

 冒頭で述べた様に、やはりニューヨーク、ニュージャージーペンシルバニアマサチューセッツといった北東部諸州(画像水色)の出身が多く、実に11名。そして国外出身者も5名いて、この2つで合わせて16名を占める。また国外生まれには父も代表選手で、その父がプレーしていたイングランドで生まれたジョヴァンニ・レイナの様な例もあるが、それ以外の4名中3名に出生国での世代別代表歴がある。やはりその国で世代別代表にピックアップされるくらいの能力を持つ選手をA代表に勧誘しているのかなと。

  • 両親の競技歴

 調べていて思ったのは、両親もサッカー選手だった人が一定数いる事。上記リストの「両親競技歴」列に○の付いている選手が該当し、6名。また△印は両親が別の競技をプレーしていたり選手では無く指導者だった人だが、それと合わせると9名と一定の割合を占める。やはり親がプレーヤーだったことでスポーツが身近にあった影響は大きいのだろう。

  • サッカーが盛んな国にルーツ

 ルーツという観点で見ると、さすが人種の坩堝と言われる国だけあって様々な背景を持った選手がいるが、欧州、南米、アフリカなどサッカーが盛んな国が多い。また先祖代々というよりはアメリカに渡って半世紀未満の移民2世、3世が多い。サッカーが身近にある国で育った人がアメリカに移民し、子供もプレーするようになったという姿が見えてくる。

  • ミドルクラス・アッパークラス

 これは全員調べた訳では無いのだが、wikipediaの記述に従うとそれなりな家庭出身の選手が多い。例えばMFデ・ラ・トーレはスペイン系だが両親が研究機関に勤める科学者という家庭だし、ユベントスでプレーするマッケニーの父は米空軍将校。前述のレイナも父が代表選手でプレミアでプレーするほどだったから経済的には不自由しなかったと思うし、父があのジョージ・ウェアであるFWティモシー・ウェアも同様。逆に言うと、ブラジルの選手やフランスの移民出身選手がそうであるような貧困層出身でサッカーでのし上がって来たという人があくまでwikipedia記述を参照した限りでは確認できなかった。

  • 上記踏まえた分析

 ここまでの観点を踏まえると、サッカーのアメリカ代表選手は
・北東部出身
・両親いずれかにサッカー経験有り
・欧州、中南米、アフリカなどサッカーが盛んな国で出生もしくはルーツがある
中流階級以上
上記の条件を最低1つは備えた選手で占められる。この条件に全く当てはまらないのは(あくまでwiki情報なのは前提として)DFクリス・リチャーズ、ティム・リームの2人だけ。
 これを見ると、アメリカにおけるサッカーはまさに上記条件に当てはまる層から広まっているんだろうなと思う。より正確に言えば代表選手の生年を考えると90~00年代の反映。つまりNYを中心とする北東部出身だったり、両親いずれかがサッカー経験があったり中南米や欧州、アフリカにルーツがあるなどサッカーが身近な環境にあったり、スポーツに打ち込む経済的余裕のある中流以上の家庭に生まれた選手。
 一方でアメリカにおけるサッカーというとヒスパニックが思い起こされ、実際中南米の代表チームがアメリカで試合するとホーム同然の雰囲気になるが、この層はあまり取り込めてないんだろうなと。今回のメンバーで明らかにヒスパニックと分かるのは父がスペイン出身の前述のMFデ・ラ・トーレ、両親がメキシコ出身のFWリカルド・ペピくらい(厳密に言えば祖父がアルゼンチンから移民したMFレイナも該当)。アメリカにおけるヒスパニック人口は6000万人を越えるそうだが、この層が今はともかくまだ代表選手を輩出するほどには継続して定着してないんだろうな。

  • 結び

 近年伝わるMLSの隆盛からするとやや意外な結果になった。今のアメリカ代表はあくまでアメリカ社会の一部を代表しているというのがより実態に近いのではないかと思う。ただ先ほども述べた様に代表選手の分析は彼らが生まれた20~30年前の状況分析なので、「今」の状況はその限りでは無い。今の隆盛からすると10~20年後にはまた今回の分析とは異なる背景を持った選手が出てくるかもしれない。いや「隆盛」と言っている状況も深掘りしている訳ではないので、分析すると意外な事実が分かるかもしれないが。
 まぁそれはともかく、アメリカ代表の現在地が少し理解出来た。正直今のFIFAランク11位って過大評価過ぎないかと思ったりもするのだが笑。