W杯直前で色々調査
日本時間12日早朝からいよいよ北中米W杯が始まる訳だが、こういったメジャートーナメントが開催される度に、個人に気になるトピックについて日本に限らず様々な国を調べて来たが、今回はSNSや各サイトでそういった分析の類が充実していてそれを見るだけで面白い。
例えば↓など。出場国別の国外で出生した選手一覧。
Los 289 jugadores que no representarán a su país de nacimiento en el Mundial pic.twitter.com/mkeTIrL0n9
— Jaime F. Macias (@Jaimefmacias) 2026年6月2日
こういったルーツに関する調査は自分もこれまでに調べてきたが、今回は少し角度を変えて、初出場国がどの様に強化され予選突破に至ったかを概観してみる。勿論、強化は初出場国に限らず久々に出場する国、日本の様にここ数年で一気にランキングを上げている国の例も見る必要はあるが、ひとまず、「最初」の壁を打ち破った国を見れば、強化のパターンの様なものが見えてくるのではないかと。
今回の初出場国はカーボベルデ、キュラソー、ヨルダン、ウズベキスタンの4ヶ国/地域なので順番に。
カーボベルデ
カーボベルデは元々ポルトガルの植民地で1975年に独立。FIFA加盟は1986年、アフリカ以外のチームと初めて対戦したのは2002年と比較的歴史は浅い。
W杯予選に参加したのも2002年日韓大会からだが、次の2006年ドイツ大会からは最終予選に進出して3勝するなどW杯には遠いもののアフリカの第3集団くらいの位置付けにはなっていた。2010年代以降は親善試合で旧宗主国ポルトガルとアウェイで引分け(2010年)、その5年後には初勝利を上げ、アフリカ選手権ではベスト8に入るなど(2013年)、徐々に力を付けていた中でついにW杯出場。
現チームは国外出身が過半数を占めるが、関係の深いポルトガル生まれは3人に対して、フランスも3人、オランダは6人もいる。ただ本国出身でもユース時代にポルトガルのクラブにスカウトされてプロキャリアを始める選手が多く、サッカー選手としてはポルトガル育ちをベースにオランダ、フランス育ちもミックスした構成。余談だが、ポルトガルリーグは日本人選手にとってステップアップしにくいリーグだが、このリーグ自体、外国人はブラジルやこのカーボベルデ、アンゴラなど関係の深い国々の出身者が多く、そうした国の選手達の発掘、育成に特化しているからではと思ったりもする。
キュラソー
今回のW杯に出場する国/地域で最も人口が少ないのはこの国。人口約15万。元々周辺の島々と共にオランダ領アンティル諸島代表として活動していたが、2010年にキュラソーとして独立し、代表も2011年から活動とかなり新しい代表チーム(ただし過去のオランダ領アンティル時代の記録はキュラソーが継承)。W杯はCONCACAFの最終予選前に敗退する事が多かったが、今予選は10戦7勝3分と無敗、ジャマイカ、トリニダード・トバゴというW杯出場歴を持ち、この地域ではキュラソーより格上の存在だった国を破って出場。
と言う中でやはりW杯メンバー26名中25名がオランダ生まれという構成が目を引く。オランダ出身選手の多さ自体は以前からの傾向で、2019年のCONCACAFゴールドカップでは23名中12名が該当。しかし裏を返せば11名はキュラソー出身でもあった訳で、当時から更にオランダ化を進めた結果が今。
ただそれ以外にもアドフォカートというオランダ代表監督経験も有る大物が就いたのも大きかったのではと思う。オランダで生まれ育ち、サッカーもオランダサッカーが身に付いた選手達を、オランダの大物監督が指揮する図式で、サッカー的にブレが無かったのではないかと。
帰化戦略、欧州育ちの自国ルーツ選手を取り込む国は数多いが、多国籍はそれ故に言語などサッカー以前の共通基盤の不足、様々な国で育ってきた故にサッカースタイルの違いも出てくる訳で、キュラソーはある意味そうした多国籍のリスクを排除しつつ海外出身選手を取り込む事に成功したパターン。
余談だが、キュラソーの成功を一番意識しているのはインドネシアなのではと。オランダ以外の欧州出身者もいるがあれくらいやればW杯行けるんだと思ってそうだなと笑。ただインドネシアはTDはオランダ人、監督はイングランド人だったりでキュラソーほどの振り切りは無い。またアジアは出場枠広がったとは言え、西アジアを中心に層は厚いし、今回のキュラソーは予選にアメリカ、メキシコ、カナダがいなかったという面は考慮する必要がある。
ヨルダン
ヨルダンは長年西アジアの中堅国、第2集団の一つというイメージだったが、今回ついに予選突破。国外出身もいるが3名に止まり、その内欧州育ちは1人、他の西アジア諸国の様に帰化戦略や欧州への移民2世3世を積極的に招集している訳でも無い。長年競争の激しい西アジア内で揉まれてきて一定の力はあった中で、そこに優秀な監督と選手が偶々揃い、一気に予選突破まで行った、と言う印象。欧州においてEUROの出場枠拡大でジョージアや北マケドニア、アルバニア、アイスランドといった国がメジャー大会初出場を果たした、そのアジア版というか。
元々今のチームはモロッコ出身のフセイン・アムタ前監督がアジアカップで準優勝、それを引き継いだのは同じくモロッコ人のセラミ監督(現役時代は代表で1998フランス大会に出場)で、北アフリカや西アジアのクラブでしっかり結果を残してきた人を監督に任命してきたのが功を奏したか。その意味でも堅実な強化と言う印象。
ウズベキスタン
ウズベキスタンは元々ソ連崩壊でAFCに加盟し、国際大会デビューの1994広島アジア大会でいきなり金メダルを獲ったが、その後はW杯最終予選の常連ながら勝負弱さで常にあと一歩という状態が続いてきた。しかし近年ユース世代がアジアで結果を残すようになり、それがついにA代表に結実して今回3次予選ストレートインでの予選突破。
ユース年代の実績を見ても2010年以降、特に2020年代は各世代で結果を残している。
U17アジアカップ:2012、2025優勝、2010準優勝
U20アジアカップ:2023優勝
U23アジアカップ:2018優勝、2022、2024準優勝
ユース世代から着実に積み上げてきた点において日本に似たものを感じる。そうした若い世代の中からフサノフ(マンチェスター・C)などメガクラブに移籍する選手も現れている辺りも。日本もここ数年U代表がかなりウズベキスタンに遠征したり、また日本に招いたりしているが、協会としてもかなり同国をベンチマークしているのだろう。ベースが築かれた上で結果を残し始めているだけに、今後しばらくアジアにおいて日本の強敵の一つとして存在感を示すと思われるが、国内リーグ、クラブがアジアの他地域と比較して競争力が高くない点は弱点かもしれない。
まとめ
ここまで見た4ヶ国の強化を類型するとこんな感じか。
①ユース世代からの継続強化:ウズベキスタン
②元々一定の地力はある中堅国に優秀な監督、選手が上手く噛み合った:ヨルダン
③自国にルーツのある欧州育ちを積極招集
③-1:欧州の特定国出身者に完全振り切り:キュラソー
③-2:地元出身との折衷+育成を欧州に依存:カーボベルデ
最も時間と金が掛かるのは①だが、基盤を構築、運用が回れば日本然りその効果も長く続く。②はある意味運任せの要素もあるし、元々一定の力が無いとそこに辿り着けないとも言える。これから初出場を狙う国が狙うのはやはり③になるんだろうな。③-2パターンはフランス出身を数多く呼んでいるアフリカ諸国がその先例になるが、ルーツのある選手を招集するという事はそもそもの海外移民の多さが前提ではあるが。
まぁ大会が始まったら気になった国についてまた色々調べ始めると思うが、そんな感じで約1ヶ月楽しむ事にする。