聖夜の一冊

 KAGEROU/齋藤智裕
 サイズの割に文字数が少ないのと行間が広いのとで、2時間も掛からず読み終えてしまった。こういったジャンルを普段読まない故もあるが、読後に残ったのは何とも言い難い空虚な思いで、本作の内容について思いを巡らすよりも、この湧き起こる感情を正確に捉える方が重要な事の様に感じられた。


 特に前半部で顕著なのだが、一つの描写に対して比喩が冗長で、比喩の背後にある著者の自意識が暑苦しくて堪らなかった。日常の何気ない事象に様々な比喩や形容詞を施してあたかも特別な物事であるかのように装う―――“透徹”とは真逆に有る文体と言えば分かりやすいだろうか。友人はケータイ小説と評していて、自分はそれに接した事はないので何とも言えないが、紙媒体より電子媒体、それこそblogでも始めればそこそこ面白い文章に見える気はする。