終盤戦の戦い方

 さて今回もまたマリノスについて分析をば。前回(若手の育成)もそうだったが、これは普段の観戦で何となく感じている事が実際にそうなのか根拠を探る目的で書いている。今回は終盤戦の戦いについて。
 去年、今年が特にそうだが、ここ数年マリノスは終盤に一気に勢いを落とす事が多く、一方で優勝チームはラストスパートを掛けて勝点を伸ばす印象があった。で、05年以降の優勝チームとマリノスのラスト10節の成績が↓。Jの公式ページには資料が豊富に転がっていて意外と簡単に作れた。
シーズンによってはACL等の影響で節と試合の順番が一致しない場合も有り、下図は『最後の10試合を試合開催順に並べたもの』と解釈して欲しい。また「備考」項目には優勝チームのトピックとマリノスの監督を記載し、図中の☆は優勝を決めた試合を指す。

 色々見えてくるが年代順に追ってみる。まず05年は過去7年で唯一マリノスが優勝チームのラスト10戦の勝点を上回ったシーズンだが、まぁよくこれでガンバは優勝出来たなと(苦笑)確か最終節にセレッソが今野のゴールで勝点落として逆転したんだっけか。ただ、この年は04年迄の前後期制から移行した最初のシーズンで、リーグ全体に年間を通して戦う為のノウハウ(コンディション調整等)がまだ蓄積されてなかったのかと思う。何処も四苦八苦しながら何とか最終節まで戦い抜いて、結果一番上にいたのがガンバだった、そんな印象。前後期制は04年のマリノスが典型的だが、前後期どちらかで勝点を積み上げて優勝し、もう片方はそこそこの戦いで、後はH&AのCSに全てを掛ければ年間王者になれる。(前後期共に制した02磐田、03マリノスはそれだけ強かったと言えるが。)1シーズン制だと必ずどこかで動きが落ちてなかなか思い通りに戦えない時期があり、そこを如何に凌ぐか、という話になってくるが、05年の段階では未だ何処も対応し切れて無かったのだろう。
 だが06年以降は様相が変わり、優勝した所は何処も終盤で順調に勝点を伸ばしている。特に07年鹿島と11年柏のラストスパートが凄い。07年は首位だった浦和が最終節に横浜FC相手にやらかして、11年も名古屋、ガンバと三つ巴の優勝争い、と僅差の決着ではあったが、やはり1シーズン制が定着した今は基本的に優勝チームは、先行逃げ切り型で無く、終盤追い込み型なんだな。強いて言えば10年の名古屋は終始リードを保ったまま余裕の優勝という印象だが(最終節以前に決まったのはこの7年でこの1度だけ。)、それでも終盤に失速した訳では無いし、また09年の鹿島も25〜28節で4連敗しているが、それでも引分けを挟んで残り5戦を全勝で終えている。

 で、マリノスだが過去7年でラスト10戦の最高成績だった08年は、13〜18節に6連敗するなど中盤戦で失速して監督が解任され、木村浩吉氏が途中就任して立て直した。この終盤戦はよくここで言及してる狩野が最も輝いていた時期であり、最終節の埼スタ浦和戦は6−1で圧勝
 次の09年も最後の10戦をそこそこの結果で終えており、この監督はシーズンを通した戦い方という意味では過去7年で最も優れていたかなと。まぁ確かトップチームの監督は初めてで、年間を通して勝ったり負けたり引分けたりの同じ様な展開で、最終順位は中位ではあったが、兵藤、狩野、飯倉らをJ1で戦えるようにしたりと、マリノスにしては若い選手を伸ばすのが上手かった。何と言うか指導者としてのセンスは有ったと思うので、このまま監督を続ければ何処かで実績を残して評価されるかもしれない。(今はJFAから派遣され、ラオスの代表監督。)
 過去7年で終盤失速しているのは06、07、10、11年だが、06年は岡田監督が辞任し、コーチだった水沼氏が引き継いだ時には主力の怪我や若手の伸び悩みで、04年迄の遺産が殆ど残って無い状況。07年は今でもよく覚えているが、今季と同じく夏場までは好調だったがSB(小宮山、田中(隼)など)が上がった裏が弱点と見抜かれてから失点が増えて勝てなくなった。
 ここでようやく一昨年、去年に話が進むんだが、木村(和)氏になってからサッカーが後退したというか、より個人依存が高まったというのがまず印象としてある。ここで言う個人というのは主に22番、25番を指すのだが。ゴールパターンもセットプレーとかドリブルシュート、クロス→ヘッドみたいなシンプルなものが多いが、09年以前はもう少し連動したプレーが多かったように思う。こういう個人依存は終盤の疲労蓄積や累積警告による不調や欠場に大きく影響されてしまい、それが結果に表れる―――そんな感じだろうか。
 今の監督は前監督時代のコーチで実際に戦術を考えていたのはこの人だったようだから、過去2年から劇的に変わるとは思えない。やはり監督に投資して良い人物を連れてこないと、とは思いつつ、仮に日本人なり外国人の有能な指導者が来て、より連動したアグレッシブなサッカーを目指すとしたら、おそらく22番、25番をベンチに置く決断を迫られる予感がする。けどこの2人はある意味ローマのトッティのような不可侵の存在であって、逆に監督のクビが飛ぶ可能性もある。

 まぁ最後は妄想の域を出ないが、実は状況的に詰んでるような。シャムスカとか今どうしてるんだろうか。守備組織を構築できて結果を残すにはいい監督と思うが。