ナビスコ杯は今節も控え中心メンバー。U19、U23で計5人招集されているのでベンチにはユースから3人も入ったのだが、スタメンにはレギュラーの小林が入り、その他榎本、栗原、三門、兵藤、カイケと中堅、外国人で過半数を占めていた。布陣を見る限り後ろは経験豊富な選手を置いて、2列目は仲川、中島、天野をテスト、と言った感じか。
前節は今日より経験の少ない面子でベストメンバーの鳥栖に勝ったので、控え中心の福岡には押し気味に進められるかなと思っていたが、予想通りボールを支配して前半半ばまでに2度決定機があった。いずれもクロスにファーサイドの仲川が飛び込んだ形で1本はバー直撃。
だがこれ以降徐々に福岡が巻き返し始める。こういう場合、技術で劣るチームは数少ないカウンターの機会にも個々人が焦って闇雲に突き進んで囲まれ、簡単にボールを奪われる、というシーンが大半だが、福岡はカウンター時にも中央、両サイドを広く使いながらボールを前に運び、しっかりシュートで終わっていた。前半30分過ぎの先制点も右サイド深い位置で金森がドリブルで進んで低いクロス→これを中央で平井が合わせた形だが、サイドからのクロスに対して中央でフリーになる動きの質、タイミングなど、単なる偶然では無く練習で何度も繰り返して身に付けていたのが伺える。やっぱこういう個人、組織の動きのディテールを突き詰めるのはネルシーニョの香りがする。先制点以降五分五分の展開になり、前半が終わった。
後半、マリノスは10分に齋藤を入れて点を取りに行くが流れは前半と変わらず。だが後半半ば過ぎにエリア内で天野が倒されたと判定され、PK、これを兵藤が決めて追い付いた。しかし今季のマリノスはよくPKを取るな。リーグと合わせてこれで4回目。キッカーの兵藤がボールを抱えてエリア内にいたカイケに向かって歩いていた時はまさかまたPKを譲るのか(リーグ湘南戦で中村に譲って貰い、失敗)と思ったが、軽くハイタッチするだけで、安心感故かスタンドは少しどよめいた(笑)
同点後はマリノスがやや押し込む展開になったが、GK神山が当たりまくっていて枠内シュートをことごとく弾き返す。去年のリーグ山形戦での山岸を思い起こさせたが、ロスタイム5分も4分が過ぎた頃に、神山が弾いたこぼれを拾って途中出場の伊藤翔がペナルティエリアのライン辺り、右斜め約30度からシュート、これが神山のニア上をぶち抜いた。このゴラッソでマリノスが勝利。神山は先程山岸に準えたが、何度もビッグセーブを見せながら終了間際のゴールで負けたという意味では神戸の徳重(昨季日産で終了間際にアデミウソン、齋藤のゴールで逆転)だった。
伊藤のゴールは凄かったのだが、やはりこの選手は“継続性”が課題ではある。これは齋藤も同じ。ゴラッソと言う意味では伊藤は13年の開幕大宮戦でもエリア外から久保の様なミドルを決めてるし、齋藤も前節の鹿島戦で3人抜きドリブルを見せたが、そう言うプレーは今年に限らず毎年見せている(12年開幕柏戦、13年ホーム広島戦で見せたドリブルゴールなど)。要は“瞬間最大風速”は高いのだが“平均風速”それほどでも無いんだな。故に年間リーグ戦得点数は二桁行って欲しい所を毎年5〜8程度に止まる。特に齋藤が代表に定着出来ていない理由はこの辺りにあるのではないかと思う。同じドリブラーの原口は齋藤ほど突き抜けた個人技は最近見せないが、複数ポジションに対応出来て、プレーの安定感は上回る。今後は圧倒的な身体能力や個人技だけでなく、2列目から飛び込んでのワンタッチゴールとか動きの質で勝負するようなゴールをもっと増やして欲しい。それこそ今日平井が決めた様な。
福岡はリーグ2節をTVで観た時は、最後にマリノスが中村のFKでようやく追い付いた展開とは言え個々の能力はJ1では厳しいなと思っていたのだが、今日は控え同士互角の展開だった。リーグ戦でもようやく前節最下位脱出したばかりではあるが、実はこれまでの公式戦(リーグ+ナビスコ杯)で3失点以上した試合が無い。ゴール数が少ないので負けが先行しているが、この守備の安定感は過去の昇格PO組(大分、徳島、山形)とはちょっと違うな。下位も団子状態だし、残留の可能性は十分ある。今年、そして来年福岡で結果を出したら井原さんは18年に始動するであろう東京五輪代表監督になるかもしれない。出来ればJでもうワンステップ上のクラブ(中位以上でタイトルも視野に入れている所)を率いてからが理想的で、特に“中村、中澤以後”のマリノスでこのサッカーは上手くハマる気がする。
それとやはりこの人は日産スタジアムより三ツ沢(そして国立)が似合う人だなと。当時を思い出すと何故かホームユニ、三ツ沢、昼の試合というイメージが浮かんでくる。