チーム別ユース年代最高傑作は誰か(高校:東海以西編)

 今日は東海以西の高校を。さすが東海、九州は名門高が多く、調べるのに睡眠時間を削らざるを得なかった。
【東海】
■清水桜ケ丘(旧清水商業)(選手権3、総体4、高円宮杯5)

川口能活(1975/8/15)
代表:116試合
 J1:421試合
 デンマーク:8試合
※次点)名波浩(1972/11/28)
代表:67試合9ゴール
 J1:314試合34ゴール
 伊 :24試合1ゴール

他に藤田俊哉(代表:24試合3ゴール、J1:419試合100ゴール、蘭:14試合1ゴール)、大岩剛(代表:3試合、J1:386試合10ゴール)、平野孝(代表:15試合4ゴール、J1:352試合54ゴール)、田中誠(代表:32試合、J1:360試合10ゴール)、小野伸二(代表:56試合6ゴール、J1:178試合29ゴール、蘭:112試合19ゴール、独:29試合、豪:47試合9ゴール)らを輩出し、現川崎監督風間八宏など70年代から書き切れないほどの選手を輩出している。
「最高傑作」の定義の話になるが、人によっては(むしろ多数の人が)小野こそベストだと言うかもしれない。また藤田は代表には定着できなかったが、J1で100ゴールという実績を持ち、この人こそと言う意見もあるだろう。今回の基準を適用するにあたって最も悩ましい所だが、やはりここは最初の方針通り代表戦出場数を最優先させたい。
ここの全盛期はやはり上記の選手達の大半が在籍した90年代前半になり、後半以降は小野の代で一度も選手権に出場出来なかったように、あまり結果を出せていない。それでも21世紀に入ってから菊池(鳥栖)、水野(甲府)、平岡(清水)と輩出しているのはさすがと思うが、ここ数年は風間兄弟のみ。静岡も新興勢力が台頭したりかつてほど人材が揃わなくなった面はあると思うが、学校も合併した今後どうなるのか。

静岡学園(選手権1)

森下申一(1960/12/28)
代表:28試合
 J1:74試合
 JSL :176試合
※次点)三浦泰年(1965/7/15)
 代表:3試合
 J1:258試合11ゴール
 JSL :81試合5ゴール

 永田充(代表:2試合、J1:265試合6ゴール)、南雄太(J1:246試合)、増田忠俊(代表:1試合、J1:235試合32ゴール)、小林祐三(J1:230試合3ゴール)、他にも狩野健太谷澤達也大島僚太など錚々たる顔ぶれながら、代表戦に最も出場したのは松永の前の代表正GKだった森下と三浦ヤスという年配のOBになる。サッカースタイルは対照的ながら、育成と言う意味では市船とどこか似ているな。J1で活躍する選手は育てるが、その先は・・・という意味で。
ちなみに三浦カズは高校1年時で中退しているので、ここではカウントしない。

藤枝東(選手権4、総体2、高円宮杯2)

長谷部誠1984/1/18)
 代表:81試合2ゴール
 J1:149試合12ゴール
 独 :157試合5ゴール
※次点)中山雅史(1967/9/23)
代表:53試合21ゴール
 J1:355試合157ゴール
 JSL :31試合19ゴール

Wikipediaで調べたら古くは1936年のベルリン五輪に出場した選手がいたり、山田暢久(代表:15試合1ゴール、J1:501試合25ゴール)、成岡翔(J1:246試合32ゴール)、大井健太郎(J1:159試合5ゴール)、河井陽介(J1:89試合2ゴール)と各世代満遍なく揃っている中で、上記2名は代表での実績が断トツ。長谷部は高校時代は1学年下の成岡の方が有名だった中で、当初はドリブラー、後に中盤のバランサーとプレースタイルを変化させながら代表キャプテンにまでなった。ユース時代で将来まで判断できない一例。
ここは清商と静学を足して2で割ったような印象がある。泥臭さとスマートさ、テクニックとフィジカルのバランスが取れている感じ。

【北陸】
富山第一(選手権1)

柳沢敦(1977/5/27)
 代表:58試合17ゴール
 J1:369試合107ゴール
 伊 :44試合
※次点)西野泰正(1982/9/14)
 J1:69試合1ゴール

選手権の現王者。プロ入りしたOBは他に現在山形でプレーする中島裕希(J1:64試合2ゴール)など。ここも当分最高傑作は柳沢だと思うが、選手権で優勝した現監督は2012年に就任したばかりと言う事で、今後10年経てばまた新たな逸材が現れるかもしれない。富山にもJチームはあるが、現時点ではやはりこちらの方が人材が集まるだろうし。
柳沢で思い出すのはいつも次の2つのエピソード。1つはプロ入り時にマリノスにほぼ決まっていた中で鹿島に入ったという話(当時のサッカーダイジェストより。)当時はマリノスもそこまで育成下手ではなく、超高校級の逸材を育てていた中で、柳沢が入っていたらどうなっていたか。GK(川口)、DF(松田)、MF(中村)と来てFWにその事例を加えていたか、あるいは阿部、田原と同じ道を辿ったか・・・。もう1つはトルシエ時代に右サイドハーフで起用された時に「エースストライカーに対して何事か」と言わんばかりの批判が多かった事。トルシエはその時点で既に柳沢の技術の高さとストライカーにしてはチャンスに消極的という欠点を理解していたのだと思う。結局その欠点は日韓W杯後にセリエAで全く点が取れない辺りから薄々世間に気付かれて、最終的にそれは06年W杯での「QBK」という形で世間に完全に定着した。書いてて思ったが「技術は高いが決定力に欠ける」という点では今の南野に似ているな。ただ南野は無理にFW起用されず、2列目、トップ下で試合に出ている分、柳沢の悲劇は繰り返さないだろうとは思う。FW向きの性格では無いのに代表のエースFWとして期待されてしまったという意味での悲劇に。

【近畿】
野洲(選手権1)

乾貴士(1988/6/2)
代表:12試合
 J1:54試合9ゴール
 独 :55試合6ゴール
※次点)楠神順平(1987/8/27)
 J1:115試合10ゴール

プロ入りした選手は約20名ほどいるが、現在J1でプレーするのは他に村田(清水)、U19代表の望月(名古屋)のみ。やはりと言うか小柄なドリブラー、2列目のアタッカータイプが多い。それはそれで特長を持ったチームという事で素晴らしい。

滝川第二(選手権1、高円宮杯1)

岡崎慎司(1986/4/16)
 代表:83試合39ゴール
 J1:121試合42ゴール
 独 :103試合30ゴール
※次点)加地亮(1980/1/13)
代表:64試合2ゴール
 J1:300試合3ゴール
 米 :13試合

昔から波戸(元横浜M)、金崎(現ポルトガル)、林(元千葉、大分)、森島(川崎)とDFからFWまで様々なタイプを出している中で、歴代最高は当分岡崎が君臨するに違いない。プロ入り3年目の途中でブレイクし、五輪代表、A代表と一気に今の位置にまで駆け上がった。ただもし3年目も結果を残せなかったらそのまま契約満了という結果になっていたかもしれないし、その辺は本当に巡り合わせと言うか運の要素もあるのだなと。今季も是非15ゴール越えを。
次点の加地はこのblogを始めた当初は現役代表選手で、よくクロス精度の低さとかでdisってたのだが(苦笑)、年を経る毎に上手くなっていった。そもそもパス回しで崩すあの西野ガンバで長らくレギュラーだったというだけも凄いのだが。調べたらMLSでも現在はレギュラーのようだ。

【中国】
広島皆実(選手権1、総体1)

森重真人(1987/5/21)
 代表:15試合1ゴール
 J1:197試合12ゴール
※次点)下田崇(1975/11/28)
代表:1試合
 J1:288試合

過去15名ほどプロ入りした選手を輩出しているが、代表選手は上記2名のみ。その他、先日マリノス天皇杯で破った時に2ゴールを挙げた北九州のFW渡がここの出身だった。さすがに広島はサンフレという存在があるだけに人材を集めるのは難しいという面はあるだろうが、森重が中学時代広島のジュニアユースだったり、この地域はクラブと高校が上手く連携して育てている印象がある。

広島観音(総体1)

代健司(1989/3/27)
 J2:66試合1ゴール

15年前に総体で優勝経験がある。プロ入りした中でJ1プレー経験のある選手はおらず、現在プレーしているのも愛媛FCの代がいるのみ。

【九州】
■東福岡(選手権2、総体2、高円宮杯1)

長友佑都(1986/9/12)
 代表:76試合3ゴール
J1:72試合5ゴール
 伊 :127試合9ゴール
※次点)本山雅志(1979/6/20)
代表:28試合
 J1:356試合38ゴール

その他代表経験者は山下芳輝(代表:3試合、J1:204試合42ゴール)、小島宏美(代表:1試合、J1:174試合38ゴール)と先月代表入りした坂井達弥(代表:1試合、J1:25試合)がいる。伝統的に古賀正紘手島和希千代反田充金古聖司らCBや、ここの特長であるサイドアタッカーを数多く輩出しているが、代表で最高の実績を残しているのが、高校時代ボランチであまり目立つ存在では無かった長友というのは面白い。まぁこの人の場合大学時代にSBにコンバートされてブレイクしたのだが、それも元々ある走力を生かしたものだし、東福岡に限らず九州の高校は全体的によく走れて当たりに強い選手、マルチな選手と一芸に秀でた選手をバランス良く育てているように思う。

■国見(選手権6、総体5、高円宮杯2)

大久保嘉人(1982/6/9)
 代表:60試合6ゴール
J1:301試合130ゴール
西 :39試合5ゴール
 独 :9試合
※次点)高木琢也(1967/11/12)
 代表:44試合27ゴール
J1:191試合64ゴール
JSL :22試合9ゴール

この20年では市船と並ぶ実績を誇る超名門。上記2名の他、三浦アツ(代表:25試合1ゴール、J1:318試合45ゴール)、都築龍太(代表:6試合、J1:250試合)、徳永悠平(代表:9試合、J1:267試合4ゴール)、平山相太(代表:4試合3ゴール、J1:151試合28ゴール)、渡邉千真(代表:1試合、J1:169試合54ゴール)らがいて、兵藤(横浜M)、渡邊(大)(大宮)などJ1で活躍するOBは数多い。
この高校はその蹴って走るスタイルがよく批判されたものだが、上記の様にプロでしっかり戦える選手を育てている分、育成機関としての役目はしっかり果たしていると思う。それと東福岡の項でも述べたが、ここは汎用性の高い選手が多い。最近でもボランチに故障者続出のマリノスで兵藤がポジションを1列下げてしっかり対応出来ていたりとか。
近年は監督が代わり、繋ぐサッカーを目指す一方で小嶺総監督退任の影響か全国大会出場すらままならない状況ではあるが、上記OB達の様な、どんな監督にも重宝されるようなタイプをこれからも育てて欲しいものだ。

■鵬翔

興梠慎三(1986/7/31)
 代表:12試合
J1:254試合74ゴール
※次点)増田誓志(1985/6/19)
 代表:1試合
J1:197試合14ゴール
韓 :35試合4ゴール

一昨年度に選手権で優勝。他にアテネ五輪代表で当初レギュラーFWだった中山悟志らがいる。今思うに興梠は柿谷の先達と呼べる存在だな。元々トップ下のテクニシャンだったのが、裏に抜ける動きを覚えてストライカーになったという点で。2列目の選手は日本に溢れるほどいる中で、こういう事例がもう少し出てきたら面白い。

鹿児島実業

遠藤保仁(1980/1/28)
 代表:146試合13ゴール
J1:464試合92ゴール
※次点)城彰二(1975/6/17)
 代表:35試合7ゴール
J1:230試合95ゴール
西 :15試合2ゴール

他にも前園(代表:19試合4ゴール、J1:191試合34ゴール、ブラジル:5試合1ゴール、韓国:44試合1ゴール)、松井(代表:31試合1ゴール、J1:72試合7ゴール、仏:148試合17ゴール、露:7試合、ブルガリア:11試合、ポーランド:16試合4ゴール)、那須(J1:333試合26ゴール)、赤嶺(J1:231試合67ゴール)、伊野波(代表:21試合1ゴール、J1:191試合4ゴール)と活躍するOBは数多い。が、代表戦を基準にしている以上、ここも当分遠藤(保)が最高傑作であり続けるだろう。
個人的にここの出身者はプレーよりも人間性の方が面白いというか、変わり者が多いイメージがある(苦笑)飄々とした城や遠藤、松井然り、その他前園、田原、伊野波、岩下・・まぁこの4名に関しては「独特の世界観を持つ」とだけ言っておく。

次回はクラブユース編を。高校編より調べるのは多少楽かな・・・。