J1前期第1節 横浜M×川崎(日産)


 今年もまた開幕を迎えた。先日「失点は去年同様少ないと思う」と書いたそばからこの結果なのだが(苦笑)、今日の試合の印象は09年の開幕戦に近いな。(奇しくも同じ3/7)あの時は木村浩吉監督で、前年の後半が好調だったので、新シーズンはそれを更に維持して、などと思っていたらJ2から昇格してきたミシャの広島に2−4で完敗したという試合。今日も予想を越えた相手のサッカーに振り回されたまま試合を終えたという意味では同じだった。
 それにしても今日のフロンターレのサッカーは素晴らしかったな。絶えずスペースを探してパスコースを作り出す動き、自陣深くから迷い無く前に突き進むカウンター、サッカーとはこういうものだというのを観たように思う。マリノスは去年まではこのようなサッカーに対して激しくボールに寄せてパスを乱し、高い位置からのショートカウンターとセットプレーで点を取って主導権を握り、そして勝ってきたのだが、今年はDFからのビルドアップを重視してか去年までの激しさが無く、川崎にやりたい放題やられてしまった。ビルドアップといっても序盤の攻撃はほぼ相手DF裏へのロングパスに終始していたのだが。まぁそれで一時同点に追い付いたんだから相対的に守備に脆さを抱える川崎相手には変わらず有効な手という見方も出来る。小林のゴールは川崎の3バックの左、谷口がマークを外した事によるものだが、これも若さか。身体の大きさやボランチ、SBにも対応出来るセンスは代表も期待出来るタレントとは思うのだが。
 一方で3バックの残り2人、角田と武岡の守備は盤石だった。守るだけでなく、最終ラインからのパスの起点になったり、時には自らドリブルして攻め上がったり、その判断が秀逸。これまでの川崎DFはこういう判断が甘く、ドリブルで突っかけて奪われてピンチを招くシーンが試合中何度かあったのだが、そういったシーンは皆無だった。2人とも新戦力だが、まずは補強は成功と言った所か。

 マリノスは離脱中の主力(ラフィーニャ、中村)の復帰やアデミウソンがフィットすればまた結果は出るだろうし、この1戦のみでシーズンを判断する事は出来ない。だが、今日の試合で分かったのはそういった短期的な展望では無く、中長期的な将来に対する不安。
 これまでマリノスは守備も攻撃も個々の能力の高さに支えられたサッカーをしてきた。守備は強いCBが相手を止め、攻撃も10番が誰も真似できないパスを通してチャンスを作り、9番(CF)が高い決定力でゴールを陥れる―――ざっくり言ってそういうサッカー。ただそれは代表のそれも主力クラスの選手(要は日本最高レベルの選手)がいて初めて成り立つものであって、実際マリノスには現在中澤、中村という選手がいる訳だが、彼らも30代半ばを過ぎ、その後継者がいない今同じサッカーは出来ない。だからこそ個々の能力に頼り切ったサッカーから脱却し、より組織的なサッカーを目指す為に新しい監督が招聘された、そう自分は解釈している。目先の結果を追うのであれば今までと変わらないサッカーで良いが、それでは近い将来訪れるであろう中澤、中村の引退後は厳しい冬の訪れを予感させる。傑出した個人が不在のまま、傑出した個人を前提としたサッカーをすればどうなるか、考えるだけで恐ろしい事だ。

 という訳で染み付いた体質を変えるのは監督が変わった今が最後のチャンスなのだろうと思う。それまでは今日の試合の様に、既に組織的なサッカーに取り組んでいるチームにレッスンを受ける事になるだろうけど。(既に去年の鹿島戦がそうだった。)次はFC東京戦だが、この試合もまたそうなるだろう。

※追記
武岡を新戦力と書いたが、2年目だった。去年はリーグ戦4試合のみだったんで全く印象に残っておらず。。