永遠の戦い

ローマ人の物語(文庫版)38/39/40―――キリストの勝利―――
 例年文庫版は秋に出るのだが、今年はもう出ていた。紀元前750年から始まった話も既に紀元後4世紀後半を迎え、話はもう西ローマ滅亡に向けて突き進んでいるので、全体的に暗いトーンで話が流れる。ただそんなトーンでも、単行版を読んだのはもう3年も前なんで、これ位に間を置けば、また読んでみようという気になるのも確か。


[あらすじ]
 コンスタンティヌス(大帝)以降キリスト教化の進む帝国にあって、途中ユリアヌスという宗教共存策を採った皇帝も現れたものの、それは一時的な例外に止まった。そして最終的にはミラノ司教アンブロシウスらの活躍により、皇帝テオドシウスの下でキリスト教は国教化され、従来の多神教は邪教となり、ついにキリスト教ローマ帝国を飲み込んだ。


 丁度これを読んでいたタイミングで、NY世界貿易センタービル跡地近くのモスク建設騒動が起こってたんだが、異教が自分らのコミュニティーでその存在感を増す事に対する怖れ・反発という意味ではこの巻で描かれてる4世紀のローマと通じる部分がある。欧州でも似たようなもんで、(まさに4世紀の結果としてキリスト教世界となった)EUは東欧と違ってトルコの加盟申請には色々注文を付けて少しでも遅らせようとしてる。まぁトルコはサッカーとかスポーツでは完全に欧州の一員で、ある程度実力も認められてるから、こういう既成事実を積み重ねて加盟に持って行きたいんだろうけど。
 さすがに欧米で4世紀のローマみたく他の宗教が取って代わる事態にはならないと思うが、イスラムの人口は増えこそすれ減る事はないと思う。アメリカが移民国家で、欧州にも益々アフリカやトルコから移民が増えている以上は。(あのメスト・エジルムスリムだったか。)これまでも黒人やアジア系、ヒスパニックの人口が増え、次第にその中から市長や州知事そしてついに大統領も誕生したように、あと数十年もすればイスラム系市長、州知事が誕生し、100年位経てば大統領も出たりして(というか市長ぐらいは既にいる?)。


 そうなった時世界はどうなるのか?ローマはキリスト教を国教化した数年後には(別にそれが理由では無いが)東西に分裂し、それから100年もしない内に西の方は消滅してしまった。もしアメリカやEUが内部分裂し、世界のパワーバランスが崩れたら?まぁ仮にそういう事態が起こるとしても100年単位の話になってくるとは思うけど。ただ、さっきエジルの例を出して気付いたが、我々がプレーを見る上で信奉する宗教が何かなど気にしないように、世界を繋ぐ手段の一つとして、スポーツの力がより重要になってくるのかもしれない。


 って本の内容から話が飛んでしまったが、丁度9.11とタイミングが合ったので読みながらそんな事を思っていた。そういえば例のモスクの話でコーランを燃やすとか言ってた牧師がいたが、(新聞やニュース等で報道される上での)呼称が狂信者から原理主義者に変わっただけで、こういう輩は本当に何時の時代にもいるな。あの牧師も1000年位早く生まれてれば、今頃十字軍結成を煽って喝采を浴びてただろうよ。