最終章

ローマ人の物語41,42,43―ローマ世界の終焉/塩野七生
 本章自体は単行本で3年半程前に読んではいるが、文庫版として改めて読み返すのにそれ位の間隔が丁度良い。
 著者も述べているが、西ローマが滅亡する600年も前に、そのローマが滅ぼしたカルタゴの、まさに落城・炎上する様を見て、ローマの総司令官はいつの日か祖国にも同じ運命が待ち受けるであろう事に思いを馳せて涙したというが、西ローマは別に落城したのでも攻められて滅亡したのでもなく、既に何の実権も無かった皇帝が蛮族に廃位させられ、その後継が据えられなかった―――本当にただその一事のみで、「後継がいない。即ち滅亡」と後世から判断されるに至った。だからどちらかというと“消滅”が相応しい。(東の方は1000年後に都を攻め落とされて滅亡したが。)
 ここで全くの余談だが、↑の背景を鑑みるとトッティデ・ロッシはローマ生え抜きではあるけれど、(確かトッティはローマの下町育ちで、デ・ロッシはテベレ川河口の街オスティア出身。)ローマ人の子孫というよりは、この2000年の間にラテン、ゲルマンの諸民族が入り乱れた、その全てを受け継いでいると言えるだろうか。
 華々しい攻城戦の末でもなく、一見あっけない終末ではあるが、Wikipediaの“古代ローマ”の冒頭にある“世界帝国ローマの記憶は以後の思想や制度にさまざまな形で残り、今日まで影響を与えている。”という一文の通り、帝国やそれを支えた人々がいなくなろうと、受け継がれる物はあるのだなと。別にそれは法制度とか、哲学、格言等に限らず、CL決勝でローマに行ったバルササポがローマ軍団兵のコスプレでオリンピコに登場したり、勝利後に“VENI・VIDI・VICI”の弾幕を掲げたりとか、そういう所にも。
 

 思えば入社直後に遠距離通勤のお供に文庫版を読み始めてから早6年、途中単行本が完結し、そして今文庫版も全43巻を以って完結、と。読み始めた頃は丁度このblogも始めた当初で試行錯誤する中での観戦記と並んでのネタの供給源でもあった(苦笑)1993年から本作を書いてきた著者に及ぶべくもないが、随分と長い時間だったとも言えるし、一方でそれ以前の6年を思えば早い時の流れだったようにも。
 色んな意味で一区切り。もうすぐ刊行されるはずの十字軍物語最終巻を読んだら、色々と他ジャンルにも手を出してみたい。