チーム別ユース年代最高傑作は誰か(クラブ:西日本編)

ようやく最終回。東海以西のクラブユース編を。

【東海】
■清水ユース(Jユース2、クラブユース1)

市川大祐(1980/5/14)
 代表:10試合
 J1:347試合12ゴール
※次点)枝村匠馬(1986/11/16)
J1:238試合36ゴール

その他市川と同期の平松康平(J1:138試合11ゴール)、現在も在籍する杉山浩太(J1:170試合8ゴール)、高木純平(J1:135試合5ゴール)と居るが、代表経験者は市川のみ。枝村が既にJ1で200試合以上の実績があったのは意外だった。静岡(清水)は有名高、伝統高が揃っているだけにそちらに憧れて進学する逸材が多そう。

■磐田ユース(クラブユース1、高円宮杯1)

山田大記(1988/12/27)
代表:2試合
 J1:90試合22ゴール
※次点)太田吉彰(1983/6/11)
J1:264試合32ゴール

他に上田康太(現岡山。J1:172試合8ゴール)、山本康裕(現新潟。J1:158試合12ゴール)などがいていずれも年代別代表経験を持つ選手は多いが、A代表キャップを持つのは山田のみ。ちなみにこの山田は現時点で静岡出身(高校、ユースを卒業した選手)の代表経験者で最も若い選手で、つまりはこの人より若い25歳以下の静岡出身者は未だA代表経験が無いと言う事を意味する。この県の高校、ユースがここ数年全国レベルで勝てていない現状がそのまま反映されていると言えるだろうか。

【関西】
■G大阪ユース(Jユース4、クラブユース3)

稲本潤一(1979/9/18)
 代表:82試合5ゴール
 J1:214試合19ゴール
 英 :66試合4ゴール
 仏 :5試合
 土 ;25試合
 独 :43試合
宮本恒靖(1977/2/7)
代表:71試合3ゴール
 J1:337試合8ゴール
 墺 :21試合

ここも清商同様に最高傑作は宇佐美という意見は多いと思うが、代表実績では稲本、そして宮本の2名が突出している。まぁ自分で決めたルールではあるが、稲本は日韓W杯を境に印象が全く異なるんだよな。02年まではガンバや五輪代表、A代表での印象が強烈なのだが、それ以降は移籍を繰り返して目立ったのはフルアムで短期間輝いた位で、代表でも印象が薄い。82試合も出ていたのが意外だった程。
その他大黒(代表:22試合5ゴール、J1:204試合69ゴール、イタリア:10試合、中国:24試合3ゴール)、橋本(代表:15試合、J1:337試合19ゴール)、二川(代表:1試合、J1:392試合43ゴール)、新井場(J1:422試合22ゴール)、家長(代表:3試合、J1:189試合21ゴール、スペイン:18試合2ゴール、韓国:12試合1ゴール)、安田(代表:7試合1ゴール、J1:147試合1ゴール、オランダ:45試合)と輩出した選手数やその実績では西日本のクラブでは最高。関西では宇佐美がユースにいた頃からC大阪、神戸、京都ユースも力を付けてきていて、かつてほど圧倒的ではないが、それでも大森、西野といった現トップチームのレギュラー、準レギュラー格を育てているのはさすがだ。ちなみに今年度のU18プレミア・ウエストでは現在首位を走っている。

C大阪U−18(クラブユース2)

柿谷曜一朗
 代表:18試合5ゴール
 J1:79試合33ゴール
 スイス :8試合2ゴール
☆山口蛍
 代表:15試合
 J1:102試合10ゴール

セレッソと言えば香川が有名だが、この人は元々宮城のFCみやぎバルセロナというクラブユースから高校2年時にセレッソとプロ契約をしたので、セレッソの下部組織出身者という訳ではない。と言う事で、現時点での最高傑作は柿谷と言う結果に。J1出場試合なら丸橋祐介(140試合7ゴール)が現時点での最高実績。昔から年代別代表に選ばれる選手を輩出して来ているが、特に現在は扇原、南野、そして現在ドルトムントにいる丸岡と25歳以下の逸材が多いので、今後10年間で代表試合数も一部リーグ試合数も大きく伸ばす事と思う。

■京都U−18(Jユース1)

角田誠(1983/7/10)
 J1:293試合19ゴール
※次点)平井直人(1978/7/16)
J1:100試合

現時点でA代表出場経験のある選手はおらず、数年前に久保(現ヤングボーイズ)が選出されたのみ。角田は最初CBだったが、いつの間にか中盤のファイターになっていた。こういう闘える男こそ代表(国際試合)に必要と思うのだが。世代的に戸田と細貝の間に位置するが、もしあと5歳若かったらアギーレは代表に呼んでいたと思う。GK平井はクラブ初のトップ昇格者らしい。
ここもC大阪や神戸同様にユースが整備・強化されたのは最近で、上記久保の他にアジア大会代表の原川(現在愛媛にレンタル中。)など逸材は多い。期待された宮吉が伸び悩み気味ではあるが・・・。

■神戸ユース(Jユース2、クラブユース1)

小川慶治朗(1992/7/14)
J1:77試合14ゴール
※次点)森一紘(1981/4/17)
J1:27試合

ここもまだA代表試合に出た選手はいないが、U21代表の岩波(J1:24試合1ゴール)はこのまま行けば近い将来確実に選ばれるだろう。その他ジュニアユース出身なのでここにはカウントしないが、マリノスの藤田がここの出身なのは意外だった。(神戸国際大附属高→立命館大から鳥栖でプロ入り)
しかし関西4クラブはまるで競っているかのようにここ数年逸材を続々と輩出している。同じ様に近隣にクラブがひしめき合う関東でこうした現象が見られないのは何故か、この点は興味深い。関西と言えば高校野球も強いが、タレントを発掘、育成する共通の土壌のようなもの、文化的、制度的な背景などがあるのだろうか。

【中国】
■広島ユース(Jユース3、クラブユース2、高円宮杯4)

駒野友一(1981/7/25)
 代表:78試合1ゴール
 J1:361試合18ゴール
※次点)槙野智章(1987/5/11)
 代表:14試合1ゴール
 J1:180試合28ゴール
 独 :8試合

その他森崎和幸(J1:357試合18ゴール)、森崎浩司(J1:241試合39ゴール)、高萩洋次郎(代表:2試合、J1:180試合20ゴール)、柏木陽介(現浦和。代表:4試合、J1:239試合40ゴール)、森脇良太(現浦和。代表:3試合、J1:182試合14ゴール)、そしてブンデス2部ながらチームの主力になっている田坂祐介(現ボーフム。J1:105試合11ゴール)など。全体的に(あくまでプレーが)真面目で献身的な選手が多いという印象。その意味ではW杯に2度行って断トツの代表実績を誇る駒野は、その象徴と言えるかな。ここも中国地方のクラブユースでは突出した存在だけに、今後も選手を輩出し続けるだろう。


 ようやく完結。以下気付きなどを。
■各クラブの下部組織在籍者一覧を眺めていて気付いたのだが、中学はJユースでその後は高体連に進んだ代表選手、J1レギュラー格の選手が結構いる。先日述べた中村俊輔然り、中学はガンバにいた本田(星稜→名古屋)然り。それはユースに昇格出来なかった故という事情もあるだろうが、Jユースの最大の功績は実はこういう中学年代の育成なのではないかと思った次第。清水、磐田などはU18年代は近隣に有名高が揃っているだけに、思い切って下部組織は小学生、中学生年代に限定して、その卒業生は各校に進む、という仕組みでも面白いのかなと思ったりもした。言わば静岡の育成センターの機能。(まぁトップチームへの還元という下部組織の存在意義が薄まってしまうのであまり現実的ではないが。)
■高校出身者の方が代表歴、J1実績が長い傾向にあるが、各地域のJ下部組織が整備されてきた中、今後10年はまた違った展開を見せるはず。よく「クラブ出身者より高校出身者の方が大成する、代表で頼りになる」というような事を言われるが、それも結局はJユースが高校に比べて未整備の所が多く、人材もそれに比例していたという面が大きかったのではないかと思う。Jユースの各チームを見ると、下部組織を本格整備して大体5年を過ぎると年代別代表に選ばれる様な逸材(≒地元の天才児)が現れ、10年を過ぎる頃にはA代表に届き得るレベルの選手が現れて、トップ昇格出来なかった選手でも関東、関西の強豪大学に進学出来るようになる、という感じ。先日マリノス入りが決まった大学ナンバー1アタッカーと言われる専大の仲川は川崎U18の出身だが、Jの中では後発の川崎でもこういう逸材を輩出できるレベルになっているという事。
年代的には本田、長友らの世代から下はもうクラブ/高校の垣根があまり無いように思える。従来高校出身者が主体だったFWにもクラブ出身者が数多く台頭しており、クラブ出身だから、高校出身だから、ではなく、あくまでチームの特色が輩出される選手の違いになって現れる事になるだろう。

 1つ調べるとまた新しい興味が湧いてくる。あまり観に行く時間が無いが、大学サッカーとか今後はもう少しチェックしてみたい。