慶事に寄せて

 彼という人物を表すならば、“中庸”という言葉がまず思い浮かぶ。それは決して中途半端、どっちつかず、といったネガティヴな意味を内包するものではなく、究極のバランサーという希少価値を表す。我々が共有し、時に暴走するサッカーへの狂気を内に秘めながらも現実世界へも適応するその生き様は、まさにバランサーの名に相応しい。おそらくいなくなって初めてその存在の大きさに気付くタイプと言えるだろう。かれこれ2年半程続いているこのFC.bossという存在が取り合えずもチームの体を成しているのも彼の存在があればこそであって、仮に副代表というポストが存在するならば、それに最も近い存在と言える。


 披露宴のBGMで“A Whole New World”が流れた時、FC.bossチームマネージャーは彼が名実共に「新しい世界」へ行ってしまった事に感傷的になっているようだった。そう、確かに彼は今日を以って新しい世界に旅立った。だがしかし、それを悲しむ必要は全くない。彼はいつだって“我々の世界”に戻ってくるし、それが“究極の中庸”である彼の彼たる所以であるからだ。これまでと同じ様に、これからも彼は我々の最高の仲間で有り続ける事に変わりは無い。


 抜けるような青空、横浜―みなとみらい―海、そんな素晴らしいシチュエーションで人生の一大イベントを迎えた彼を心から祝福すると共に、万感の思いを込めて(二次会でダースベイダーになった)俺は奴を斬ったのだった。