北東北行(最終日)

 今回の旅の目的は「未踏の北東北3県を周る」というものなのだが、秋田については先週の豪雨の被害が予想以上に甚大で諦め、今日は代わりに盛岡観光を考えていた。単なる豪雨でなく、線路に土砂が流れ、地盤が緩む程ならば新幹線の運行再開までそれなりに時間が掛かるはずだと。しかし新幹線は数日運休した後、速度制限付きで運転再開し、予約状況を確認したらまだ空きがあったので最終的に秋田行を決めた。向かうのは武家屋敷で有名な角館。
 盛岡〜角館間は通常なら約40分なのだが、上述の速度制限の為、1時間程掛けて到着。列車はスーパーこまちだったが、さすが最新車両だけあって揺れが少なく快適だった。

 角館ではまた弘前みたくレンタサイクルを利用した。貸出所に行くとまだ10時半だというのに店のオヤジさんは受付机でぐっすり眠っていたのだが、話すと陽気な人で色々街の情報を教えてくれた。武家屋敷街は駅から1kmほど離れているので歩くには少し長いが自転車なら丁度良い距離。行くと広い通りの両側を屋敷と木々が覆う、見るからに涼しげな場所だった。蝉の音すら涼しげに聞こえるような、そんな所。

 まだ現役(子孫の方が今も暮らしている)で立ち入り不可の家もあるのだが、何軒かは内部を見学出来て、ガイドによる解説が付く場所もある。“武家屋敷”と言うとつい城の御殿の様な豪勢だが非日常的な建物を想像してしまうのだが、ここはどこも簡素ながら機能的な造りで、生活感のある場所だった。特に面白かったのはガイドさんに説明して貰った家にある欄間の彫刻で、木目を水の流れに見立てて亀が彫り込まれ、さらに陽が射すと亀の姿が壁に映るという仕組み。

ししおどしや鴬張りの床(隠密除けに歩くだけで音が鳴る床)などもそうだが、木や自然の力だけで機能美を実現させる古の知恵にはただ頭が下がる。
 一通り周ると昼時だったので稲庭うどんを食した。

前夜はがっつりホルモン食ったんで、これ位あっさりしたのが丁度いい。昼食後は再び駅へ。貸出所に戻るとあのオヤジが再び気持ち良さそうに寝ていて、しかも今回は傍らの犬も同じ様に眠り込んでいたので、このあまりに幸せそうな光景を写真に撮るべきかかなり逡巡した。いいオヤジさんだった。
 帰りは昼過ぎの新幹線でそのまま東京へ。長閑な駅と行き先に「東京」と表示されるギャップが面白かったので思わず写真をば。

 帰りの車内からは先日の豪雨の爪痕が。

車内では徐行運転による到着時間の遅れをお詫びするアナウンスが何度か流れたが、この様な災害ですぐに復旧出来たのは凄い事だ。盛岡、仙台、大宮、上野と経て、16時過ぎに東京着。最終的には通常より3分程度の遅れに収まった。