映画レビュー

 平日のみなとみらいは人通りも少なく、特に赤レンガ周辺は遠足or修学旅行と思しき中学生、高校生ばかりが目立っていた。赤レンガの隣には巨大な青いテント+フットサルコートが現れ、ちょうど4年前も同じ様に臨時フットサルコートがあった事を思い出した。

 で、メインテーマであるダ・ヴィンチ・コードであるが、以下の文章にはかなりネタバレを含んでいるので、読みたい人だけ読んで下さい。もっとも原作を読んでいたらあまりそんな事を気にする必要もないかもしれないが。


 作品のテーマがキリスト教、特にローマ・カトリック世界の根幹を揺さぶる内容である為、各地で反発、抗議行動が起きているようだが、我々の様なキリスト教世界の外にいる人間にとっては、いやむしろ外にいればこそ、より客観的に楽しめると、見終わった後に感じた。率直に言ってしまえば、イエスに子がいようが、その子孫が現代まで続いていようが我々には関係無い訳で。ただ逆に我々自身の根幹、アイデンティティを揺さぶるような仮説(及びそれを描いた作品)があれば、その限りではないのも確かだ。日本でそれに該当するものというと、江上波夫騎馬民族(征服)説辺りかねぇ。
 俺みたいな歴史好きにして受験で世界史選択したような人間からすると、テンプル騎士団(聖杯伝説で必ずと言っていい程登場)、コンスタンティヌス帝の勅令(ミラノ勅令=ローマ帝国キリスト教国教化)、ニケーア公会議(三位一体説の採用、だっけ?エフェソス公会議との区別がつかなくなってる)とか、教科書上だけの単語が実際に映像化されるという点だけでもなかなか楽しめたと思うし、前提知識があればより楽しめると実感した。例えばイエスの弟子(12使徒)ペテロのマグダラのマリアに対する反感(嫉妬?)なんて、ペテロが初代ローマ教皇と称されている事実を鑑みれば、作中の(ペテロの後継者たる)ローマ教会側のマグダラのマリアの子孫に対する攻撃の背景が意味深になってくる。キリスト教世界では常識なのかもしれないが、“外”の人間にはなかなか理解しにくい部分であったとも思う。(ちなみにローマ・カトリックの総本山、サン・ピエトロ大聖堂は殉教したペテロの墓の上に建立されている。卒業旅行で行ったけど、非キリスト教徒の人間でもその荘厳さが伝わってきた。)

 一方、1つの映画として見ると、原作を大分端折っているので、映画を観ただけではいまいち因果関係がはっきりしなかった。ジャン・レノ演じるオプス・デイ信者の警部とアリンガローサとの関係とか、サー・リーが巨大な教会組織に対して何故あそこまで暗躍出来たのか等等。原作ではその辺りが描かれているが、読んでいない人にとっては理解しにくかったんではないかと。あと1つ付け加えれば、シラスの“白さ”が思ったより普通だったな。原作読んだときはもっと不気味な外見だと思ったのだが。まぁ原作を読んでイメージが湧かず、理解に苦労した部分が映像化されるとすんなり頭に入ってきたのも事実だし、何より久し振りに映画を観に行った人間からすれば楽しめた。次は4年後とは言わず(苦笑)近々また他作品を観に行きたい。