読書記録

2冊ともふしぎ発見の元ネタ本。以降ネタバレ注意


1.西暦535年の大噴火
 6世紀半ばを境に世界中で従来の文明が衰退・崩壊し、それに代わって現在に至る新たな文明、国家が誕生したのは、突き詰めれば535年にインドネシアで起こった大噴火とそれに伴う気象変動でした、という話。


 ・・・という粗筋だけなら興味がそそられるのだが、各地域の説明が冗長、かつ中身にバラつきが有るので、読みながらかなり間延びした。しかもどうやら著者が言いたかったのは、今でもこの大噴火に匹敵するリスクを持つ火山は幾つも存在するから気を付けろという、現代社会への警告だったようで、最後にまた脱力。
 そんな中でも少し面白かったのは、日本についての章で、仏教伝来や蘇我氏×物部氏の争いと気象変動(とその原因である大噴火)との関連性に言及したのは世界史の大きな流れの中で日本を視る、という点において結構重要である。


2.1421年―中国が新大陸を発見した年―
 こっちの方が断然面白い。「1492」というおそらくコロンブスが主人公の歴史映画をツタヤで見た覚えがあるが、タイトルはこれを意識したのかもしれない。そのコロンブス以前に「何故か」アメリカ大陸や南極が描かれた地図がある事は以前から知られてきたが、大抵、年代鑑定の誤りや、誤解という説明に帰していた。それを元英海軍潜水艦長である著者が、船乗り、つまり海から陸地を眺める、という視点に立って検証した結果、それらの地図は明らかに実際の航海によって作成され、当時それが可能だったのは明の永楽帝治下の宝船艦隊(鄭和艦隊)以外有り得ない、という内容。↑と違って、基本的に艦隊の足跡を辿る叙述形式なので、読んでいて少しも飽きず、爽快感すらあった。買ってもいいかなと思ったくらいに。


 北米にはさらに数百年も前にバイキングが到達していたようだし、オーストラリアも東南アジアのすぐ南だから、もっと前にその存在ぐらいは知られてたんじゃないのかという気もする。ただ、こういう「歴史の通説を覆す新説」というのは、大概が
・「“超”古代文明
・「ユ■ヤの陰謀」
・「宇宙人」
のどれか、あるいはその全てが絡んで来て(笑)、その時点でかなり眉唾なんだが、あくまでコロンブスより70年早かった、というのが(すぐに1万年前とか出てくるトンデモ本とは違って)妙にリアルで、信じてもいいかなという気にさせてしまう。
 

 著者はその名も「1421」なるサイトを立ち上げて本書の資料や世界中から集まった情報を紹介しているので、それも視覚的なイメージを膨らますのに役立った。