2018シーズン展望(前編)

 不思議と2月に入り、スーパー杯、ACLと試合が始まると同時に時間の流れが一気に速まった気がする。気付けば2月も下旬で、リーグ開幕戦まで後3日。リーグ自体は明日開幕という中でマリノスの新シーズン展望を書いておきたい。去年の展望を読み返したが、優勝とまではいかないが5位以内は十分狙えるという予想とか、齋藤学が10番&キャプテンを同時に背負う事の危うさとか、我ながらなかなか先見の明があったなという事で(笑)、今年も前後編に分け、今日はサッカーそのものや補強などピッチとその周辺について、明日は経営面などピッチ外について。

 まず戦略面について思うのは、まず明確に志向するプレースタイルがあって、選手の獲得も放出もそれに沿って行われているのが覗えて、全体的に理に適った印象を受ける。一定のプレースタイルでスーパーではないが平均は上回るレベルにある選手を揃えれば、結果もそれに準じるというか、不確定要素を出来るだけ排除して一定の結果を得るという今のサッカービジネスの流れに乗っている感じ。(そう考えると唯一無二のプレースタイルを持つ(=代えの効かない)中村俊輔との衝突は必然だったとも言えるのだが。)齋藤、マルティノス、そして前田とサイドアタッカーのレギュラー、準レギュラークラスを放出する一方で後釜にユン・イルロク、大津と個で打開できるアタッカーを獲得するとか、マルティノスパク・ジョンスの放出時におそらくは獲得時以上の違約金を得ている辺りなどはそうした方針の表れ。選手を獲得する時点で既に数年後に放出する時の青写真、つまり

 獲得→選手の市場価値向上→放出する際は獲得時以上の違約金収入

というサイクルが出来上がっているんだろうな。
 そのような方針で利益を最大化するには、欲しいのは出来るだけ低コストでしかも年齢的に若く伸びしろのある選手という事になって、同時に予算の制約もある。若くてクラブでレギュラーでA代表にも声が掛かるようなクラスだと獲得コストもかさんで手が届かない。山中、松原、大津とこの2年で獲得した日本人選手が前所属クラブで控えだったり負傷明けだったりした(つまり市場価値がそれほど高くなかった)のは偶然では無いと思う。
 選手の獲得面を見てきたが、逆に契約満了となった選手にも同じ事が言える。中島賢星は昨季途中岐阜にレンタル移籍し、そのまま契約満了となったが(その後岐阜に完全移籍で加入)、3年間はルヴァン杯でチャンスも与えるし、そこで結果を出せなければレンタルに出して才能が開花するのを待つ。それでも結果を残せなければ・・・という事なんだろうな。そう考えると3年の間に結果を残さなければシビアに判断されるという事だから、今季FC東京にレンタルの富樫(大卒3年目)や、あまり目立った活躍もなく山口からレンタルバックした和田(ユースから昇格3年目)などは実はかなりの正念場だと思うが。

 と戦略を考察してきて、では今季の成績は、となるのだが、この前のPSMを観た感じでは正直昨季と同じ順位(5位)なら大成功だと思う。去年の開幕前の練習試合では相手がJ2だったという点を差し引いてもボールを後ろから前に運ぶ流れがスムーズで、能力以上に背伸びせず、かといって必要以上に慎重でもないバランスの良さも感じられたのだが、今年はそういう印象は受けなかった。サイドアタック主体なのは変わらない中で、去年までの速攻中心から今年は後ろから繋いでサイドに展開という遅攻が中心になっているが、相手の守備が揃っている中でそこからどう崩すのかがあまり見えてこないというか。GKと最終ラインは去年と変わらないし、サイドアタッカーもユンは期待通りのプレーを見せると思うが、中盤がなぁ。やはり上位チームには川崎の大島&E・ネット、鹿島のL・シルバ&三竿、C大阪の山口&ソウザのように攻守のバランスを取れるボランチがいる。昨季は6位だが磐田のムサエフ&田口もかなりの水準にあると思う。これらの選手達は守備で体を張り、ゴール前で点に絡み、勿論個々のボールタッチの技術も高い。この前だけで無く元日の天皇杯決勝を観ても感じたのだが、マリノスの中盤は守備、パスセンス、セットプレーのキック精度といったある一部の要素に特化した専門家ばかりで、それらを総合的に備えた選手がいない。この差は長いリーグ戦で違いとなって表れてくるのではないかなと。
 中盤以外にも繋ぐサッカーをするに適した人材が足りていないように思う。山中などはさすが柏ユースというべきか止めて蹴る技術がしっかりしているのだが、上位のチームはボールを受けてパスを出す動きがスムーズだし、例え頭でパスする場合であろうと、受け手がトラップしやすくヘディングするが、そうした目立たないが重要な部分でまだ差がある。トラップしてパスするまではコンマ何秒かという世界だが、そこでの百分の一秒単位でのロスが積み重なった先に相手にボールを奪われたりパスがカットされるシーンがある訳で。
 最終ラインも去年よりかなり高くなっているので、序盤はそのバランスを見極めるのに費やされて“結果を拾う”試合が続きそう。前回も書いたがセットプレーが一層重要だな。