振り返り

 まだ大会中だが、既に代表は帰国したことだし、6月の終わり、つまり1年の半分が終わったこのタイミングで今大会の戦いに付いて少し振り返ってみるのも良いかと思う。

 3戦を通して印象に残っているのは動きの重さ、目まぐるしく変わるスタメン、そして頻繁な試合途中の布陣変更。
 まず動きの重さだが特に最初の2戦は大雨に打たれたピッチと見るからに蒸し暑そうな気候と合わせて、足に重しでも付けたかのようなプレーだった。これまで見せてきたリズミカルなパス回しが消えてしまったが、大会の緊張と同時にあの大雨(とピッチへの影響)が結構予想外だったのではないかと思う。合宿地イトゥがほぼ晴れていたので、尚更試合開催地とのコンディションの落差が目立ってしまった。結果論ではあるが、合宿地と3つの試合会場の距離の遠さも含めて、南アほど合宿地の選定は上手くいかなかったか。南アに比してブラジルの国土の広さ(≒各地域の気候の違い)が予想以上だったと言えるのかもしれないが。アメリカ→ブラジルと結構コンディション調整は上手く行ってると思っていたのだが。

 2点目、3点目だが、国際大会を戦う上で同じ11人で戦い抜くのは有り得ず、戦術や怪我、累積、疲労などで試合毎にメンバーが変わる事はある。ただ今回は緒戦に敗れた故に状況を打開しようとCBとボランチ、そして前線と、川島と両SB、本田を除く全てのポジションで頻繁に選手が入れ替わった。元々メンバーを固定して連携を磨いてきた面はあるだけに、スタメンだけでなく、試合中も頻繁にメンバー、ポジションが変わるとそれを生かしにくくなる。1点目同様、それまでの長所を消す方向に繋がってしまった。

 メンバーについて言えば、攻撃陣における大久保の存在が起爆剤ではなく逆に作用してしまったかなと。これまで2列目に右から岡崎、本田、香川と並べてトップは柿谷、もしくは大迫という形に固まっていた中でトップも2列目も出来る大久保が入ってどんな構成にも(一応)対応できる反面、どれも中途半端に終わってしまった感がある。最終的には3戦通じて1トップに大迫、柿谷、大久保、岡崎が入れ替わり立ち替わり位置したのが象徴的。一方で大久保を入れたのはそういった連携面での不安をカバー出来るプレー、もっと言えば得点力を期待されての事だったと思うが、結果はノーゴール。「気合いを見せていた」とか「1人で打開しようとしていた」とかは関係なく、J得点王の実績や経験から言ってやはりこの選手に求められていたのは結果(ゴール)だった以上、期待外れではあった。ギリシャ戦で外したシーンもその状況が06年クロアチア戦の柳沢に酷似している以上、当時柳沢が受けたのと同レベルの批判は受けて然るべきだと思う。ちなみに言うと今回の招集に関して家族に関するエピソードと共に語られることが多かったが、自分が見ているのはあくまでピッチ上の動きだけなのでそういった要素ついては考慮しない。(そもそもそういった“感動秘話”の類はW杯代表に選ばれるほど精進した選手は皆持っているのではと思う。語られていないだけで。)これも結果論になってしまうが、連れて行くならば大久保ではなく同じフロンタの中村憲剛だったかもしれない。

 後、全体的に言えるのはW杯はやはり「相手の良さを消す」大会だったという事。以前から述べているが、コンフェデが「自分たちの良さを出し合う」大会で結果として打ち合いの試合が多い一方で、今大会はゴール数こそ多いが、4−3、3−2みたいな試合は少なく、どちらかがバランスを崩して大量失点するパターンが多い。(オランダ5−1スペイン、フランス5−2スイス、ブラジル4−1カメルーン、そしてコロンビア4−1日本など)この情報化の時代に対戦国の情報は細かい癖に至るまで研究し尽くした上での試合な訳で、相手を研究しつつ、自分らの得意なプレー、時間をいかに増やすかの鬩ぎ合い、これぞW杯の真髄というか醍醐味だと思う。その意味で今回の日本はそういった意識があまりなかったように思う。前回のサッカーがトラウマにでもなったかのようにそれを払拭すべく前に出て行って、そして散ってしまった―――そんな印象すら。

 ここで未来に目を向けると、86年組は次回大会まで代表かどうかは半々で90年組が主力になる事が期待される。特に山口は今回で完全にボランチの軸になった。思えば歴代五輪代表の守備的MFを見ると、アテネの今野→北京の細貝→ロンドンの山口と世代を経る毎に足元の技術、攻撃センスが増している。誰が監督になろうと選ばれる才能だと思う。これに柿谷、大迫、齋藤、酒井(宏)ら90年組に香川、清武、内田、吉田、そして86年組は西川、長友、岡崎が当分戦える。そして本田は―――少し休息すべきと思う。噂の病が本当なら尚更に。コートジボワール戦のゴール後の姿は久々に背中がゾクッとするような痺れるシーンだった。笑顔で無く、吠えながら突き進む姿に。代表でそんなゴールパフォーマンスは殆ど見た事が無い。強いて言えば日韓大会のベルギー戦鈴木隆行のゴールくらいか。7年半ほど前にこの選手を当blog年間最優秀若手選手に選んだ時に評した“あの左足と強烈な個性に次代の日本サッカーを牽引するエネルギーを感じた”印象は今でも変わっていない。ちなみに日本サッカーは10年に1人そういった選手を生んでいるとの説を自分は唱えているのだが(苦笑)、それによると現在17〜18歳の世代にいる事になるが、果たして。

 そうそうコロンビア戦後にドイツ大会との類似点を述べたが、ユニのデザインの良さも共通している(苦笑)まぁあくまで自分視点ではあるのだが。前回はいまいちだったが、06年も今年もデザイン的には少なくとも買っても良いかなと思わせるレベルだった(結局買ってないが)。ただユニはやはりその大会と深く結び付いてるので、どれ程洗練されていようがやはり結果が出ない大会のデザインは忌避される運命にある。やはり勝った大会のデザインがカッコよく見えるものだ。