出場・招集記録から当時を回顧する(ザッケローニ時代)後編

昨日に続き今日はザック時代の後半(2013~14年)を。
・13年も招集メンバーは前年から変わらずという状況だったが、2月のラトビア戦ではロンドン五輪で活躍した大津が代表デビュー。当時の記憶としてこの選手は女子人気が凄く、ボールに触れる度にスタンドから黄色い声が飛んでたのがTVからも聞こえてきた(笑)ただプレースタイルとしてあまり周囲と連携というより単騎で戦うタイプだけに代表では機能せず、翌月(親善試合カナダ戦、W杯予選ヨルダン戦)を最後に招集されなくなった。

・前年からその予兆を感じさせたピークアウトがより顕著になったのはこの年。上記のヨルダン戦では最終予選初黒星で、次のホーム豪州戦も結果的にW杯出場を決めはしたものの、終盤に本田のPKでどうにか追い付いての引分け。この頃からボールを保持する割に点が取れない、取れないうちに失点してそれをなかなか取り返せない状況に陥ることが増えていった。

日本vs豪州(2013.6.4)

直後のコンフェデもイタリアに点の取り合いで善戦(●3-4)したりもしたが結果は3戦全敗で、チームとしてのピークを過ぎているのは明らかだった。

・この頃のサッカーを振り返ると、香川、清武、乾らテクニカルな選手が狭いスペースをパスで崩そうとしてボールを相手に渡してカウンターを浴びるシーンが思い出される。もちろんパスが通れば美しいのだが、相手も警戒してスペースを埋めている中でそう簡単にはいかず、にもかかわらず同じ形に拘り続ける姿に限界を感じた。攻める割に点が取れない一因にもなっていたと思う。それだけではないが、やはりどんな良いチームも賞味期限は1年~1年半なんだろうなと痛感した時期だった。

・コンフェデの直後に国内組で臨んだ東アジアカップが開催されたが、そこで大量13名が代表デビュー。森重真人青山敏弘山口螢高萩洋次郎工藤壮人柿谷曜一朗齋藤学大迫勇也千葉和彦鈴木大輔扇原貴弘山田大記豊田陽平とロンドン世代から中堅世代まで幅広く、ここで2勝1分で優勝(しかもアウェイで韓国にも勝利)という結果も出したことにより、森重、青山、工藤、大迫、柿谷、齊藤、豊田は直後のウルグアイ戦でも招集され、工藤、豊田以外の5名はW杯にもエントリーされることになる。

・こうした新戦力の台頭によって少し風向きは変わり、8月~10月にかけてウルグアイ戦●2-4、セルビア戦●0-2、ベラルーシ戦●0-1と5戦で3敗したものの、11月の欧州遠征でオランダ戦△2-2、ベルギー戦○3-2と山口、森重、柿谷、大迫がスタメンを張るようになりチームに馴染むにつれて結果も出るようになった。ここから親善試合4戦全勝でW杯へ。

・W杯メンバーの選考だが、概ね予想通りの中で大久保のエントリーがサプライズだった。当時川崎移籍1年目でゴールを量産しており(この年26ゴールで得点王)、ザックとしては予選迄のチームを一旦壊して新しいチームを作る中で最後のテコ入れ、起爆剤として期待したんだろうなと。また予備登録メンバーにはそれまで未招集かつ候補合宿や予選の予備登録にも入ってなかった南野が入ったが、インタビュー等を見る限り最後まで本エントリーするか迷ったらしい。また落選メンバーでは原代行の時からボランチのバックアッパーとして代表の常連だった細貝の落選が驚きを持って伝えられたが、同等の守備力に加えて前に飛び出る推進力もあり、セレッソ育ちらしい技術の高さもあってスタメンも狙える山口の台頭に押し出された形だったのだろう。

・こうして臨んだW杯だが結果は1分2敗でGL敗退。キャンプ地の選定ミス(気候の影響によるコンディション不良、移動距離の長さ等)など原因は色々あるが、あまりに正攻法で臨み過ぎたし、またこのチームは香川と本田のチームであって13年以降の新戦力もチームの大枠を変えるには至らなかった、そして香川の不出来がチームの結果を決めた、というのが個人的な感想。
2006ドイツW杯に続いてW杯で攻撃的に振る舞おうとして足下をすくわれた形だが、3試合の流れも06年とよく似てるんだよな。

初戦:前半先制、後半に逆転され敗北
2戦目:欧州勢と引分け
3戦目:南米勢に●1-4

06年も中村俊輔の出来が結果を決めたのも似ているかな。

・W杯なんて相手を徹底的に研究して時には自分達のサッカーを変えてまで強みを消しにかかるのに、その点であまりに無防備だった。大会直前に対戦し3-1で勝利したコスタリカはこの結果を受けて守備を整備し、そしてイタリア、イングランドウルグアイの死の組を勝ち抜いてベスト8。これはまさに南アW杯前の日本と同じ展開だが、そうした強かさにも欠けていたなと。就任当初はチャレンジしていた343をオプションとしてものにしていれば面白かったかもしれないが、いつの間にか止めてしまったし、その意味でも好きな形に拘りすぎた感はある。

・最後は残念だったが、ザッケローニその人は好人物で今も定期的に日本サッカーに好意的な発言もしてくれるし、数年前に一度都内某所でばったり出くわした時も写真をお願いしたら気さくに応じてくれた(笑)それだけにこの結末は苦くもあるのだが。

・W杯がああいう形で終わったものの、香川25歳、本田、岡崎、長友も28歳とまだ十分活躍出来る年齢で、それだけに後任監督は新しいチームをどう作るのか難しい判断を迫られる事になる。