U17

 吉武監督のチームを最初に見たのは前回2011年大会のGLフランス戦だった。緒戦はジャマイカに1−0で勝ったとは言うが、2001年大会がアメリカに勝った後でナイジェリア、フランスに力の差を見せ付けられて大敗してたのもあって、この年代は体格差が大きいから2点差以内に収まればぐらいに思っていた。が、先制された後も落ち着いてフランス相手にボールを回して回して最後にPKを取って追い付いた試合を見て、何か今までの日本とは違うものを感じた。パスを回すのは同じなんだが、パスが足元だけ、スペースだけ、に陥らないバランスの良さとか、常にパスコースを作る動きの質だとか、個人なら次の動作を意識したトラップだとか、口で言うのは簡単だが実践するには難しい事を事も無げに披露しているのが衝撃的だった。
 その大会では24カ国参加になってから初のベスト8入りしたのだが、今回のチームはよりこの監督の理想に忠実というか、さらに純化された印象。前回は高さのあるCB(岩波、植田)、身体能力の高いアタッカー(鈴木武蔵)という選手もいたのだが、今回はそういった選手はおらず、CBも170cm台で飛び抜けて速い選手もいない。だがあのサッカー。これで緒戦から8人入れ替えてるんだから恐れ入るわ。ちなみにこの監督は大会で出来る限り多くの選手を起用する人で、前回大会と去年のU16アジアユース(今大会の予選)では第3GK含めた全選手を試合に出してる。
 色々言葉を重ねるよりシンプルに数字をば。これまで日本が出場したU17W杯の成績一覧

年/開催国/監督/成績 下段※印は主なメンバー
1993日本     (小嶺):4戦1勝1分2敗3得点4失点→ベスト8(16チーム)
 ※中田、松田、宮本、戸田、財前
1995エクアドル  (石橋):3戦1勝1分1敗2得点2失点→GL敗退 (16チーム)
 ※小野、高原、稲本、新井場、酒井(友)
2001トリニダードトバゴ(田嶋):3戦1勝 2敗2得点9失点→GL敗退(16チーム)
 ※菊池、成岡、矢野、藤本、阿部(祐)
2007韓国     (城福):3戦1勝 2敗4得点6失点→GL敗退(24チーム)
 ※柿谷、齋藤、鈴木(大)、米本、山田(直)、金井、水沼
2009ナイジェリア (池内):3戦 3敗5得点9失点→GL敗退(24チーム)
 ※宇佐美、柴崎、宮市、杉本、高木、宮吉
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1993-2009計13戦4勝2分10敗16得点30失点

2011メキシコ (吉武):5戦3勝1分1敗13得点5失点→ベスト8(24チーム)
 ※南野、鈴木(武)、石毛、川口、岩波
2013UAE (吉武):2戦2勝    4得点1失点→GL1位(2戦終了時)
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計7戦5勝1分1敗17得点6失点       

現時点で過去日本が出た5大会の勝利数と得点数を上回っている。

 こういうサッカーがより上の年代でも、とは一瞬思ってしまうが、この人はサッカー指導者であると同時に教育者の側面もあって(元々は大分の中学校の数学教師。80年代後半に永井秀樹、三浦アツを育てた。)、JFAのHPに載っている大会期間中の様子を見ると、毎日の様に映画やドキュメンタリーを鑑賞して選手らに何かを感じとらせたり、「サッカー監督が実は教師」と言うよりも『先生は実はサッカーの監督』と言った方が良い程。それにこの人は本番(アジアユース、U17W杯)ではしっかり結果を残すが、それ以外の親善試合はテストに徹する人で、前回も今回も直前数カ月の大概試合は大きく負け越している。U19〜U20ならまだしもそれ以上の年代でそれをやったら外野の声が五月蠅くなってチーム作り所ではなくなるかもしれない。丁度A代表がそうであるように。だからまさにこの年代が一番合ってるのだろうと思う。
 組分けの運も有ると思うが是非ベスト4以上を。