年間表彰2018(後編)

 今日はMVPを発表。気が付けば09年に投票制を導入して今年で10年目になった。よく10年も続けたなと思うが、何だかんだ集計したり投票者の友人たちの選考やコメントを読むのが楽しいってのはある。後はこの選考を始めたきっかけにも通じるが、日本にはプロリーグの表彰はあっても協会主催の国内外の日本人選手対象の表彰は無いので、代わりにそれをやっているという自負もあるかな(笑)今年も39人に協力して貰ったのには感謝に堪えない。選考に際してコメントを書いてくれた場合、少なくとも一度は引用させて貰った。

【選考方法】
いつもと同じくベスト5を選んで貰い1位:5pt〜5位:1ptでポイント化してその総合計で選出。仮にポイントが並んだ場合は1位票の多い方が上位、それでも並んだ場合は以下2位→3位・・・5位票の大小で決定。順位票すらも並んだ場合は両者同順位とする。なおこのルールはベスト5のみ適用し、6位以下でポイントが同じ場合は全て同順位と扱う。
【過去の受賞者】

それでは5位から発表。例年通り選考者コメントを太字で表記。なお所属は2018年に在籍したクラブ
第5位
中島翔哉ポルティモネンセ):47pt
代表の新10番が5位。「ボールを貰う位置、トラップからのシュートまでの一連の流れを見るだけで、代表戦に行く価値があると思わせる選手」だが、常に笑顔で「『サッカー楽しい』とコーナーフラッグでリフティングしちゃう純朴さ」を見せるなど「ひたすらに真面目にとも、とにかく自信を持ってとも、違う。サッカーへの対し方がこれまでの日本人選手とは全く違う」「香川の後釜10番を任せられる」選手。
この選手は南野、堂安と並び称されることが多いが、今回の投票では他の2人を大きく引き離した。やはり「W杯前あたりからワクワクさせてくれる選手」で、「ポルトガルで年間通して活躍」したというのが大きかったか。新しい代表の中心として、年明けにまずアジアカップがあるが「南野、堂安との化学反応」かつ「来年は森保ジャパンの2列目トリオが(この投票の)1~3位を占めることを期待する」。

第4位
本田圭佑パチューカメルボルン・V):49pt
ロシアW杯での活躍、オーストラリアでの活躍、カンボジアでのチャレンジと、日本サッカー界に与えた影響は絶大」な「ケイスケホンダ」が4位。「セネガル戦の同点ゴールは鳥肌」物で、ベンチスタートが多くなっても「W杯三大会得点」し、「なんだかんだで活躍」するあの勝負強さは一体何なのか。「改めてメンタルの強さと運を引き寄せる力、それを支える努力を感じた」。「ベルギー戦の最後のコーナーはショートで良かったと思うが」、そのコーナーを取ったのは本田の無回転ミドルをクルトワがセーブしたからなのだが、キックの軌道が南アで決めたFKに少し似ていて、もう少し軌道に高低差があってクルトワの手前で落ちていればもしかしたら・・・

第3位
家長昭博(川崎):50pt
連覇の原動力」である今季のJリーグMVPが3位。「アシストやゴールという目立つ活躍はしてないですけど」、「アシストやアシスト・チャンスにつながる1つ前のプレーがとても多かった」という声があったように、この選手はJリーグアウォーズのMVP受賞スピーチでも自ら「平々凡々な成績」と言ったようにゴール、アシストで突出した数字を出した訳では無いのだが、試合中のさり気ないプレーや判断のセンスがずば抜けてる。「実際にプレーを見たのは夏休み広島戦アウェーだけだが、1人違う次元のプレーをしていた」らしい。あまりに平然とプレーするから何気なく見てしまうが、その数秒後に「実は今のプレー相当レベル高いんでは?」と気付いて背筋がゾクっとするような、そんな選手。そういう意味ではイニエスタに近いかな。「長く天才と言われ、このランキングに入れることができるチャンスは今年しかないかもれない」。そうそうアウォーズでサプライズのビデオメッセージがあったように、この選手と本田は全く同じ生年月日、同じレフティ、同じガンバジュニアユースという不思議な縁のある関係だが、今回の投票で本田49pt、家長50ptだったのはちょっと驚いたな。可能性としてはもうチャリティマッチなどになるかもしれないがまた2人が共演する試合を見てみたい。

第2位
大迫勇也(ケルン→ブレーメン):71pt
今年のこの選手はやはりまず「やっぱり流行語だし」「半端なかった!」「ハンパない!」「やっぱり半端なかった」「ハンパないっす。」というあのコロンビア戦のゴールが思い出されるが、忘れがちだが「W杯でまた夢が見られたのはあのPK奪取から」。また「ワールドカップでの活躍、そして新生日本代表の攻撃力を支えているのは紛れもなく大迫」、「森保ジャパンの2列目トリオが躍動できるのもこの人が最前線にいるから」という声があったように最前線の選手でありながら「周りを活かし、自分も活きるプレー」で、「日本に他に1トップを任せられる選手はいない」。あのポストプレーはもはや芸術の域。一方で簡単なシュートを外したり、「ブレーメンでは前線のマルチプレーヤーとして苦労している」。「もっとゴールへの貪欲さを見せて欲しい」という声もあった。

2018年日本最優秀選手
乾貴士(エイバル→ベティス):81pt

 今年のMVPはこの選手。やはりロシアW杯のインパクトは巨大で、「何といってもW杯での2得点が忘れられない!」、「W杯での2ゴール興奮した!」、「ワールドカップでのゴールは痺れた!」、「ベルギー戦のミドルが今年1番のハイライト」、「セネガル戦の同点ゴールは目の前でシビれた」という活躍により「我々を心の底から熱狂させ」、「W杯盛り上がったのは、やっぱりこの人の影響が大きい」。またプレー面では「小さくてもスピードとテクニックで通用することが証明された」、「時間を作るボールの持ち方は世界レベル」、「森保ジャパンで活躍する若手にとっても刺激になったんじゃないかな」というコメントもある一方で「10月にスペインで試合を観たときベンチ近くから挨拶してくれたので個人的な加点を含む」、「少年みたいな笑顔と、トーク力も評価したい」という評価要素もあったらしい(笑)
この選手はザック時代から代表には継続して選ばれていたけど、当時は同じセレッソ勢の香川や清武ほど存在感を示せずブラジルW杯も最終選考に漏れた。実は既に30歳だし「ようやく日の目を見た」選手。またW杯後は「ベティスでフィットできていないのが残念」だし、やはり「波の大きい選手」でもあるかな。MVPが81ptというのは投票人数が30人以上になってからの最少で、それはやはりクラブでのプレーがマイナス要素になって票が分散したのだろうと思うが、他の選手との比較の中で最終的にW杯のインパクトが評価されたということか。

6位以下は下記の通り。
選手名の青は監督、チーム名の赤は海外クラブ緑はJ2青はJ3橙はその他カテゴリ

以下雑感を箇条書きに。
・GKではやはり川口に票が集まった。「サッカー界のGKの歴史を変えた人」であり「楢﨑とともに日本のゴールキーパーの地位を上げたのは間違いなくこの人」。丁度自分を含め選考者はアトランタ五輪、人によっては清商の頃から活躍を見てきた世代だけに「マイアミの奇跡、アジア杯のヨルダン戦など数々のシーンが鮮明に思い浮かぶ」。「(マイアミの)あの勝利は運と川口のおかげ」。代表スタッフになるという報道もあったが「次の川口を育てて欲しい」。「今までの感謝を込めて」、「我々の青春よ、お疲れ様」、「後にも先にもあなた以上に気迫のこもったプレーをする選手はいないと思ってます。お疲れ様でした」。最終戦後のセレモニーで楢﨑が花束を持って登場したシーンは胸が熱くなったな。ちなみに今回楢﨑に1pt入っているのは「ヨシカツ引退試合のサプライズ」ただそれだけの理由らしい(笑)この人も今季出場無かったが来季どうするのだろうか。その他GKは飯倉、権田、川島が得票。飯倉は「Jリーグで他に類をみない戦術を可能にしたのは彼のポテンシャルがあってこそ」。今季序盤は飯倉チャレンジを何度も食らったが、中盤以降はラインの高さを調整し、失点は激減した。権田はJに復帰して安定感がかつてと見違えるようだった。代表正GKは今は東口かもしれないが、来年もしかしたら序列は変わるかもしれない。川島はW杯でかなり批判されたが、「批判を跳ね返すポーランド戦での活躍。もし0-2で負けていたら決勝T進出は無かった」。パンチングでの処理に難があるのは事実だがベルギーの強豪S・リエージュでのレギュラーGKという実績は川口、楢﨑も到達できなかった高みだし、その実績は色褪せ無い。

・中島の項でも述べたが、南野は7pt、堂安は13ptとそれほど得票は伸びなかった。2人ともクラブでも安定して活躍しているし、堂安は「21歳以下バロンドール最終候補に選ばれて」もいたが、オーストリアとオランダという報道量がそれほど多くないリーグなのと「W杯後に台頭した選手」という印象が強い故かな。「今後のさらなる活躍を期待

・選手以外では監督が3人得票。1人は別枠と言えるが・・・
西野「ポーランド戦でのスーパー采配。良いか悪いか別として、監督としてのタクトをブレずにふれる手腕に脱帽。
宮本「ガンバを立て直したことだけでなく、相変わらずのそのイケメンぶりに心を奪われました。
加藤「残留がかかる崖っぷちのなか、某掲示板における、残り全部勝とう!!が残り全部加藤...。の書き込みが今シーズンNo1
柏はアウェイ広島戦で強風を上手く利用して勝って神風とか言われてたけど、アウェイで首位に勝っちゃったから結果的に解任が遅れたよなぁ。よく「先を見過ぎず目の前の試合に集中」とか言うが、この場合は目先の勝利に惑わされた形。

・最年少得票者は去年に続いて久保(2001年生まれ)なのだが、今年は2000年以降に生まれた選手としては2人目の中村敬斗(2000年生まれ)が得票。
久保「子育て世代の期待の星、サッカー界の『国民の息子』と、呼びたい。笑 横浜でどんどん出場してほしい!
中村「他所から来て18歳でガンバでゴールを決めるのは、只者ではない。
中村は三菱養和出身だけど、ここも永井雄一郎田中順也と10年に一人くらい代表を狙えるアタッカーを輩出する。

・J2、J3勢では川口や相変わらず根強い人気のカズの他はヴェルディ松本山雅とJ2上位の選手が挙がった中で山口のオナイウが得票した。「どの所属チームでも結果を残せなかったが、今年の山口ではゴールという結果を残したことを評価。来年から大分みたいなので、J1でどれだけ点を取れるかも注目。」またJ3ではこの投票で播戸が今琉球にいることを知ったのだが(笑)、鹿児島の中原は知らなかったのでどんな選手かと思ったら「鹿児島ユナイテッドFCの昇格を決めたゴール」の選手とのこと。

・今回得票が無かった有力選手の中では、酒井宏樹に票が入らなかったのは意外だった。あれだけ叩かれた川島ですら票が入っている中でW杯の主力では唯一の得票0。自分も入れてないので偉そうなことは言えないが、所属クラブの格と出場状況を考えたらここ数年の欧州組で一二を争う安定感だと思う。代表にも絶対欠かせない選手。

・プレーの安定感で酒井と双璧なのが長谷部。クラブでリベロや中盤で守備を統率してDFBカップ優勝とヨーロッパリーグ出場を勝ち取った。余談だがブンデスバイエルンドルトムントに所属せずにリーグとカップ両方優勝したのは現役ではこの選手だけなんじゃないかと思う。ヴォルフスブルクでリーグ優勝、浦和でも国内タイトルとACLを総ナメにしたし、実はかなりタイトル運のある選手。また引退した代表でのラストマッチは「ルカクのスルーに長谷部の脚がもし届いていれば。。。」という最後だったが、直前の監督交代の中チームをまとめた「不動のキャプテン」、「偉大なるキャプテン」。長期に渡ってチームの軸となる主将を持てたのは日本にとって幸運だった。腕章を巻くだけなく、本当の意味でその地位を引き継ぐのは誰だろうか。

・毎回この投票では独自の選考をしてくれる人が多いのだが、都倉に票を入れたのが3人いたのはさすがに驚いた。サポートするチームの選手に票を入れるというのはあるが、選考者にコンササポはいないし、初めてJ1で二桁ゴールを決めて札幌の4位に貢献したという実績はあれど、得点ランク上位の小林、興梠より得票するとは。投票者コメント「札幌の躍進の象徴。SNSでの広報活動も献身的」とのこと。来季はセレッソでどうか。

・ベスト5に入らない次点の選手、特別枠、番外編もいくつかあった。ここでは書けない人や内容が多いんだが(笑)書ける人だけ。
神戸の三木谷オーナー「目先のチームも見る価値あるが、10年後に育成の花が開くのかどうか
ポドルスキイニエスタを取る以前からヴィッセルは寮を整備したり育成にも力を入れているが、小川や岩波は移籍してしまったし、なかなかトップチームで主力となって代表に入るレベルの選手は生み出せていない。U21代表の右SB藤谷、U19代表のDF小林らがどこまで伸びるか。

という感じで今年もまた興味深い投票となった。投票が集まりだした序盤は川口に票が集まっていて、勿論結果は尊重するが、お疲れ様票だけでベスト5に入るのはどうかなと個人的に思っていた中で、6位という絶妙さ。上で述べた本田と家長の得票数もそうだし、神の見えざる手、いや色々なサッカー観を持つ人が集まった集合知とでも言うか、いつもこの投票はこういう絶妙な結果になるし、だから面白いので止められない(笑)
来年は早々にアジアカップなので、2019年の投票がアジアカップ関連で埋まるのを願いつつ、年を越したい。