年間表彰2020(後)

 今日は後編、かつメインである年間MVPの発表を。今年も多くの友人達に強力して貰いました。感謝。

【選考方法】
各投票者にはベスト5を選んで貰い、1位:5pt〜5位:1ptでポイント化してその総合計で選出。仮にポイントが並んだ場合は1位票の多い方が上位、それでも並んだ場合は以下2位→3位・・・5位票の大小で決定。順位票すらも並んだ場合は両者同順位とする。なおこのルールはベスト5のみ適用し、6位以下でポイントが同じ場合は全て同順位と扱う。

【過去の受賞者】
※クリック/タップして拡大

それでは5位から発表。例年通り選考者コメントを太字で表記。なお所属は2020年に在籍したクラブ
第5位
鎌田 大地(フランクフルト):22pt
 5位は鎌田。「今シーズンフランクフルトの攻撃陣を牽引してると言ってもいい活躍」で、「得点アシスト共に出来る素晴らしいプレーヤー」。日本の2列目にしては長身なのだが、フィジカルを活かしたダイナミックなプレーというよりは小技やボールキープも出来るという今までの日本にあまりいないタイプ。「個人的に懐の深いトラップやドリブルが好み」というコメントもあった。「安定感が出てきて、バランスも良く、これからが楽しみ」な逸材なのは間違いが、性格は変わり者というか、監督から100%の信頼を得て初めて機能するタイプのようにも見えるので今年は代表でも輝くのを期待したい。

第4位
冨安 健洋(ボローニャ):35pt
 去年に続いて4位は冨安。とにかく「安定感抜群。セリエでDFでレギュラー取れるのは凄すぎる」し、そもそも「セリエで出続けるのも大変」、そして「とても22歳とは思えない落ち着きに驚くばかり」。日本は約10年周期で軸となるCBが現れるが、丁度10歳年上の吉田麻也は10年前はエール・ディビジにはいたが、クラブでも代表でもやっとポジションを掴み始めたという時期。その意味で冨安は麻也より1年~1年半ほど早いタイミングでクラブのステップアップや代表でのレギュラー獲りを果たしたと言えるかな。
 去年のコメントで、もっと点が取れるようになれば言うこと無しと書いたのだが、最近はセリエAにも慣れたのか徐々に点にも絡み始め、頭だけで無く右サイドをオーバーラップして決めた「アタランタ戦でのゴールはDFとは思えないセンスを感じた。」果たしてどの領域まで達することが出来るのだろうか。麻也がサウサンプトンに行ったから、それ以上(四大リーグ欧州カップ常連チーム)は行けると思ってるのだが。

第3位
遠藤 航(シュトゥットガルト):55pt
 3位は今やブンデス有数のZweikampf(1対1)強者である遠藤。「一対一の強さが際立ってて安心感がある」、「いつからこんなに対人強い選手になった?」という声と共に「浦和時代はとにかく守備のイメージしかなかったけど、縦のパスや仕掛けなど攻撃の面が凄く上達した」という声もあり、つまりは日本にいた頃とは攻守両面で数段グレードアップしてるということなのだろう。自分の中では浦和時代はどちらかというと守備面より3バックの中央からの正確なフィードが印象に残っている。クラブでの活躍はハイライト動画中心でフルで見る機会はなかなか無い中で、秋の代表戦でアフリカの選手にも対人で引けを取らず、脚を伸ばしてボールを取り切る守備を見たときは衝撃だった。「デュエルできるアンカーがいる安心感て素敵」。まさに長谷部の後継者。代表でもこのポジションはこれまで他に橋本、守田、三竿等が呼ばれてきたが、現時点では頭一つ抜けているかなと。

第2位
中村 憲剛(川崎):86pt
 2位は再び川崎勢ということで。この選手に関しては「フロンターレ一筋で最終年にタイトル2つの有終の美を飾れたのがすごい」とこれに全てが集約されているのだが、「リスペクトしかない。シーズン通して活躍したわけではないけど、大怪我からの復活、インパクトあるゴールなど、理屈ではなく1位にしました。」。実績そのものはリーグ戦13試合2ゴール、カップ戦と合わせても14試合2ゴールという数字だが、その2ゴールは「復帰戦ゴールに引退発表前ゴール、そしてシャーレ奪還。これ以上ない引き際で、持っているにも程がある」。
 この選手はプレー以外、というかそれ以上に「川崎を支え、名門に育ててくれた真の旗頭」という側面がある。J2時代からチームを牽引し、昇格後は代表入りやW杯出場を果たすと共にチームもJ1の強豪となるなど、無名の存在から国内屈指の存在に成長したという意味でこの約15年で急成長した川崎を象徴する選手でもあるんだな。長らくシルバーコレクターに甘んじてきた中で現役最後の5年間でリーグ(3回)、天皇杯ルヴァン杯、スーパー杯と国内タイトルを全て制覇しての引退はこれ以上無い完璧な幕引き。今後は指導者を目指すというが、言語化能力というかサッカーを言葉にする点においても屈指の存在なので「サッカー以外でもきっと活躍できる。セカンドキャリアに期待しています」。
 最後に惜別のコメントを。「長い間フロンターレ生活お疲れ様でした!素敵なプレーをありがとう!」、「あの大怪我から復活しただけでも凄い。お疲れさまでした。」「自分のサッカーにおける14はクライフではなく、中村憲剛」、「引退さみしいです」、「お疲れ様のメッセージも込めて...この年代がどんどん引退はやはりさみしい...

2020年日本最優秀選手
三笘 薫(川崎):87pt

 今年の当blog選定、日本の年間最優秀選手は川崎の三笘となりました。それにしても1pt差とは。1位票の数は中村憲剛の11票に対して8票と下回ったのだが、票を投じた人の数は40名中25名と最多で、憲剛の23名を上回った。去年の仲川に続いてA代表未経験の選手が受賞。
 受賞理由は「大卒でのあのパフォーマンスはすごい。2桁得点2桁アシスト!すごい」もうこれに尽きるんだが(笑)、「からしたらこんなに嫌な選手はいない。後半疲れてきたときに出てくるとか最悪」かつ「ドリブルが得意なウイングにありがちな独りよがりのプレーは少なく、アシストも多い視野の広さとオフザボールの動きもいい」。また「彼の“ヌルヌルドリブル”はサッカー少年たちに与えた影響は大きい」と様々な立場からの分析、コメントが寄せられた。あのボールを保持するフロンターレで完璧に機能するドリブラーというだけでこの選手の価値が分かる。個人的にはやや得点ペースが落ちたシーズン終盤のプレーが印象深い。ドリブルで1人、2人抜くのはもう当たり前で、相手は「それでも最後の一線は死守」とゴール前で人数掛けてどうにか凌ぐ状態であり、逆に相手にとってどれほど脅威なのかが露わになっていたなと。
 天皇杯でも決勝ゴールを決めたし、次は「海外でどのくらい通じるか、代表でも見てみたい!」となるのは必然だし、新シーズンもこの勢いならば確実に代表入りするだろう。「どう成長していくのか楽しみ。

全順位は以下の画像を参照。(クリック/タップして拡大)

以下雑感を箇条書きに。
・6位は5位と1pt差で家長。「テクニックあってフィジカルモンスター」、「この人がボールを持ったときの怖さは計り知れない。」「憎たらしい位にボールキープに余裕があって、ボールを失わない。」、「家長がタメるからこそのフロンターレの攻撃サッカー」という圧倒的なボールキープからの攻撃センスで優勝に貢献。18年にリーグMVP獲った後去年はリーグでノーゴールとさすがに年齢的な衰えが出始めたのかな、と思いきや34歳となる20年シーズンはリーグで二桁ゴール。某氏からは「言っておくが家長復活のきっかけを作ったのはセレッソ。家長乾清武のセットは強烈だった」というコメントもあったが笑、川崎で憲剛や大島らとプレーしているのを見ても、周りのレベルが高いと更に上手さが引き立つ選手ではあるな。
・・・と6位なのにやたらコメント引用が多いのは最後の最後まで投票5位をキープしてたのでそれを見越して書いていたからです(笑)ちなみに川崎勢は合計10名が得票。これにダミアン、鄭成龍ら外国人選手もいる訳だからまぁ層の厚さを実感する。

・この投票の常連であるカズは7位。「J1最年長出場記録を53歳6ヶ月28日はすごい」、「最年長出場記録!出来ればゴール欲しかった」ここまで来ると、完璧に節制したら人は何歳までアスリートとして動けるのかという究極の実験と言えなくもない。

・これも恒例?の鬼武(品川CC)への票「感謝も込めて」、「品川のキングもよく走った!!よくゴール決めた!!あのメンバーの中でよく戦った!!」ふと思ったが左サイドから仕掛けて点に絡むプレーは三笘っぽいような・・(笑)

・投票者に割とマリノスサポ多めということもあり(笑)、毎年一定の票が入るのだが、昨季は無冠が影響してか票は少なめ。その中で最多は水沼だった。「試合数が大きく本調子じゃない選手がいる中でもバランス良かったと思う」。突破力がある訳では無いので、開幕前は正直チームにフィットするか疑問だったが、相手の対策もあって前年ほどサイドを深くエグれない中で、周囲と連携して右サイドやや浅い位置からのクロスマシン、アシスト役として貴重な存在だった。

・今年は例年にも増して引退選手への票が多かった。憲剛以外にも
内田篤人(鹿島)
静岡県民、同世代、地元の誇りです!長い間お疲れ様でした!
増嶋竜也(千葉)
85世代のスター!!引退なんて寂しすぎます
徳永悠平(長崎)
まだ現役を続けていたのですね。お疲れ様でした。
他に佐藤寿人など年齢的にアテネ世代が引退していくのは分かるとして、北京世代もそういう歳かとしみじみと。やはり同世代が引退すると色々感じるものはあるのだな。

・J2最多票かつ最年少得票はヴェルディ藤田譲瑠チマ(東京Vの9pt。「昨年のシーズン途中から2種登録でデビューし、今シーズン開幕戦からスタメン抜擢。成長曲線があったなら、この選手の上がり幅は計り知れないくらいの上がり幅。シーズン終盤にはパス捌きの判断の早さ、縦パスの入れ方など全てにおいて素晴らしかった。」、「若手ではないクレバーなプレーが多数。
2002年(!)生まれで昨季はリーグ戦で1試合欠場しただけの41試合出場。ヴェルディも途切れなく選手を輩出するよなぁ。特に中盤で。

・毎年、意外な選手、Jで実績を残した燻し銀的選手が複数人から得票するのだが、今年は江坂(柏)が3名、坂元(C大阪岩尾(徳島)稲垣(名古屋)が2名から票を得た。江坂は「パスを上手く受けることができ、そこからドリブル、パス、シュートのどれを選択するかの判断が早くて正確」「欧州型のオフェンシブハーフを彷彿とさせるテクニックと前への推進力そして華がある」。上手いけどゴール&アシストは少ないというMFは多いが、この選手は試合で持てる技術をしっかり数字に反映することが出来る。こういうタイプがチームにいると強いよなぁ。理想の「代表に届かない程度の10番」という点も含めて他に名古屋の阿部浩之も似たものを感じている。だが「オルンガの得点王&MVPは彼の貢献無しには語れない」。
 坂元は「必殺の切り返しは1vs1なら絶対負けない」右サイドからの仕掛けが印象深い。見ていて気持ちよいくらいにDFは切り返しに引っ掛かり、マリノスもリーグ戦でかなりやられた。
 岩尾は「湘南時代はこれといった印象がなかったが、徳島に入ってからは、献身的な運動量、パス出しで中核をなし、コロナ禍のシーズンをキャプテン・フルスタメンで乗り越えた」。稲垣は何故かまだ甲府のイメージがあるのだが(広島を経て昨年名古屋加入)、「グランパスの堅守を支えたダイナモ」であり、「試合終盤になっても衰えないスタミナ」を持ち「ボールを刈り取れる」「まさに潰し屋」。「米本とのボランチは脅威」。奇しくも岩尾と稲垣は共に日体大出身。

・恒例?の選手以外への票も幾つか。
 影山優佳(日向坂46)
 「家族で「おひさま」(日向坂46のファンの総称)を自称している我が家だが、贔屓目なしで下手なサッカー評論家より、よっぽど見る目があるサッカーファンであり、表現力も高い」。ブログで全国のJチームを北から紹介しているのがサッカーサイトで紹介されていて、初回札幌に続く2回目は仙台と思いきやJ3八戸だったのはなかなか衝撃的だった。サカダイか何かのインタビューでもバクスタ2階から俯瞰して見るのが好きとか語っていて、あ、これはガチだと思った記憶。
 本並健治(サッカー解説者)
 結婚ご祝儀票と言うべきだろうか。選考者のコメントもシンプルに「結婚相手がすごい」(笑)

・毎年ベスト5以外に選考対象外(主にJの外国人選手)の選手を書いてくれる人が多く、今年はオルンガの名が多かったのだが、それ以外では某氏よりサッカーチームに入っている自分の息子達の名が(笑)名前は控えるが長男君は「チームでサブキャプテンとしてまとめ役、守備の安定に貢献」、次男君は「ゲームキャプテン、エースストライカーとして活躍。直接フリーキックを決めたときは、見ている大人をどよめかせていた」らしい。仲間内のフットサルでも段々親子参加が増え始めてるけど、その内子供たちのプレーに親が付いていけなくなるんだろうな。

・最後に、2020年はコロナ禍による異例のシーズンだった訳だが、その中でJリーグ完走に尽力したすべての方々に5pt。「今年はこういうことで良いんじゃないですかねえ。日程をやりくりしながら、よく全試合消化したものだと思う。」途中クラスタ発生したチームもあった中で、常に最新の状況を踏まえて観客の有無や人数制限の設定、日程の組み替えを行い、同時にそれを逐次情報公開(時には原さんがYouTubeチャンネルで直接ライブ配信したりも)したのは素晴らしかった。


 去年の総評で「来年は東京五輪なのでU23世代が数多くランクインするのを願いつつ」などと書いたが、まさか五輪そのものが飛ぶ事態になるとは。その中でU23世代の三笘、冨安がベスト5に入ったのは純粋にクラブでの活躍だし、去年に続いて若い世代の台頭が続いているのは嬉しい。
 選考全般で言えば、遠くの海外組より近くの国内組というか、やはり見る機会の多い(地上波でも触れられる機会の多い)選手が票を集める傾向が増している気もしている。そういった点も含めてこの結果を後で振り返れば“2020年の日本サッカー”が把握できるものにはなっているはず。既に年が明け、首都圏はいきなり緊急事態宣言となってしまったが、21年は去年以上にスタジアムで観戦出来て、そして日本の選手が国内外で躍動する年になるのを願いつつ表彰を終えたい。