今年も残り2日ということで日本サッカー年間表彰をば。例年通りMVPは後編として明日発表予定で、今日はそれ以外の部門を。
■年間ベストマッチ
※過去の受賞試合
1位:韓国戦(○3-0/2021.3.25/親善試合@横浜)
試合の重要度では最終予選>親善試合だし、10月のW杯予選豪州戦と非常に迷った。豪州戦は確かに予選の転機になり得る価値はあったと思うが、内容的には勢いで押し切った面も否めず、ということで3月の日韓戦を。この試合は森保さんの下では18年ウルグアイ戦と並ぶベストマッチだと思う。韓国は孫興慜ら主力海外組はいなかったが、DFは元々国内組主体だったし、走力だけで技術や判断力が追い付いてない選手が目立った。かつてほどJに行く若手がいない影響もあるのだろう。育成を外注してきたツケというか。
この試合の遠藤航&守田のボランチコンビは守備強度は勿論、前線への走り込みやパスも含めて近年屈指のコンビになり得る期待があった。2人とも守備のイメージが強いが、遠藤は浦和時代はむしろ3バックの中央からの正確なフィードが売りだったし、守田も実はトラップ、パスの技術は非常に高い。それだけに最終予選序盤が悔やまれるが。
■年間ワーストマッチ
※過去の「受賞」試合
1位:オマーン戦(●0-1/2021.9.17/W杯最終予選@吹田)
今年の敗戦は2試合だが、ワーストはこの試合一択。どんな試合でも局面を切り取れば評価出来る点はあるものだし、新戦力の代表デビューなどプレー以外の評価要素もあったりするが、それすら見出し難い試合であった。監督の問題もあるとは思うが、前回の最終予選でも9月の初戦はホームで敗れており、欧州組が主体となった今、現地のシーズンが始まったばかりのこの月の試合は長距離移動の負荷を含めコンディション的に苦戦する構造的な問題があることが明らかになった。上記ベストマッチに選んだ韓国戦では国内からも多くの選手が初招集されて海外組と融合が図られ、それは6月の試合でも同様で、チームに刺激を与える意味で良い試みだなと思っていたところにこの試合はいつものメンバーで臨み、ご覧の有様という。
■年間ベストゴール
※過去の受賞ゴール
1位:田中碧(豪州戦先制点)
2位:浅野(U-24日本戦3点目)
3位:山根(韓国戦先制点)
4位:伊東(ベトナム戦先制点)
5位:稲垣(モンゴル戦14点目)
去年はゴール数が少なく(セットプレーからのヘッドとPKのみ)、選考しなかったので2年振りに表彰。試合の重要度やゴールに至る過程を考えると1位は豪州戦の先制ゴールかなと。サウジに敗れ追い込まれた中での布陣変更、その試合で前半で先制出来たのは本当に大きかった。埼スタまで観に行って開始には間に合わなかったが、着席して数分後にこのゴールを観れたというのも加点要素(笑)また左サイド南野からのクロスを後ろから飛び出した田中が受けて冷静に決めるというのも中盤3枚、3トップにした効果がよく出ていた。
2位以下は個人的に好きな形を中心に。2位はゴールそのものよりもカウンターであっという間に相手陣内に入った速さとスムーズな連携から。特に伊東純也がボールを持って相手に付かれながらもドリブルするかと思いきやオーバーラップした小川にパス、小川はフリーでクロスを上げることが出来た。伊東は今年重要なゴールも数多く決めているし、さすがベルギー強豪でレギュラー張るだけはあるプレーだったが、この状況判断の良さが欧州に行って最も伸びた点ではないかと思う。3位は山根にアシストした大迫のヒールパス込みで。山根もこの試合が代表デビューとは思えない積極的なプレーぶりだった。4位は2位と同じく縦に速い攻撃だが、この次のオマーン戦然り433にしてからクロスに逆サイドの選手が飛び込む場面が増えたなと。5位は正直10点ゲームのモンゴル、ミャンマー戦は相手の守備レベルの低さによるゴールが多かったとは思うが、稲垣の自身2点目のミドルは腰を上手く捻ってゴール上隅に入れたのが上手かったので選出。
■最優秀若手選手(U-20)
※対象は2001/1/1生まれ以降の選手
※過去の受賞者
1位:荒木 遼太郎(鹿島)
2位:久保 健英(ビジャレアル→マジョルカ)
3位:田中 聡(湘南)
海外でプレーし、五輪代表の実績もある久保と迷ったが、クラブではあまり輝いていない1年だったし、10代でJ1の試合に出るだけで無く二桁ゴール決めた価値を考慮して荒木を1位に。3位は湘南の田中で。今季はマリノス戦で春と秋の2試合観たが、春の試合では3バックの左、秋には中盤でプレーし、技術の正確さと判断の速さが印象的だった。遠藤航、齊藤未月と続く湘南アカデミー出身の中盤の系譜を継ぐ選手。直接海外か国内かは分からないが、近い将来ステップアップするはず。
ここ最近の若手海外移籍ラッシュを反映してか、20歳前後でJの試合に出る選手が増えており、選考も非常に迷った。他に中野(鳥栖)、松岡(鳥栖→清水)、藤田(徳島→来季マリノス)らもいるし、J2にも半田(山形)、植中(長崎)など主力として結果を出している選手が多数。この世代は来年本格始動するパリ五輪世代で、東京世代以上のタレント集団ではないかと思っているので期待している。過去の小野伸二、宇佐美貴史然り、1人突出したタレントがいる世代は全体的に層が厚い印象がある。突き抜けたタレントがいるから層が厚いのか、逆に層が厚い故にトップタレントのレベルも高いのか、どちらなのかという話でもあるが。その両方か。
■最優秀監督
※過去の受賞者
1位:長谷部(福岡)
2位:鬼木(川崎)
3位:伊藤(甲府)
4位:鈴木(磐田)
5位:松田(長崎)
例年通りこの部門の趣旨を述べると、タイトルを獲った監督だけでなく、手持ちの戦力に比べて好結果、内容を残した監督を評価する、というもの。鬼木氏は今季連覇を達成しただけでなく、主力の移籍や過密日程、または海外遠征から帰国後の隔離期間もありながら、終盤に再加速してマリノスを引き離した戦い振りは素晴らしかったが、今年は福岡を8位に導いて昇格のジンクスも破り、川崎に初黒星も付けた長谷部氏で。福岡は二桁ゴールの選手がいない中で決めるべき時決めて手堅く2-1、1-0で勝点を積んだ印象。
他にJ1日本人監督というと三浦アツ氏は確かにリーグ戦3位はクラブ史上最高成績だが、イニエスタ、ヴェルマーレン、S・サンペール、山口、酒井高徳がいて、古橋が移籍しても大迫と武藤を獲れるチームと言う点を考慮するとカップタイトルを1つくらい獲らないと割に合わない気が。また鹿島の相馬氏も4位とは言えあまり伸び代を感じさせない戦い振りだったが故の退任だったと思うし、9位FC東京長谷川氏、11位広島JFK氏も共に中位に停滞したまま途中退任という点で厳しかった。その他ルヴァン杯準優勝のセレッソ小菊氏、天皇杯準優勝の片野坂氏も、リーグ戦では小菊氏は5勝7敗、片野坂氏も18位降格ということで、上位5人は厳しいかなと。特に片野坂氏は天皇杯の記憶も新しいので非常に迷ったが・・。
ということで3位以降はJ2から選出。その中で甲府を昇格争いに絡む3位に引き上げた伊藤氏は戦力を考えれば優勝した磐田の鈴木氏以上なのではないかと。その伊藤氏は磐田に引き抜かれたので来季J1でどういうサッカーを見せてくれるのか楽しみ。
5位は長崎に途中就任して4位に導いた松田氏で。就任した13節以降はリーグ戦19勝7分4敗の勝点64。同期間(13~42節)で比較すると、これは磐田(勝点69)に次ぎ、京都(58)、甲府(61)を上回る。
こうして5人見てみると、前々から唱えている日本サッカー指導者3大集団
・マツダ~広島系統(森保、高木、小林、片野坂、松田、森山 等)
・住友金属~鹿島系統(鬼木、相馬、手倉森、関塚、石井、大岩 等)
・桐蔭学園OB李国秀門下生(長谷部、渡邉晋、森岡、戸田)
が1人ずつランクイン。この冬の監督、コーチの移籍を見ていると、上記に属さない人々、特に若い世代の指導者が徐々に台頭しているようにも。
後編は大晦日の正午頃に発表予定。