年間表彰2021(後編)

 昨日書いたように、本日は年間MVPを発表。例年通り自分を含め計40名の選考者により決定したが、今年は友人達に加えて某SNSのフォロワーさん達にもご協力頂いた。相互フォローしてる方々の中には様々なチームのサポだったり見識の深い方が多く、選考者になって貰えれば、この表彰の精度というか信頼性も更に上がるのではないかなと。この表彰は元々日本版のバロンドールをイメージして始めたものだが、本家バロンドールの方が近年怪しい選考が続く中で、これは正真正銘ガチであると同時に、私情やネタもありつつの絶妙なバランスの取れた選考になっていると思う。

【選考方法】
各投票者はベスト5選び、1位:5pt〜5位:1ptとポイント化してその総合計で選出。仮にポイントが並んだ場合は1位票の多い方が上位、それでも並んだ場合は以下2位→3位・・・5位票の大小で決定。順位票すらも並んだ場合は両者同順位とする。なおこのルールはベスト5のみ適用し、6位以下でポイントが同じ場合は全て同順位と扱う。

【過去の受賞者】
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それでは5位から発表。例年通り選考者コメントを太字で表記。なお所属は2021年に在籍したクラブ。
第5位
伊東 純也(ヘンク):37pt
 5位はIJこと伊東純也。「(代表の)11月シリーズ2連勝の立役者」であり「崖っぷちの日本代表に希望を繋いだ選手」と代表での活躍が記憶に新しいが「アタッカーで自クラブと代表ともに結果を出し」、「所属クラブでもA代表でも替えの効かないエースに成長」とクラブでの活躍も見逃せない。特に欧州組は秋春制で1年の間にシーズンが変わるので春秋制のJよりもこの1年継続して活躍するハードルが高く、新シーズンにレギュラーを失ったりする選手もいる中で安定して結果を残し、またタイトルも獲った(2020-21ベルギー杯優勝)。「今の森保ジャパンの攻撃において最も計算できる選手(たまに「戦術=伊東純也」)」であり「この選手抜きにW杯出場権獲得は考えられない。」。
 今回の投票で面白かったのは上位5名で唯一この選手への1位票が無かったこと。特に2位票が多く、自分も2位に入れたのだが(投票結果は↓で公開)、「安定感ある活躍だけど1位という程でも無い」という絶妙な判断が選考者の共通認識だった、のだろうか。

第4位
吉田 麻也(サンプドリア):39pt
 「前回の五輪とは比較にならない安定感」あるプレーもさることながらこの選手の場合「五輪4位、最終予選の現在2位。両方とも精神的な柱として麻也の存在が大きい」し、「ピッチ外でもサッカー界のリーダーとも思える発信が多く頼もしい。」一方で「色々な意味で日本を背負いすぎた男」でもあり「東京オリンピック、最終予選で見せたリーダーシップは、企業人として本当に刺激を受けた」という声もあった。自分の選考の話をしてしまうと、最初別の選手を入れてたのだが、やはりあの五輪や最終予選で見せたキャプテンシーを考えると外せないと思い、3位に入れた。代表キャプテンは長谷部→麻也と完璧に継承されたよなぁ。「強いキャプテンシーで来年W杯に連れてって欲しい。

第3位
前田 大然(横浜M):71pt
 「ワンタッチゴーラーとして覚醒」し得点王に輝いた前田が3位。「終戦のゴールは執念を感じた」し「海外挑戦からの出戻りでこの結果を叩き出したのは単純にすごい。」また「代表で見てみたかったなー」「アタマからとは言わないけど、途中から出てきたらイヤな選手だと思うんで是非観てみたい」と代表での活躍を期待する声も多かった。
 この選手は足は速いけど正直器用ではないのでサイドに置いてもドリブルしてカットインからクロスorシュートみたいなことは出来ない。要はボールタッチが少ないほど輝く選手なのだが、それを逆手に取ってワンタッチゴーラー&前線で「年間スプリント数更新」するほどのチェイシングに特化して覚醒させた指導に脱帽だわ。これはポステコグルー、あるいコーチの功績だろうか。プレー以外でも「アナウンサーが必ずフルネーム呼びになるのは何故なのか」、「アウォーズの和装も良かった」というコメント。前田姓は中村、久保と並んでサッカー選手ぽい響きがある。

第2位
古橋 享梧(神戸→セルティック):94pt
 「前半は神戸で、後半はセルティックで目に見える結果」を残した古橋が2位。「Jリーグも半分までしかいなかったのに得点ランク3位という偉業!」だが、J1での15ゴール、スコットランドプレミアでの8ゴール、その他カップ戦や代表戦を合わせた計35ゴールは今年の日本人最多ではないかと思う。この選手に対するコメントは大きく分けて2つあり、まずは「全盛期の佐藤寿人」、「裏の取り方、マジうまい!」、「動き出しとシュートまでの動きが秀逸」、「ボール持ってる時だけじゃなく、試合中の動きを2階席から観てみたい」という動きの質の高さ。本人の努力も勿論だが、イニエスタやサンペールが完璧なタイミングでパスを出してくれる環境も大きかったと思う。そういった環境だからこそ味方を信じてスペースに走る動きが身に付いたのだろうし。もう1つは「岐阜サポの誇り。」、「彼の今までのキャリアも、いわゆる叩き上げという積み方で、これから多くの選手に夢を与えることになるのでは?」というそのキャリアについて。年代別代表経験の無い選手がJ2で台頭しJ1クラブ(上位下位問わず)に引き抜かれるのは今や当たり前になったが、この選手はその代表例であり、現時点で最大の成功例ではないかと思う。
 因みにこの選手には27名が票を入れたのだが、これは今回得票した選手で最多だった。

2021年日本最優秀選手
冨安 健洋(ボローニャアーセナル):102pt

 当blogが選定する今年の日本最優秀選手は冨安に決定。票を入れたのは25名と古橋を下回ったが、1位票は13名と古橋の5名を大きく上回った(前田、麻也も同じく1位票は5名)。選考理由は「年間を通してクラブ(しかもビッグクラブ)・代表ともに活躍」もうこれに尽きる。伊東のそれを更にスケールアップさせた活躍とでも言うか。何と言っても「名門アーセナルのレギュラーはスゴイ」、「ビッククラブでのレギュラー定着しちゃうのは誰が見てもすごいの一言」、「まさかプレミアの名門でレギュラーを張る日本人が現れるとは」、「リーグ(プレミア)、ビッグクラブ(アーセナル)、ポジション(DF)。日本人にとって前人未到の山への挑戦で、即レギュラー確保しての堂々としたプレーぶりは快挙」。去年の投票では4位でその時に「麻也がサウサンプトンに行ったから、それ以上(四大リーグ欧州カップ常連チーム)は行けると思ってる」と書いたのだが1年足らずで実現。しかも当時想定していたのはエバートンウエストハム、レスター辺りのクラブだった。そしてこの選手はまだ若く伸び代がある。今回のMVPは去年の三笘と並ぶ最年少受賞だが「とても23歳とは思えない」というコメントもあった。麻也が同じ年齢の時はオランダでようやくレギュラーを掴んだ段階だったし、中澤はまだマリノス移籍前でヴェルディ所属、闘莉王は水戸から浦和に移籍した頃。そう考えるとこれからどこまで高みに達するのか、期待せずにいられない。
 唯一五輪では「怪我で吉田&遠藤をローテーションで休ませる事が出来なかった」し、「フル活動できず板倉を中盤に回せずを疲弊させてしまったのが残念」ではあった。プレミアの激しさを考えると怪我だけには気を付けて欲しい。

全順位は以下の画像を参照。
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以下雑感を箇条書きに。
・IJと2pt差での6位は遠藤航だった。「リーグ、A代表、五輪、リーグと休む間もなく動き続けたデュエルモンスター」であり「相手潰してゴリゴリとボール運べるプレーは頼もしい」。「五輪を延期しても上回る人がいなかった、というより遠藤の成長の方が大きかったという感じ」というコメントもあるように、ここ数年プレーの凄味が加速度的に増していると同時にリーダーとして発信力も高まっている印象。↑で代表キャプテンについて書いたが、麻也の次はこの選手ではないかと。自分も当初は5位以内に入れていたのだが、先ほど書いたように吉田麻也を入れたかったのと、五輪の3決はさすがに疲労が隠せずPKを取られるなど精彩を欠いたのが思い出されて選外とした。今年フル稼働した分、来年反動が来ないか、それが心配。

・毎年意外な選手に票が入り、コメントを通じてその活躍振りやプレースタイルなど色々教えて貰うことが多い。特に去年得票した江坂(柏→浦和)、坂元(C大阪)、稲垣(名古屋)は今年初めて代表に選ばれ、この投票の信頼性を改めて実証笑。
 そんな訳で今年票を得た選手の中では
明本考浩(浦和)
シーズン通じて、インサイドハーフ、FW、左サイドバックと複数のポジションをこなす万能振りを発揮。高い戦術理解もさることながら、90分アップダウン繰り返せるスタミナもあり、長友に替わって代表でも観てみたいと思った。
金子拓郎(札幌)
大卒Jリーガーの可能性を世の中に地味に伝える存在
加藤陸次樹(C大阪
セレッソの時代を担うストライカー。来年はたぶん爆発する。大迫の次の代表FWは加藤。
 J2からのステップアップと大卒ルーキーというのはある意味今のJのトレンドを象徴しているかもしれない。来季の活躍次第だが、来年7月には国内組主体のEAFF選手権が予定されているので、3人ともそこで選ばれる可能性は十分にある。

・ポジション別に言うとGKで得票したのは谷(湘南)のみだった。「五輪4位&湘南残留の貢献度。ハイボールに対する安定感は素晴らしいの一言。湘南の残留は彼無しでは語れない」が一方で「(五輪)準決の失点シーンはコーチングで防げたように思うのでドンピシャの東京世代だったらなぁと」(注:谷は2000年生まれで東京五輪世代の中では年少組)とのコメントも有り。まぁでも近年若いGK台頭著しい中でJ1でレギュラーを守り通したのはこの選手と沖(鹿島)くらい。五輪後はA代表にも選ばれたが今の代表レギュラー権田が絶対的守護神かと言われれば疑問だし「来年カタールW杯で先発しててもおかしくない」。南アW杯直前に楢﨑→川島という交代が起こった事例もある。

・この投票恒例?の選手、監督以外への投票
影山 優佳(日向坂46)
今年内田篤人選手にクロスを習っていた時のキックを見ると明らかに俺よりうまい。ここまできたらもはや突き抜けてほしいと思うが、J2あたりの選手と結婚するのはやめてほしい(ファン目線)。
最近知ったのだがこの子某国立の進学高出身で東大目指してたのか。何故アイドルやってるのだろうか笑。DAZNの番組ではアイドル、アシスタントという立場上控え目なスタンスを崩してないが、そのリミットを外して語らせたら相当熱いと思う。
家本政明(主審)
あれだけド下手なレフリーがここまで愛される審判になって、目頭が熱くなりました。今までお疲れさまでした。
最終節試合後の花道は本当にいいシーンだった。この人のジャッジの変遷を見ていると、勿論本人も変わっていったことは素晴らしいのだが、見ている方も伝聞や過去の姿を引き摺るのではなく今の姿を見て自分で判断することの大切さを教わった様に思う。

・引退選手への惜別票も恒例となったが今年はこの選手に対して
大久保嘉人C大阪
どんどん同世代が引退していくのは寂しいけれど、お疲れ様の気持ちを込めて。
マイヒーロー。最後にセレッソに戻ってきてくれたこと、心から感謝
あとにも先にも、引退会見で自分のプレースタイルで謝罪したのはこの人だけではないだろうか。(中略)これだけのクラブを渡り歩いた選手だ。きっといい指導者になるはず。それよりなにより、彼が引退すると聞いた時、アテネ五輪の予選を思い出した。青春時代の終幕を感じた。
個人的にこの選手で印象に残っているのはアテネ五輪最終予選のレバノン戦。日本ラウンドの初戦でまさかの敗戦、次のこの試合は先制するもミスで追い付かれ、嫌な雰囲気が国立に漂った、まさにその時に勝ち越しとなるヘッドを決めた。丁度ホームゴール裏で観ていた自分にとって目の前で決まったゴールだった。他にも南アW杯での献身的な活躍や川崎での点取り屋としての覚醒など他にも様々な顔があるが、今でもこの五輪予選が忘れられない。J1で200ゴール、更に言えば釜本の日本リーグ202ゴールも越えて欲しかったのだが、FWがこの年まで一線でプレーし結果を残すこと(今季J1で6点)自体が凄いこと。お疲れさまでした。

・この投票者にはマリサポ多めにつき毎年マリノスの選手に一定の票が入るが、今回最多得票は小池喜田。特に小池は「右、左問わず、運動量がありサボらない」献身性とチャンスにはしっかり前に走り込んで点に絡む積極的な姿勢が印象深い。マリノスは中盤の得点力が極端に低いが、その中でリーグ戦ではMF陣を上回る4ゴール。やっぱ点を取る選手は相手ゴール近くにいるものだと、この選手を見ていると痛感する。

・J2最多票はヴェルディの佐藤凌我ヴェルディサポである選考者氏のコメントが熱かったので全文引用させて頂く。「今シーズン明治大学から加入したルーキー。開幕スタメンはなりませんでしたが、チームが中々勝ててない時にスタメンで出るとゴールという結果を残し、その後の試合もスタメンで出場する時期も多々。そして、何よりルーキーながらヴェルディ唯一全試合出場を記録。前プレを怠ることもなく、スタメンで出ればほぼゴールという結果を残す私の推し。J1チームに引っこ抜かれるかと思いましたが、来年もヴェルディでプレーする事が決定。来年は開幕からスタメンで出て、今年以上のゴール数をクリアして、是が非でも凌我くんと一緒にJ1に行きたい。最後に…マジでイケメンです。皆さん、そこも注目です。必ず見てください。

・得票した最年長は例年通り?カズ。監督で得票した秋田、名波より年上って。「存在しているだけで凄い」、「やっぱり、カズは外せない」、「こうなったら何処のチームでも頑張れるところまで頑張って欲しい」と、もはや全てを超越した存在になっている。
 最年少は久保(2001年6月生まれ)ではなく同年12月生まれの山本理仁(東京V)。調べて気付いたが先に述べた影山も同い年なのか(5月生まれ)。因みに西尾(セレッソ)も同学年。これもヴェルディサポ某氏からのコメント→「自分の得意なポジションで出る機会が中々なかったですが、出てる時は良いプレーのイメージが多い1人。最後の方は優平が怪我で出れない所をボランチで出場し、左足からパスを色んなところへ展開してるのを観て面白いな〜と思いました。そろそろ、ヴェルディ下部組織を狙うマリノスさんが獲るんじゃないんですかね?笑まぁ、いずれJ1に行く選手だと思うので要チェックです。
・・・まぁ最近はマリノスのスタメンでヴェルディユース出身がマリノスユース出身より多いことすらあるしな。

・最後に今回初めて選考者別投票一覧を掲載。名前は伏せているが、上から回答が来た順に並べている。因みに1番上は私の投票で、2番目、つまり最も早く回答してくれたのは実は毎年同じ某友人。今年は依頼から3時間半後に回答が来た笑。このリストを見ると分かるが、選考者間で示し合わせてなどいないのに、急に(それまで得票の無かった)特定の選手に票が集まったりするのが毎年集計していて面白い。
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 と言う訳で今年は去年より文字数が増えてしまった。毎年書いているが、この結果はその年の日本サッカーを反映したものなので、後年振り返る時に役に立つ、はず。投票に協力頂いた皆さんには心より感謝を申し上げたい。それでは良いお年を。