NHKドキュメンタリー

 録画しておいた2つのNHKの世界遺産ドキュメンタリーを観終わった。テーマがベネツィアイスタンブールという事で、今この本を読んでる人間からすればビビる位ナイスなタイミングだった。


 1つの本、映画でそれまで抱いていた印象が大きく変わることがある。もし3年前にイタリアに行く前につい先ごろ完結したあの塩野七生の大作に出会っていれば、ローマの街を見る目も変わっていただろう。あの時は(あくまでもサッカー観戦を除いては)サンピエトロ大聖堂が強く印象に残ったものだが、例の本を読むと大概の読者はキリスト教に対して、ローマ帝国を変質させ、やがては滅亡に追いやった遠因だとするアンチな視点を持つようになるから、あの壮麗としか言いようのないカトリックの総本山を観ても、その感嘆には多少の哀愁や醒めた感覚が混じっていただろうし、街中に今も残るコロッセオを始めとするローマ時代の遺跡の方に心惹かれていたかもしれない。
 そんな感じで、それまで抱いていたベネツィアイスタンブールに対するイメージが大きく変わり、まさにその時にこういう番組があったのは幸運としか言いようが無い。最後の取材協力には出てこなかったが、本と番組で、紹介する視点が結構被ってたから担当者は絶対何かしらの塩野作品を読んでると思う。本を読んで想像を膨らませ、しかも映像でそれが補完されれば実際にベネツィアイスタンブール(本を読んでるとコンスタンティノープルという名の方が馴染み深いんだが)に行ってみたくなる。昔からヨーロッパを旅行するならラテン系よりドイツやスイス、北欧の方に惹かれてたんだが、変わるものだ。


 それにしてもNHKのドキュメンタリーは相変わらず見ていて飽きない。やたら現代的視点に強引に当てはめようとするのはどうかと思うが、それを差し引いても面白かった。普通NHKの生命線と言えば紅白と大河で、だからこそこの2番組の視聴率を上げようと必死になってDJ○ZMAみたいな事になるんだろうが、真の存在価値は、こういうドキュメンタリーをゴールデンに堂々と流せる点にあるんだと思う。後はスポーツ中継位か。この点は民放には真似出来ないと思うわ。経済ドキュメンタリーに限れば日経が付いてるテレ東もなかなかレベルが高いけど。どうせ紅白の視聴率がこれから劇的に上がる事なんて無いんだから、こういうドキュメンタリーやNHKスペシャルにもっと金掛けて下さいな。そんな事を言いつつ、ガクトの上杉謙信にちょっと興味があったりもするんだが。