通算Aマッチcap数から各国の状況を見る

 久々に観戦記、旅行記では無い記事を。昔はここで色々書いていたが、ここ数年はサッカー関連で思った事やその時々の考えはほぼ某SNSなので、敢えてここで書く必要性を感じていなかった。ただあのSNSだと字数制限があるのでまとまった量は書けず、かといって有料会員になって制限無くそうとまでは思わず、といった感じで久々にここで。

 突然だが、サッカーの情報源としてはwebだけでもSNS、ニュースサイト、DAZNの様な動画サービス等色々あるが、自分はwikipedia、特に英語版を重宝している。選手個人やクラブ、代表チームの記録、メンバー等の表やリストが充実していて、勿論記事内容も有名選手になるほど多岐に渡る。また更新頻度も高く、試合が終わって数時間、場合によっては数分後には記録が反映されていたりもする(さすがと言うべきか英語圏イングランドスコットランドのクラブ、代表はその傾向が強い)。英語版を重視と書いたが、それは一番網羅性が高いからで、ある国についてより詳しい情報を知りたければ、その国の言語版が一番良い。例えばイタリア語版ならイタリア人選手の情報が充実していて、代表選手なら新旧問わず過去に出場した代表試合、場合によってはU21代表試合の一覧まで掲載されている。

  • 通算Aマッチcap数

 と言う中で代表期間中は各国の代表チームのページをよく見るのだが、直近2年程度の試合結果や1年後くらいまでの試合予定一覧、最新メンバー表、監督を始めとするスタッフ一覧といった情報の他に、通算Aマッチcap数、ゴール数ベスト10もフォーマット化されてほぼ全ての代表チームのページに掲載されている。様々な国の情報を見ていて思ったのは、安定的に代表チームが運営され、かつ継続的に結果を残している国は通算cap歴代10位で80capはあるものだなと。ここで言う「成功」はW杯出場レベルに限らず、所属する大陸や地域内での勝利も含まれる。逆に言うと、協会の運営が不安定だったり、結果が出てない国はそれ以下のcap数でベスト10に入れてしまう事が多い。
 80年代までは今の様に代表日程が世界共通化されておらず、欧州に渡った欧州外の選手は日本の奥寺氏の様に代表に招集出来ない事が多く、故にcap数も少なかったりするのだが(日本の場合はクラブチームとの対戦が主流でAマッチ数自体少なかった事情もある)、今はインターナショナルウィークだけで毎年約10試合確保され、W杯や大陸杯があれば15試合以上になる年もある。そんな中で協会が安定して代表チームを運営していれば、主力となった選手は毎年全試合とはいかないまでも8割の試合には出て、20代前半から30代前半まで約10年の代表キャリアを積めばおおよそ80capぐらいには達する。これが代表運営に問題があって協会と選手、あるいは選手同士が揉めて招集出来なかったりだとか、監督が替わる度に選手も入れ替わる様な国だとcap数を積む選手は出にくくなる。言わばその国の代表や協会について測る指標の1つとしてこのcap数を自分は見ている。

  • 各国の状況

 これが顕著なのがアフリカ諸国。ナイジェリアカメルーンロッコといった国々はこれまでの実績の割に80cap以上の選手が少ない。

ナイジェリア・カメルーン・モロッコ

ただこれまで頻繁に監督交代したりギャラで揉めたりで自滅してきたこれらの国々でも最近は自国人監督に長く任せる事が多くなってきたようで、数年後には今の主力がcap数を刻んで80の大台に到達しているかもしれない。
 一方で同じアフリカでもコートジボワールエジプトはcap数が多い。エジプトはW杯出場回数こそ少ないもののアフリカ選手権では最多優勝を誇り、コートジボワールは↓のリストで分かるようにドログバの世代が一時代を築いた。この様にある特定の強い世代が現われた場合でも(結果的に後継の世代が台頭せず長い事代表でプレーせざるを得ないという事情もありつつ)cap数が伸びる場合がある。

コートジボワール・エジプト

 cap数80まで達するには安定した運営や結果を10年くらい継続する必要があるので、独立したばかりの国はこれからという状況でもあるのだが、その意味で出色なのがクロアチア。独立から約30年で80どころか100cap越えが10人もいる。モドリッチ(174cap)を筆頭に若くして見込まれた才能が順調に成長して代表主力となり、長く活躍するパターンが多い。またW杯で上位に進出する事で必然的にcap数もそれだけ伸ばせている。反面、セルビアは旧ユーゴ時代からの記録を引き継いでいるにも関わらず、100cap越えは4人、80cap越えは9人という状況。35歳106capで代表キャプテンとして活動するタディッチは例外で、これまでは才能の割に代表では重用されず、あまりcap数を伸ばせなかった選手が多かったように思う(勿論ストイコビッチや今は亡きミハイロビッチの様に、内戦による制裁の影響を受けた選手もいる)。ミリンコビッチ=サビッチも早くからラツィオで活躍してた割に29歳で49capで、1つ年上のクロアチアコバチッチが30歳で既に99capなのと比べるとやや少ない。

クロアチアセルビア
  • 次回W杯開催国

 と見ていくとキリが無いので苦笑、最後に次回W杯開催国と日本を。
北中米は今でもインターナショナルウィーク外に試合する国が多く、全体的にcap数も多目でそれはアメリカ、メキシコに表れている。特にアメリは1994年の自国開催W杯に向けて物凄い数のAマッチをこなした為(イタリアW杯の後からアメリカW杯までに実に97試合)、歴代1位のコビ・ジョーンズ、5位のアグース、6位バルボアなどそれでcap数を伸ばした選手が名を連ねる。メキシコグァルダードオチョアマルケスブランコなど1990年代以降の中心選手が代表で長らく活躍したのがcap数に反映されている印象。人によっては30過ぎで早々に代表引退する例もある中で、ここは息長く代表でプレーする人が多い。
 という中でカナダは全体的に少な目。1990年代以降だけ見てもAマッチ年間5試合未満の年が複数年あり、そもそも試合数が少なかった。また欧州でプレーする選手もW杯予選など公式戦以外は呼ばれなかったのではないかと思う。それが近年は21年19試合、22年はW杯出場もあって15試合、23年も11試合こなした。選手もバイエルンデイビス(23歳で45cap)、リールのデイビッド(24歳で46cap)、インテルブキャナン(25歳で36cap)など若くして一定のcap数の選手がおり、いずれ80、90capになるものと予想される。

アメリカ・メキシコ・カナダ
  • 日本

 日本はと言うと、現時点で100cap越えは8人、80cap越えは16人。この16人は全員ドーハ世代以降の選手達で、それ以前の世代だと釜本氏の76cap、原博美氏の75capなど70cap以上がようやく3人。これだけでもこの約30年でいかにAマッチ開催が増え、また主力が順調にcap数を増やしてきたかが分かるはず。ドーハ世代くらいまでは先に述べた様にクラブチームとの対戦が主体でB、Cマッチ含めた通算代表試合数では多いのだが、国同士のAマッチは少なかった。

日本(80cap以上)

 現在のチームは長友の142capは別格として、30歳前後の世代は遠藤が31歳で61cap、伊東が31歳で54cap、浅野が29歳で52cap、南野が29歳で58capと、ギリギリ80に到達するかどうかといったところ。東京世代だと堂安が25歳にして既に48cap、久保は22歳で34capなので、順調に行けば80どころか100越えも有り得る。鈴木彩も21歳で10cap。GKというポジション柄息長く活躍する可能性は十分だが、これから小久保大迫らと1つのポジションを巡って争う事が予想されるので、不透明な面もある。冨安も25歳で41capなのだが負傷の多さを考えるとちょっと分からないかな。
 1993年以降2010年頃まではAマッチの試合数自体が多く、国内組が主体だったのでインターナショナルウィーク外の試合も多かった。故にcap数上位はこの時までに代表デビューした選手が多い。三都主など代表として活動したのは5年間なのに82capも記録しているし、川口(116cap)と長年正GKの座を争った楢崎も80は越えていないものの77capを記録。同世代のGKが複数人これだけのcapを記録するのは、本人達が長年活躍したのに加えて試合数自体が多かったから。

 てな感じで、特に来月からはEURO、コパアメリカが始まり、各国選手がcap数を一気に伸ばす言わばボーナスステージ。またwikipediaの各国語版を眺める事が多くなるだろう笑。